「マーケティングイノベーション室」新設の背景
ヤフーは7月にマーケティングイノベーション室を新設。これまでの広告主のマーケティング活動をサポートしてきた経験から得られた知見やノウハウを、さらに追求する研究組織だ。室長を務める友澤大輔氏は、「自分自身、複数の広告主企業に長く在籍していたので、その視点を活かして現在の業務に取り組んでいる」と話す。
最近の動きとしては、積極的な取り組みによりスマートフォン広告の比率や売上が高くなっている。 友澤氏は今日注目が集まっている企業のオウンドメディアの活用に触れ、同様にユーザー接点としてのバナー広告のクリエイティブの重要さも指摘。「今まではクリックの有無で効果を図っていたが、クリックされなくてもバナー広告による認知やサーチは十分起こっている。その効果測定に今まさに着手している」と語る。
デジタルマーケティング時代の新たな広告効果指標
同社はビデオリサーチやマイクロソフトなどと共同で2008年よりネット広告の効果把握・検証のための指標整備を目的とした調査「NAVI(Net Ad Value Index)Project」を展開。既存のネット広告の効果指標であるダイレクトレスポンス、つまりクリック率などでは分からない認知度や理解度、好意度など「広告露出自体の効果」を検証し、Norm値(基準値)を作成している。
認知度や理解度は、バナー広告のクリエイティブの良し悪しに大きく左右されるなど、結果は業種によって若干の差があるとしながらも、「大事なのはこうした指標を取り入れながら、自社の商材特性やゴール、デジタルマーケティングの成熟度に合わせて適切に広告手法を組み合わせること」だと友澤氏は述べる。
クリックだけが効果じゃない!「ビュースルー効果」の可視化に着手
具体的なプランニングにはどのような要素として、「面xクリエイティブxターゲットの掛け算で効果を最大化する」と友澤氏は語る。次いで実行段階では、デジタルだからできるターゲティングがカギになるという。
「広告主企業に在籍していた頃からの経験を踏まえると、ターゲティングで最も重要なのは直近性。昨日サイトを訪問した人と1か月前に訪問した人となら、昨日訪問した人を狙うべき。ターゲティングの次に媒体選択、それが終わったら媒体とクリエイティブをセットにしてクリエイティブの最適化を図っていく」(友澤氏)
広告しながら解析することでパフォーマンスを上げていく
ネット広告は展開するほどデータを得ることができる。そのため、例えば中長期的な企業コミュニケーションを薄く広く実施しながら、そこで得られたユーザーデータや知見を短期的な目標達成を目指すキャンペーン広告に活かし、この2つの広告の相乗効果を検出したり、さらに分析してまた次のキャンペーンに活かしたりと、単発で終わらないダイナミックかつ効率的な広告展開が可能になるのだ。
「トライ&エラーを重ねて細かに改善できるデジタルだからこそ、連続性の高い展開を実現しなければと考えている。当社でもさまざまなデータを組み合わせ、対象ユーザーの見込みやその属性、訴求の度合いなどを実測値として提供することに取り組んでいる。実際の広告展開と調査分析を並行して行うことで、ネット広告のパフォーマンスは加速的に向上する」と友澤氏は講演を締めくくった。