オウンドメディアはこれからさらに拡大していく
―― 最後になりますが、御社にとってのオウンドメディアの指針、さらに改良していくためのポイントについて教えてください。
次々と誕生するソーシャルメディアも公式ページや公式アカウントは、捉え方によっては「オウンドメディア」と考える方が適切で、これらは今後さらに重要な存在になっていくと考えています。弊社のように、商品群が多岐に渡り、関わる社員が多い企業様はこれらも含めた「オウンドメディア」への対応は難しくなる傾向にありますが、全体最適を目指して社内体制もレベルアップしていきたいです。
また、広報、宣伝、PRなどの機能やデジタルマーケティング全般のタスクは、関係者が多い上に、サイトやコンテンツも多岐にわたると、運営において大掛かりな調整が必要になります。そして、そのような場合、方針を決める際にも関わる人数が多く、方向性を定めるのも一苦労となりがちですが、お客さまにとって最も良い情報発信ができるように部門間の協力を推進していきたいと考えています。
さらに、オウンドメディアの強化のためには、ペイドメディアとの連動も重要です。そのうえでは、ベストな組み合わせはいかなるものかは常に大切で、そこへ向けてオーディエンスターゲティングにどう対応して広告投資対効果高くユーザーを獲得できるのか、DSPやアトリビューションマネジメントに対応できる組織とはどう作るべきなのかということも、大きなテーマとなっています。ソーシャルメディアは種類も用途も広がりはじめています。これら全体を見渡した動きが必要となっています。

―― つまり、デジタルに対応するための体制強化を進めていくということですね。CMOのような役職が日本にも必要という声を耳にすることもありますが、根付いていくのでしょうか。
企業を取り巻くデジタル環境の進化はますます進むばかりです。そういった背景から米国企業同様に、日本企業でもCMOの必要性が高まるかもしれませんね。マスメディアとデジタルを俯瞰で捉えて、広告の投資対効果をキャペーンごとに管理するようなことも必要かと思います。一方で、米国とはメディア環境が全然違いますから、日本企業に最適化された日本型CMOが登場していくのではないでしょうか。
特別寄稿:コンサルタントの眼

企業が運営する「オウンドメディア」に求められる役割や機能は広がりつつあります。そもそも、オウンドメディアと言っても、今回のテーマとなるWebの自社サイト以外にも、ソーシャルメディア上の、例えば「Facebookページ」や「mixiページ」、「Twitter企業アカウント」もある意味オウンドメディアと言えますし、「メルマガ」やリアルな「会報誌」、店頭での「陳列台」、「商品パッケージ」なども同様です。
では、なぜ今、企業は自社サイト、オウンドメディアに対して、“コミュニケーション上の大切な場”として力を注ぐのでしょうか? その理由のひとつとして、そこで得ることができる訪問者の興味や反応、属性、また行動データそのものがこれからのマーケティング活動において有用だと考えていることは言うまでもありません。
より重要なことは、生活者が利用するメディアやデバイスが多様化し、行動パターンが大きく変化、これまでのマーケティングシナリオが崩れてきていること、つまり、今までなら届くと考えていたターゲット層に、届けたい情報が、“実は届いていない”かも知れない、ということが徐々に明らかになってきたからでしょう。
企業がメディアを、既に多種の情報を利用者に提供することを“生業”としてきた、本来の意味でメディアと言えるそれに、自らのサイトが対抗できるように創り上げていくことは容易ではありません。なぜなら、生活者はシームレスにインターネット上を回遊します。従来のメディア、自分たちのことを見て欲しい企業サイト、日々のソーシャルメディア上での知人たちからのプッシュ、自らが検索する結果など、提供側の思いなどはお構いなしに生活者は自由に行き来するからです。
しかし、今回、資生堂さんがオウンドメディアを刷新したことは、非常に大きな挑戦だと思います。多数のブランドが個別に提供したい情報をプッシュしていた、これまでの仕組みから(実はユーザーから見るとそれはプルの情報)、ブランド横断的に、またアライアンス企業群が共同して「生活者が、欲する情報にどうすればたどり着きやすくなるか」、「興味がある領域に合わせ、自らの情報を、いかに価値ある情報として提供できるか」に取り組んでいるからです。この取り組みに対して、すぐに大きな結果だけを求めることは早計でしょう。これまで日本のマーケティングコミュニケーションを牽引してきた企業が行う変革だからこそ、大きな注目に値すると感じています。