データ分析・活用分野におけるcciの取り組み
今回のアクセス解析サミットは「データをアクションに!」をテーマとしている。データ活用に先進的に取り組む各社の事例やノウハウが語られる中、サイバー・コミュニケーションズ(以下cci)からは、マーケティング・ソリューション本部 データデザイン部 部長 根本朗生氏が登壇。『デジタルコミュニケーション最適化を加速させるデータデザイン~Coremetricsの利用事例紹介とユーザー行動データのアクション化~』と題し「IBM Coremetrics」の活用事例が紹介された。
冒頭、根本氏はデータ分析・活用分野におけるcciの取り組みについて、次のように語った。
「創業以来、cciはインターネット広告の取引プラットフォームを提供し続け、今後も広告業界の激しい変化に適応すべく新たなチャレンジを続けています。データ分析領域においても、近年はインターネットマーケティング全体の最適化に対する要望が強いため、メディアレップ事業で蓄積されたインターネット分野の知見を活かし、その要望を解決する分析専門チームを2年半前に立ち上げました。このチームは、広告の効果測定だけではなく、企業が運営するWebサイトのアクセスログを分析することにより、広告などからのサイトへの誘導、サイト内導線、コンバージョン向上の課題解決のためのコンサルティングを行っています。」
このように、cciは数多くのアクセス解析ツールを用いた分析の実績を多く持つ。今回の講演では、IBM社の買収によりようやく日本での展開がはじまった「IBM Coremetrics」の特徴が日本での導入事例を交えて紹介された。
アクションにつなげられない要因は2つ
続いて根本氏は、分析の現場ではアクセスログ分析結果のデータを、具体的なアクションにつなげられていないケースが多いと指摘。その要因は大きく分けて2つあるとした。
「アクションにつなげられない要因は大きく分けて2つあると考えます。1つは、サイト来訪者のデータを『個(ユーザーベース)』で計測していないことが挙げられます。これまでのアクセス解析では、ページビュー、セッション数はどの程度か、離脱の多いページはどこかなど、いわゆるサイト分析に焦点を当ててしまうケースが多かったと思います。しかし、サイト訪問者を『個』として捉えることができれば、ある製品のページをよく見にきているが、まだ購入に至らないのは『誰』なのかが分かります。」
もう1つの要因として根本氏が挙げたのが、実際のアクションにつなげる仕組みがない点だという。
「もう1つの要因は、『誰』なのかがわかっていても、実際のアクションにつなげる仕組みがないという点です。この課題は、サイト内で一定の行動をとったユーザーをターゲットにメールを配信したり、広告を露出させたりすることができれば解消できるでしょう。「IBM Coremetrics」には、各種メール配信ツールやアドエクスチェンジなどと連携する機能が備わっており、ユーザーのサイト内行動をベースにアクションに結びつけることが比較的容易に実現できます。」と語った。
ECサイトへの導入事例~現場の課題とその解決に向けて~
cciでは、分析結果をアクションにつなげていくために、ECサイトに向けて図1のステップでPDCA運用のサポートを行っている。
このステップの中で肝心なことは、Step0での徹底的なヒアリングによるマーケティング課題の抽出と、アクセス解析ツール以外のデータ(購買ログデータなど)も並行して確認することにより、分析フレームワークを精緻化することであるという。また、分析だけで終わるのではなく、「ユーザーセグメンテーション設定からシナリオ構築、アクション実施のサイクルを作ることを意識してプロジェクトを進めている。」と根本氏は解説した。
次に、実際の事例を交えながら、各ステップに沿って説明が行われた。今回紹介する導入事例は、ECホールディングス社が運営するサプリメント通販サイト「オーダーサプリ・ドットコム」。美容サプリメントを中心に約30種類のサプリメントを扱っており、「ブラックサプリ」という白髪対策用サプリメントを主力商品としているサイトである。
「IBM Coremetrics」導入の経緯
ECホールディングス社へのヒアリングから、同社が抱える課題は大きく2つに集約できることが分かったという。
「1つ目の課題は、顧客のライフタイムバリュー(LTV/顧客生涯価値)管理ができていないことでした。どうしても『オペレーション優先』になってしまい分析よりも運用に重きを置いている状況で、現顧客がどのようなプロセスで購入・継続に至るのか把握できない、また顧客の引き上げ(成長プロセスにおけるレベルアップ)の状況が把握できないといった状況でした。2つ目の課題は、データとアクションの乖離。前述の通り『オペレーション優先』であるためにデータをアクションにつなげられなかったことに加え、データ自体がアクションに結びつけやすい形で取得できない状況でした。」
