低迷する日本の音楽ビジネス
こんにちは。音楽とテクノロジーについてのブログを書いているジェイ・コウガミと申します。個人のブログでは近年世界で拡大しているデジタル音楽サービスとトレンド、変化する音楽コンテンツビジネスを日々紹介しています。
低迷が続く日本の音楽市場ですが、今年に入り、デジタル音楽サービスの新潮流が見られます。この流れは新しい消費者やビジネス機会を獲得し拡大できる転機と思います。また、世界に目を向けると、消費者、企業、スタートアップや起業家、クリエーター達が、音楽サービスを活用し、次々と新しいビジネスや消費形態を開拓しています。
この連載では、海外の情報が今後のデジタル音楽ビジネスのヒントになればと思い、注目される音楽サービスやクリエイティブな活用事例を、情報感度の高い読者の皆様にご紹介したいと思います。またこの連載を通じて、一人でも多くの企業のマーケティング担当者や広告代理店の方、アプリ開発者など、普段は音楽との接点を持たない企業の皆様に、音楽を使ったマーケティング施策に関心を持っていただければと思います。
デジタル音楽がビジネスの中心に ~激しく変化する消費形態~
ここで、世界のデジタル音楽の現状について簡単に説明しましょう。いま世界では、音楽を消費する形態が激しく変化しています。日本同様、世界的にもCD売上は低迷し続けています。一方、デジタル音楽サービスは顕著な成長を遂げています。昨年は、デジタルが普及したおかげで、世界では13年ぶりにプラス成長を遂げ、スウェーデン始め北欧諸国では音楽ビジネスが二桁成長を達成するなど、音楽ビジネスは一躍注目を集めつつあります。その中でもデジタル分野が世界の音楽ビジネスの中心になり始めました。
その一例はYouTubeです。世界最大の動画サイトであるYouTubeは、同時に最も利用される音楽視聴サービスのひとつです。調査会社ニールセンは、米国のティーンエイジャーはラジオやiTunesよりもYouTubeで音楽を聴くという調査結果を2012年に発表しました。近年YouTubeは、多くのミュージシャンの成功を生み出しています。昨年は韓国人アーティストPSYの「江南スタイル」が、わずか半年近くで再生回数10億回以上を超える大ヒットとなり、YouTube市場最多再生数を記録しました。またPSYだけでなく、YouTubeの歴代チャートではジャスティン・ビーバーやジェニファー・ロペスなど、トップ10のうち9本はどれも再生回数4億を超える音楽関連の動画です。
YouTubeで成功するミュージシャンの多くは、オンラインからオフラインにまで活動の幅を広げています。前述のPSYはネットの話題性を、全米で放映されるテレビ番組へのゲスト出演やスーパーボールのCM出演につなげています。その結果、一般消費者の間にはオンラインで広まった音楽をリアルの場でも消費するサイクルが生まれ始めています。ミュージシャンのYouTubeを使ったプロモーションの増加や、YouTubeミュージシャンと企業をつなぐマーケッターの存在も消費形態に変化をもたらす要素のひとつと言えます。
注目を集めるサブスクリプション型音楽サービス
一方で、別の形の音楽消費も数年前から世界的に大きく注目を集めてきました。それが、定額料金で音楽が楽しめるサブスクリプション型音楽サービスです。2013年に入り、日本でもレコチョクBest、UULAなどの有料音楽サービスが立ち上がったことで、ご存知の人も多いのではないでしょうか? また定額制ではなくチケット制というユニークなアプローチのGroovyをDeNAが開始したことも話題になりました。
世界でも音楽ストリーミングサービスのSpotifyやDeezer、Rdioなど定額制のサービスはテクノロジーと音楽ビジネスの新しい融合形として大きな注目を集めています。