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Owned Media Report~オウンドメディアマーケティング戦略の潮流

デジタルとリアルを紐付けお客様の行動を一気通貫で把握
日産自動車のワン・トゥー・ワン戦略

 企業のオウンドメディア活用の実態をお伝えする「Owned Media Report」。今回は早くからデジタル施策に積極的に取り組む日産自動車(以下、日産)を訪ねました。日産が描くデジタル戦略とは?(聞き手:松矢順一氏)。

今回お話を伺ったのは…
日産自動車株式会社 マーケティング本部 
販売促進部 デジタルコミュニケーションチーム 吉野浩正氏

2000年日産自動車株式会社入社。国内営業部門、商品企画部門を経て2010年12月より現職の販売促進部デジタルコミュニケーションチームへ異動。現在は車種販促業務全般、Webメディア戦略を担当。

日産のデジタルコミュニケーションチームとは

 ── マーケティング本部内にデジタルコミュニケーションチームがあると聞いておりますが、システムなどのプラットフォームまで含めると広い領域になりますがどのような担当領域になるのでしょうか。また、どのような目的でデジタルコミュニケーションチームは編成されているのでしょうか。

日産自動車株式会社
マーケティング本部 販売促進部 吉野浩正氏
日産自動車株式会社 マーケティング本部 販売促進部 吉野浩正氏

 デジタルコミュニケーションチームは総勢約10名で構成されております。どの車を担当するのかとあわせて、方策ごとの担当も兼任します。具体的にはソーシャルメディアの運用、レスポンシブデザインへの対応、取得したお客様の情報をどうマーケティングへ活かすのか、といった種類の業務にあたります。例えば車はマーチの担当だが、サイト全体のSEM担当といったようなケースが挙げられます。デジタルの場合業務の種類が多岐に渡るため、効率的に業務を進めていくために、各人が色々な業務に関わり経験値を溜め、共有していくことが重要と考えております。

 さらに、デジタルコミュニケーションチームでは、社内向けに月1回メールマガジンも配信しております。デジタルテクノロジーは進化を続けていますので、潮流や活用事例を紹介することで、社内のデジタルに対する理解を深めることを目的としております。社内でデジタル領域の業務を推進するには「わかりやすい言葉での説明・説得」が求められます。社内向けメールマガジンは社内のデジタル理解を深めることで、稟議・決済のスピードを早めるという目的も兼ねてます。

 デジタルコミュニケーションチームの活動目的は拡販のためのディーラー送客となりますので、デジタルとマスメディアをどう融合させていくかが大きなテーマだと感じております。今までは新型車が出るタイミングでテレビ広告を出稿し、ある程度のGRPを投下、合わせてヤフーさんのブランドパネル等のリーチ系のメディアで補完することが多かったですが、これからはマスメディアとデジタルの連携を想定し、能動的な情報接触頻度を増やす仕組みを考えていきたいと思っております。

インナー向けメールマガジン原稿例
インナー向けメールマガジン原稿例

日産のソーシャルメディア活用

 ── 企業によるソーシャルメディアを使った顧客接点作りが一般化されてきましたが、御社ではどのような取り組みをされているのでしょうか。商品エンゲージから購買行動喚起、企業情報の発信など活用目的や運用体制なども教えていただければと思います。

 デジタルコミュニケーションチームが関わっているアカウントは主に1つです。そのアカウントは広報主体で運用している日産の公式アカウントで、デジタルコミュニケーションチームがFacebookで情報発信を行いたい場合はそのアカウントへ投稿することになります。会社の方針として、似たようなアカウントが複数乱立することはお客様の混乱につながりかねないので極力避けています。部署をまたいでの調整や連携は面倒ですが、時間をかけておこなっています(参考情報,Cnet)。

 このような中で、お客様とのエンゲージメント・ファン獲得を目的として活用していく方針を、デジタルコミュニケーションチームでは掲げています。自動車は代替サイクルが8年~10年と言われています。そのサイクルの中で代替時期に、私たちのサイトへ来訪しダイレクトに購買反応していただければよいのですが、実際はなかなかそのようにはなりません。そういった行動をお客様に起こしていただけるようにつながりを作り、代替タイミングになった際に日産のサイトへ来訪していただけることを目的としております。

 そのため、お客様自身が自動車と関わるストーリーを紹介するコンテンツや、横浜のグローバル本社ギャラリーにいるミスフェアレディというスタッフが登場し、車種を紹介するようなコンテンツなど、エンターテインメント要素が強いコンテンツも発信しております。

 ── 効果はどのように測っているのでしょうか。また継続してコンテンツを発信するために、どのような体制をとっているのでしょうか。

 効果計測はいいね!の数/率を測りながら、どのような車種情報と、どのような情報発信方法の相性がよいのかを見つつ、PDCAを回して次の投稿ネタのアイデアにつなげています。コンテンツの最適化を常に計ることがファン数を増やし、いいね!数/率を向上させる1つのポイントだと思っています。

 コンテンツのネタは組織横断で集める努力をしております。コンテンツのストック数の維持のため、社内全部署横断の企画会議を作り月に1~2回開催しています。企画会議はデザイン、開発、広報、営業など全部署のメンバーから構成され、常に数百から数千件ほどの投稿ネタストックを持つようにしております。

 そして、良質なコンテンツを発信するために、社外プロデューサーとして放送作家の鈴木おさむさんを招きアドバイスをいただいています。情報発信を生業としていない自分たちだけで、コンテンツを発信し続けるには限界がありますし、プロの方のお力を借りながらより良質なコンテンツを生み出す体制を整えております。

 最近では「ハッピーサプライズ」という企画を作りました。これは、日産の子育てミニバン、新型セレナをご購入されたご家族の中から抽選でサプライズ体験をプレゼントするという企画でして、その応募者の中から結婚して11年経つものの、奥様にプロポーズをしていないのでプロポーズしたいという応募者が選ばれました。

 鈴木おさむ編集長が考案したのは奥様へのどっきりプロポーズ企画です。ご主人の11年目のプロポーズを、日産と鈴木おさむ「にっちゃん」編集長がプロデュースし、奥様には完全に秘密にした上で、長年の想いをこめた盛大なイベントに仕立てました。

 ご主人の突然のプロポーズと共に行われる、総勢93名の親戚や知人・ダンサー・鼓笛隊による感動的なダンスパフォーマンスのために、奥様のママ友や、東京外にお住まいの両家のご両親までもが協力し、「いい夫婦の日」にちなんだ、ほっこり心が温まるショートムービー企画です。この企画は、皆様から想像以上の反響を得ることができ、日産に対しても大きな賛同を皆様よりいただくことができました。企画を通じて、日産のファンになっていただくきっかけを作ることができました。

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この記事の著者

松矢 順一(マツヤ ジュンイチ)

株式会社アサツーディ・ケイ クロスコミュニケーション局を経て、伊藤忠商事株式会社情報産業部門でデジタルマーケティングを担当し、株式会社ADKインタラクティブ取締役就任。その後、楽天株式会社メディア事業副事業長を経て株式会社Tube Mogul執行役員就任。著書には共著で『次世代広告コミュニケーション』『トリプルメディアマーケティング』。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/11/20 08:00 https://markezine.jp/article/detail/18610

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