デジタル音楽ビジネスの新たなトレンド
2013年の各国での音楽売上が発表されました。いま世界ではCD売上の減少に歯止めをかける方法が見当たらず、ダウンロードがメインストリームとして存在感を発揮し、さらに音楽ストリーミングが急成長しています。そして今年発表されたIFPI (国際レコード産業連盟)のレポートで明らかになった数値は、世界の音楽ビジネスが新たなフェーズを迎えようとしていることを暗示しています。
世界の音楽業界の売上は前年から3.9%ダウンして150億ドル。CDなどフィジカル録音メディアの売上は11.7%ダウンして77億3000万ドル。その一方でデジタル音楽の売上は4.3%上昇し58億7000万ドルと大きく飛躍しました。
しかしこの本格化するデジタル時代の音楽ビジネスにおいても、また新たなトレンドが生まれ始めています。それは、デジタルダウンロードと音楽ストリーミングのバランスです。IFPIのデータをもとに音楽ビジネスの状況を見ていきましょう。
「ダウンロードは死んだ」のか?
58億7000万ドルのデジタル音楽売上の中で、iTunesストアやAmazon MP3などデジタルダウンロードは前年から2.1%ダウンし39億3000万ドルと減少しています。一方、音楽ストリーミングおよびサブスクリプション型音楽サービスの売上は、前年比51.3%と驚異的な成長率を見せ、11億1000万ドルへ急成長、初めて10億ドル台に達しました。
ここで新たな議論が巻き起こります。これまでデジタルダウンロードはCDの売上減少を食い止め、業界の売上を回復させると思われてきました。しかし、予想に反してダウンロードが減少し始めます。代わりに台頭してきたのは、音楽ストリーミングとサブスクリプション型音楽サービスです。
まだダウンロードが減少傾向に入ったと断定することはできません。しかし将来的に音楽ストリーミングサービスの売上が、CDやダウンロード売上を補完し全体を回復させる可能性に期待が高まります。
IFPIのレポートによれば、2013年の時点で音楽ストリーミングサービスの有料会員は全世界で2800万人を超えており(2011年はわずか800万人)、デジタル音楽の分野でレコード会社やアーティストへの新たな収益確保に貢献しています。
この2800万人でSpotifyやDeezerといった人気音楽ストリーミングサービスの有料会員数は半分近くを占めている可能性があります。レコード会社やアーティストにとってもこれらのサービスの存在を無視することは難しくなってきており、今後はどう関係を築いていくかが将来的なカギとなります。
メディアの中には「ダウンロードは死んだ。音楽ストリーミングが現代で、未来だ」と宣言するジャーナリストも表れています。その一方で、ロイヤリティ分配の少なさや将来性を危惧し、反対意見を述べるアーティストも表れるようになりました。
いま、音楽ビジネスは揺れています。が、音楽の未来は確実に変わり始めています。