オンラインとオフラインの情報を紐付け効率的なマーケティングを実現
──ディーラー送客のためのデジタル利用として、O2Oを積極的に展開されていると伺っております。どのようなKPI設計をされているのでしょうか。
デジタルからでディーラーへ送客した効果を測る仕組みですが、昔からあるお客様へのアンケート調査を行いつつ、400万人の日産メールマガジン会員データベースを活用し、オーナー単位でROIを測れるような仕組みが構築できております。
一度何らかのカタチで日産に接触いただいたお客様と継続的なコミュニケーションがとることが目的です。メールマガジン会員の方については、セグメンテーションをしながらメールマガジンに対する反応を見ており、コミュニケーションの効果を上げています。
車の買い替えサイクルが8年~10年だとすると、購入意思がなければ基本的にサイトへ来訪しないわけですから、来訪いただいた際にそのお客様を離さずにエンゲージできる仕組みを持つことが重要です。
メールマガジン会員のお客様がそれぞれ10年に1回買い換えていただいたとしても、販売台数はかなりのボリュームになります。日産が目指すワン・トゥー・ワン戦略の解の1つがここにあると思っています。
──最近実施された施策の中で成功例はありますか。
O2Oという点では東京神奈川圏の販売会社と連携しながら、お店に行くとクオカードがもらえるキャンペーンを実施しており、効果検証中です。当選者には「ディーラーへ行くと2,000円のクオカードがもらえます」というメールを配信するのですが、送客効率は想定を上回っており、敷居が高いと言われているディーラーへの送客としては成功している仕掛けの1つです。
この施策はソフトバンクさんとヤフーさんのメニューである、「ウルトラ集客」を利用しています。ヤフーさんのバナー広告で告知をし、当選者は店頭の電子クーポン読み取り用の専門機械から自分の携帯やスマートフォンをかざすと、インセンティブがもらえる仕組みです。
今年のアドテックではO2Oのお話をされている方が多かった印象ですが、O2Oをオンラインからオフラインへ動かすという狭義の意味で捉えるのではなく、お客様がサービスや商品を購入するまでのオンラインとオフラインの行き来の全体を効率的に行うべき、とおっしゃっていた方がいましたがその意見に私も非常に賛同しました。
ウルトラ集客の取り組みでは、インセンティブをきっかけにディーラーへ送客していますが、改善の余地があると考えております。今後は購買行動に基づき、オンラインとオフラインを効率的につなげる戦略を組み立てていきたいと考えています。
日産独自のワン・トゥー・ワン戦略を構築
── 最後に今後の御社のデジタル戦略に関してですが、これから目指していきたい方向性について教えてください。
今後としては、先ほども申し上げましたワン・トゥー・ワンへの対応強化が最優先です。常にテクノロジーは進化しておりますので、それらを活用しオウンドメディアも含めたワン・トゥー・ワン対応をいかに実現していくのかが重要なミッションです。
デジタルチームの位置づけから考えますと、お客様の行動を時系列で追った際に、どこでデジタルと触れているのかを詳細に把握する時期に差し掛かっていると感じます。テレビを見つつスマートフォンを触ると言われて久しいですし、オムニチャネルという言葉も耳にするようになりました。クルマという商材において、お客様はどこでデジタルに触れているのかという解を導きだす必要があります。
パーチェスファネルの概念では、恐らくデジタルは確認媒体で終わってしまうのですが、現実は違うのではないかと感じております。パーチェスファネルを時系列で分解し、どこでお客様がデジタルに触れているのかをまずは理解し、その瞬間を逃さないパーソナライズな対応が実現できれば、8年~10年に1度の購買チャンスを活かせる鍵になると考えております。
