オンライン広告の特徴を活かし、純粋な広告効果を導き出す
もう1つのパネルは、「Randomized Experiment Panel」。これがいちばん、MarkeZine読者にとっては関心が高いかもしれない。ランダムにグループ分けされたユーザーに広告配信実験を行うことで、メディアバイアスを除去した広告のブランディング効果を検証するというものだ。
「メディアバイアスは多くの場合、プラスに働きます。もともと広告出稿は、自社のサービスに関心を持ちそうなユーザーがいるメディアに行いますよね。すると、広告効果が高い場合が多く、『成功した』となる。しかしながら広告主からは、『実際に店頭では品物が売れていない』『認知はされたけれど人気がない』といった悩みも聞こえてきていたのです。
なぜ、こうしたことが起きるのか。それは、メディアバイアスがかかっているからです。ユーザーが購買行動を行ったとして、それは純粋に広告の効果によるものなのか、それとも広告を見る前からそのサービスに関心があったのか。真の広告効果を検証するには、後者の『ゲタを履いた』ユーザーを除去しなければなりません。オンライン広告であれば、広告表示がコントロールできますから、これが可能になるのです」(巳野氏)
このように検証していくと、グーグルのサービスに不利な結果が出るかもしれない。それでも、「広告効果を透明化し、より正しいことをより正しく行っていきたい」とマーケットインサイトチームは語る。
シングルソースによる広告効果検証を全世界のスタンダードの1つに
すでに、クロスメディアキャンペーンに取り組む企業とコラボレーションを行なっているが、広告主からは好評だという。
「広告主は、キャンペーンに何十億という投資をしています。『成果があった・なかった』だけで終わらせるのではなく、次回のキャンペーンに活かせる客観的な判断材料を必要としています。従来のシングル・ソースは、人の記憶に頼ったアンケートなどを用いることが多かった。しかしSSP Initiativeでは、すべてを記憶ではなく、実際の接触データで裏付けます。これがグーグルらしいところかもしれません」(巳野氏)

誰もが望みながら、実現できなかった客観的データによるクロスメディア広告効果検証。これまでも、多くの不可能を可能にしてきたグーグルだからこそ、今後への期待が高まる。
「SSP Initiativeの3つのパネルも、現状グーグルができるベストなのであって、唯一の手法だとは考えていません。シングルソースの広告効果検証が全世界でスタンダードの1つになるきっかけをグーグルが作っていけたら、より多くの人に利用してもらえたらと考えています。ユーザーにとって有益な広告をミッションに、今後もチャレンジしていきたいと思います」(小林氏)