デモグラ×行動のターゲティングが最も有効
アメリカの選挙では、基本的に地域情報をベースにしたデモグラフィックなデータに基づき、ターゲティングが行われる。各セグメント内でのテストも継続的に行っていたが、オバマ陣営では過去の献金行動をベースにしたリピーター獲得のためのターゲティングも行われた。
例えば、25ドルを献金した有権者にどのタイミングで次の献金をお願いすればよいのか、その金額は25ドルなのか、それ以下なのか、それ以上なのか。このデータはメールマーケティングのチームだけではなく、分析の専門チームと連携をしながら、実際にいくつかのテストを行い、最終的な勝ちパターンを導いていった。
結果としては、やはりデモグラフィックな情報に基づくターゲティングと、行動データに基づくターゲティングの組合せが有用であった。
エンゲージメントに関しては大きく2つの点が語られていた。1つはコンテンツ、メッセージそのものに関してだ。そしてもう1つがメールの送信頻度のコントロールに関してとなる。
コンテンツそのものは、Me, Me, Meという自分本位のコミュニケーションではなく、特定の政策に関するものでもなく、オバマという人物がどう社会を変え、それぞれのコミュニティにどういう影響をもたらすのか、有権者の視点で物事を伝えることを重視。コンテンツだけなく件名にもその思想を反映し、もちろんいくつものテストを行い、パフォーマンスの最大化も目指した。

次に送信頻度だが、1つ興味深い洞察があった。当初メールチームは送信回数が増えることで離脱率(オプトアウト率)へ影響することを恐れていた。その理由は全米各地で様々なキャンペーンが走っており、メールチームへのコンテンツ制作・配信依頼はひたすら増加していたためだ。しかし、実際の結果としては配信頻度が上がっても離脱率は上がらなかった。
この結果から、Obama for Americaにメール入会する有権者はそれなりにロイヤリティが高く、簡単には逃げないということが分かる。ただ、ここでメールチームはもう1つの指標であるアクティブ率を確認。具体的な指標は示されなかったが(恐らく献金頻度)、「静かなる離反」があることが判明したので、配信頻度のコントロールも可能な範囲で実行した。
このキーノートで印象深かったのは、選挙戦でここまで先進的なデジタルマーケティングに取り組んでいるという驚きと、メールマーケティングといわゆるビッグデータを担当する分析チームとの連携である。Toby氏はデータ分析チームから必要な情報を得ていたが、実行フェーズでしか取得できない有権者のインサイトは、実際にメールの中でテストをして、継続的な改善活動を行っていた。
データに振り回されるのではなく、必要な情報を得ながらマーケティングを進めて行く姿勢に、学ぶべきものが大きいと感じたセッションであった。