「かわいいものをサクッと育てられる場所」へのシフトがヒットの秘訣
ソーシャルゲーム「農園ホッコリーナ」は2012年9月現在で100万人のユーザーを擁し、その6割以上が女性である。ありがたいことに、女性向けソーシャルゲームの成功例としてメディアに取り上げられることも多くなった。
DeNAに中途入社した私が同ゲームの担当になったのが、ちょうど2年前。当時は今ほど女性ユーザーを意識しておらず、競合ゲームに水をあけられていた中で、社内では機能拡充をすべきだといった意見もあった。が、ユーザーの利用シーンを徹底して見つめ、いわゆる育てゲーとしての質や農園の要素を追求するのではなく、「かわいいものをサクッと育てられる場所」へとシフトした結果、女性を中心に人気を集めるようになった。現在はゲーム担当を離れ別の業務を担当しているため、当時からさらに進化したかわいさをユーザーとして楽しんでいる。
本連載では、「農園ホッコリーナ」をはじめとする当社の女性向けソーシャルゲームの企画における、現時点の戦略と実践をまとめてみたい。今回は、女子ゲーに大事な9つのポイントを紹介し、次回はそれらを現場にどう反映しているかを各ゲームの担当者の声を交えながらレポートする。必ずしもこれが正攻法だとは思っていないが、参考にしていただけたらと思う。
DeNA流ヒットする女子ゲーの法則、9つのポイント
まず、女子ゲーに大事な要素とは、何だろうか。主に「農園ホッコリーナ」の運営経験から、私は次の9つのポイントがあると考えている。
- ユーザーの利用シーンとずらさない
- 何をやってもうれしくなれる?
- その“かわいい”に意味はある?
- “詰まない”ようになっている?
- 基本サイクルの延長で遊べる?
- “あざとい”と“天然”を使い分ける
- 思わず出てしまう男性視点に注意
- 対同業者ではなく、ユーザーを見る
- 普通でもうれしい、課金したらさらに
それぞれ、詳しく解説していこう。
ヒットする女子ゲーの法則1:ユーザーの利用シーンとずらさない
そもそもユーザーは、どのようなシーンでゲームを楽しんでいるのか。これをできるだけリアルに把握することが、ユーザーに受け入れられるための第一歩だと考えている。
モバイルは隙間時間を捉えるツールだと言われているが、実際に当社の女子ゲーも通勤途中や昼食をとりながら、あるいは寝る前などのちょっとした空き時間にプレイされている。それなのに、1回のプレイに数十分かかるような巨大な農園があったり、操作しなければならない要素が多数あって不完全燃焼のままゲームを終えなければならないボリュームがあってもストレスになるだけだ。どういうシチュエーションで、どんな気持ちでゲームに接しているのかをよく推し量ることを最初のポイントとして挙げておきたい。