「この課題は決して特殊なケースではなく、多くのECサイトに共通した課題です。」と根本氏は指摘。ECホールディングス社としては、この2つの課題を解決することにより、新商品導入やサイトリニューアル時にデータ分析から戦略を導き出したいと考えていた。
次のステップとして、既に導入されていたアクセス解析ツールやEC管理ツールから基本的な指標を確認したところ、ECホールディングス社からのヒアリング結果と同様の課題がデータで裏付けることができた。この結果を受けて、ECホールディングス社は「顧客LTVの最大化」をマーケティング目標として掲げることになる。
目標を実現するためには「取るべきデータを取る」「データの一元管理(サイト行動データ×購買ログデータ)」「顧客LTVの観点」「アクションにつながる」ことが必須となるが、この条件に合致するツール選定と実装、データ分析フローを検討した結果、ユーザーベースでデータが紐付く「LIVE Profile」とアクションに連携可能な機能である「LIVEmail」や「AdTarget」などが利用できる点を考慮し「IBM Coremetrics」の導入を決定。「IBM Coremetrics」を使って「コミュニケーション策定」から「アクション化」へのフローを実現していくことになったわけだ。
他のアクセス解析ツールにはない「IBM Coremetrics」の特徴
ここから、「IBM Coremetrics」の主な機能について紹介していこう。
「LIVE Profile」
「IBM Coremetrics」では、一般的なアクセス解析ツールで実現できている基本的な分析はもちろんのこと、「LIVE Profile」というユーザーベースでのデータウェアハウス(DWH)機能のおかげで、セッションを越えてユーザーの動向分析できることが大きな特徴だ。これにより訪問者の流入パスを遡って、どのような経路で流入したかが分かるため、アトリビューション分析を行うこともできる。コンバージョンだけでなく、訪問者ベースでも見ることができるツールは、少ないためコンバージョンに至らない顧客の状況も分析できることが強みだ。
「LifeCycle」
「LifeCycle」機能を使うことで、サイト訪問から優良顧客に至るまで、任意に指定したマイルストーンを用いて進捗状況を確認できる。
また、「IBM Coremetrics」はセグメント分析の自由度も高く、サイト訪問者の行動をベースに様々なセグメント設定が可能である。このセグメント機能とアクションにつなげる機能を連携して活用することで、サイトでのユーザー行動データからターゲットに対してメール配信や広告配信などの具体的なアクションまで、つなげられるようになるというわけだ。
「LIVEmail」
「LIVEmail」は、セグメントあるいはサイト内の行動をトリガーにメール配信ツールに自動でデータを受け渡す機能である。この機能により今まで実現が難しかったユーザーのサイト内行動に基づいたメール配信が可能になる。
例えば、商品Aの購入頻度が高い優良顧客が最近は商品Bのページに頻繁に訪問しているが、商品Bの購入に至っていないケースが挙げられる。この場合、商品Bの購入まで至ると購買データとして現れてくるが、ページ閲覧をベースに商品Bを案内する施策を展開することは容易ではなかった。「LIVEmail」機能を使うことで、その顧客に対して商品Bのクーポンメールを配信するなどの施策が打てるようになるのである。
「AdTarget」
「AdTarget」は、同様のことをメールではなく広告配信で実現することができる機能である。商品Bに興味があるが、商品Bを購入していない優良顧客に対して、パーソナライズされたディスプレイ広告を表示させることができる。
その他にもサイト上でのレコメンデーションを実現する「Intelligent Offer」やリスティング最適化のための「Search Marketing」などの機能もあり、「IBM Coremetrics」は分析結果の数値報告にとどまらず、アクションにつなげるという視点を持ったアクセス解析ツールと言えるだろう。
最後に根本氏は「モニタリングや定点観測をするためのツールとしてアクセス解析を利用しているユーザーは多いですが、今後は『個(ユーザーベース)』で計測・分析を行い、すばやくアクションにつなげることが重要となってくるでしょう。Web広告においても、枠を買う時代からオーディエンス(個)単位での配信がトレンドとなっています。アクセス解析からアクション施策まで『個(ユーザーベース)』でシームレスにつながる時代がすぐそこまで来ているといえるのではないでしょうか。」とこれからのトレンドについて語り、講演を締めくくった。