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Owned Media Report~オウンドメディアマーケティング戦略の潮流

「お客様の行動導線に合わせてオウンドメディアを再定義」
資生堂のオウンドメディア戦略

 経済環境の変化、テクノロジーの進化、生活者の情報接点の多様化…。環境が劇的に変化する中で、オウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディアというそれぞれ性格の異なるメディアを連携させたマーケティング戦略が求られています。その中心となるべき存在である、オウンドメディアの構築・運用に企業はどのように取り組んでいけばよいのでしょうか。今回は、資生堂のオウンドメディア戦略の全体像について迫ります。(聞き手:松矢順一氏)

今回お話を伺ったのは…
株式会社資生堂 経営企画部 コミュニケーション企画室長
小出 誠氏

1962年東京都生まれ。1984年早稲田大学商学部卒業。同年資生堂入社。大阪地区での営業部門勤務ののち、1986年商品開発部にてスキンケア化粧品、ボディ製品の開発を担当。その後、宣伝部にて媒体担当、コーポレートデザイン室、経営企画部、社長室で、企業理念策定、コーポレートコミュニケーション、コーポレートガバナンスなどの担当を経て、2004年プロフェッショナル事業プロフェッショナル企画部課長。2008年経営企画部次長。2010年4月より現職。現在は企業サイトを中心にデジタルコミュニケーション戦略に携わるほか、銀座の本社ビル開発プロジェクトを担当。

資生堂の決断、2012年のオウンドメディアの大改善

 ―― まずはじめに、2012年のオウンドメディアのフルサイトリニューアルについて伺いたいと思います。サイトリニューアルのポイントは。

 リニューアルにおけるひとつの大きなポイントは、お客さまのWebサイトに対する需要の多様化に合わせて自社Webサイトを2つに分け、加えてお客さまとの出会いを拡大するサイトも用意しました。企業情報サイト、販売とマーケティングを目的としたサイトという2つのオウンドメディアと、異業種連動型のサイトです。

 企業情報サイトに関しては日本だけのローカルな視点ではなく、グローバルを視野にいれたサイトとして立ち位置そのものを変えました。これはグローバル企業としてグローバルにお客さまの目線に合わせるという目的からです。グローバルサイトとして日本語と英語にミラー化し、世界中で同じ情報が届けられる仕組みとしています。その結果、世界各国での資生堂グループに対する共通する理解が広まったと感じております。

株式会社資生堂 小出 誠氏
株式会社資生堂 小出 誠氏

 販売とマーケティングを目的としたサイトに関しては、ニーズに合わせて機能を分け、お客さまが流入しやすい導線設計に変えています。各ブランドサイトは生活者とのコミュニケーションを図る場として機能しています。ブランドを深く理解頂くために、マスメディアと連携することも可能です。また、生活者が体験する場として、サンプルモニタープレゼントや、ビューティーコンサルタントを絡めたコンテンツなどを用意しています。

 最後の異業種連動型のサイトは、広義にはオウンドメディアともいえますが、自分たちだけが運営元ではないメディアとして、アライアンス型のマルチクライアントメディアとして立ち上げています。

 これらのオウンドメディア全体のリニューアルにより、サイトリニューアル前と比べ1.7~2倍のトラフィック獲得に成功しています。また、売り場と別で存在していたWebサイトにEC機能を付加したことにより、一気通関したコミュニケーションを実現することができました。その結果、売り場と連動することもできるようになりました。

 ―― オウンドメディア領域でのマーケティング戦略を深く分析した上でのサイトリニューアルを、大々的に行ったのですね。

 はい、すべてはお客さまの行動導線に合わせて再設計をした結果です。

 会社の規模、商品群、目的などによりオウンドメディアの役割は異なると思っております。私たちは多くの商品を持ち、Eコマースのような直販だけでなく、ブランディングサイトとしても機能することも求められます。また、企業情報サイトとしての役割も御座いますので全体最適の中で来訪する方々に適切な情報を与える匙加減の難しさがあります。

