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ビッグデータ・マーケティング

ビッグデータ活用のためのIT投資、妥当なラインは? 外部・内部側から見た「付加価値」で考える


ビッグデータとIT投資-過去に学ぶ-

 ビッグデータの活用に対して、どれくらいIT投資をするのが妥当といえるのでしょうか?  かつてのIT関連ブームと比較してみることにします。

 90年代以降、BPR(Business Process Reengineering)、ERP(Enterprise Resource Planning)、SCM(Supply Chain Management)などのIT関連ソリューションが次々に日本に上陸してきましたが、いずれも組織や業務基盤の全面改変を求めるものであったといえます。

 ところが、ビッグデータはそうではありません。IT投資の大きさは、どのようなシチュエーションでビッグデータ利用するか、だれがアプリケーションを利用するのか、どの程度基幹業務と連動させるのか、PDCAサイクルをどれくらいの間隔で回すのかなどに依存します。

 たとえば、ビッグデータ関連の技術を利用すれば、基幹業務系のバッチ処理のPDCAサイクルを劇的に短縮することができます。しかし、利用部門にそこまでのニーズがなければ投資の意味はありません。また、現在注目度の高いテキストマイニング技術の導入についても、自社コールセンターの基盤システムとして日々のオペレーションにビルトインする場合と、新商品開発などの際に、1回限り自社製品の評判をスポットで分析してみるのでは、システムの規模や投資額に雲泥の差が出てきます。

 ビッグデータの適用では、過去の教訓に学んでいく必要があると考えます。ラディカルな導入が支配的であったリエンジニアリング・ブームは、火付け役であったハマー(1996)が、ラディカル一辺倒ではなく、漸進的な改善活動を組み合わせることの意義を唱えて終焉を迎えました。CRMの成功についても、リグビーら(Rigby et al.,2004)は、大規模な投資ではなく「必要な情報の優先順位を慎重に決定し、それらを顧客戦略に従った利用を確実にすれば、小さな投資と低いリスクでこれまで以上のインパクトをもたらすだろう」と指摘しています。

 ビッグデータ適用のスコープ、利用技術、マーケティング戦略と情報活用、オペレーションとの整合性、付加価値、プライオリティ、これらを明確にすることで、投資に対する不安は和らいでいくものと思います。経験曲線が働いていない状況で、松・竹・梅ランクのなかの松レベルをいきなり目指すのではなく、まずビッグデータの可能性を知って、試用的、段階的に導入を開始してみることも大切でしょう。

【参考文献】
Hammer, M. (1996), Beyond Reengineering –How the Process-Centered Organization is Changing Our Work and Our Lives-, Harper Business.
Rigby, D.K., Reichheld, F.F., and Schefter, P. (2002), “Avoid the Four Perils of CRM”, Harvard Business Review, February, 2002, pp.101-109. Rigby, D.K. and Ledingham, D. (2004), “CRM Done Well”, Harvard Business Review, November, 2004, pp.118-129. Porter, M.E. and Miller, V.E. (1985), “How information gives you competitive advantage”, Harvard Business Review, July-August, 1985, pp.149-174.
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この記事の著者

佐々木 宏(ササキ ヒロシ)

立教大学 経営学部教授。

筑波大学 経営・政策科学研究科修士課程、大阪大学経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。金融系シンクタンクにてマーケティング・リサーチ、経営コンサルティングなどに従事後、大学教員になる。マーケティング・リサーチ、データマイニング、eビジネス、IT産業の国際比較などが専門で、大...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/06/27 17:51 https://markezine.jp/article/detail/17201

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