資生堂のオウンドメディアの構造
資生堂のオウンドメディアの構造

お客さまがストレスを感じないか、回遊しやすいか、再来訪したくなるか

 ―― リニューアル前後でオウンドメディアの役割に変化はありましたか。

 リニューアルに向けて徹底的にオウンドメディアの役割を考え、定義しました。定義するに当たってはサイトアクセス解析によるユーザーの行動導線や接触時間帯、サイト滞在時間などの分析や定量、定性調査によるユーザーニーズ分析、トリプルメディア構造の中での最適化などを踏まえて、新しいオウンドメディアを構築しております。

 この定義付けが各社の商品やサービス、企業方針によりさまざまで、オウンドメディアマーケティングを進めていく上での重要な要素だと思います。オウンドメディアの役割はコミュニケーション戦略構築の上でより重要になってきています。

 自社でコントロールできる唯一のメディアとして、来訪されたお客さまがストレスなく回遊でき、サイト来訪目的を達成できる重要なコミュニケーション接点ということを前提にサイトリニューアルをしました。

 ―― 来訪するユーザーに対するサイトユーザビリティの点で、特に留意されている点はありますか。

 作り手側からするとサイトを作ることにこだわるあまりにグラフィックを作り込みすぎたり、Flashを多用したりと、時にお客さま視点でのユーザビリティを忘れられがちです。私たちはお客さまの使いやすさを優先するために3年前より、点在していた社内のサイト制作体制を集約しました。それによりコスト効率だけでなく、クォリティの管理やユーザビリティ向上の管理を以前よりも大幅に改善できています。

 ―― 商品が発売されるごとに、また企業活動が活発になるほど比例して増え続けるオウンドメディア内のコンテンツを、どのようにまとめているのでしょうか。

 先程申し上げましたとおり、オウンドメディアを3つに分けているのですが大項目としての切り分けは「企業情報」と「マーケティングメディア」の2つの構成です。マーケティングメディアが「自社単独のオウンドメディア」と「多企業のコラボレーションメディア」に別れているわけです。コンテンツに応じて格納場所を変え、お客さまの導線に合わせてコンテンツの設計をしております。

 ―― その切り分けの中で各オウンドメディアの戦略を構築し、運用されているということですね。

 はい。来訪されるお客さまにとっての目的が達成できる、メリットが享受できるかどうかだと思っております。お客さまにとって見やすいサイトなのか、ストレスを感じないか、再来訪していただけるかどうかを常に考えております。

資生堂のオウンドメディアでのコンテンツ格納
資生堂のオウンドメディアでのコンテンツ格納

 ―― 各ブランドのサイト担当者や企業サイト担当者が制作運用していた体制をひとつにまとめたということは、セキュリティ管理の面においてもメリットはあるのでしょうか。

 もちろんです。セキュリティ管理においても、リニューアル前まではブランドサイトや企業サイトなどで別の運営を行っているものもありましたが、それを1か所での管轄することで安定したセキュアな環境でお客さまに情報提供ができるようになったと考えております。またコスト効率も改善できたと思います。

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この記事の著者

松矢 順一(マツヤ ジュンイチ)

株式会社アサツーディ・ケイ クロスコミュニケーション局を経て、伊藤忠商事株式会社情報産業部門でデジタルマーケティングを担当し、株式会社ADKインタラクティブ取締役就任。その後、楽天株式会社メディア事業副事業長を経て株式会社Tube Mogul執行役員就任。著書には共著で『次世代広告コミュニケーション』『トリプルメディアマーケティング』。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

楳田 良輝(ウメダ ヨシテル)

 1990年関西学院大学商学部卒。オリコムにて家電、通信、飲料、光学、生保を担当後、人事・経営企画部門のマネジャーを経て、デジタルマーケティング部門に。その後ADKインタラクティブに合流、2011年よりデジタルインテリジェンスに参加。現在、同社取締役シニアディレクターとして、デジタルコミュニケーション、組織・人材、マーケティングプラットフォームなどのコンサルタント。共著に『DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門』。横浜在住。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2012/12/14 17:00 https://markezine.jp/article/detail/16711

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