分析の現場を変えるのは現場? トップ?
小川 その意識をどう作っていくかですよね。ただ、他社事例ってあまり効かないと思うんです。どうしても言い訳が出てきてしまう。「うちはこういうモデルじゃないから」とか「人がいないから」とか「そんなにデータ量がない」とか。
清水 それはできないことの言い訳(笑)。
小川 だから、どうしても一人キーマンは必要な気がする。キーマンがいない会社が多いとして、どうやって最初の種を植えるのか。アメリカは人依存でやるケースって多いんでしょうか。
清水 アメリカの場合は、トップがまずそういう意識をもって下の人たちに「やれ」と落としていく。そうしたらマネージャーが必死で人を探して連れてきてっていう、三木谷モデルがある(笑)。個人のスキルに大きな違いはなく、体力勝負じゃなくてスマートにこなしていくっていう点が大きな違いかな。
小川 アメリカは人を探す気になれば探せるけど、日本はそんなに人がいないような。
清水 人はね、ポテンシャルがあれば、吸収して試行錯誤してドライブすればいいだけだからそんなに問題じゃない。あとは経営側が背中を押すのか、お金をどれぐらいつぎ込むのかというだけの話で。と考えると、現場のスキル不足とか人手不足というよりは、上がいかに力を入れてやるのかだけだと思う。
小川 それって現場から変えられるのかな。
清水 変えられない(笑)。
小川 やっぱそうか(笑)。そう思うよね。
清水氏、電通レイザーフィッシュの社外フェローに
清水 僕は去年までセミナーとか連載をいっぱいやっていたんですが、現場の人しか来ない。しかも意識が高くて、自分から学ぼうっていう人のみ。でも、残念ながらそういう人たちは孤軍奮闘していて、社内に戻ってもお金もないしリソースもない。結局、うまく進まず埋もれるかやめてしまう。そういう個人レベルの現場サポートをいくらやっても、あんまり変わらないなと思って、最近は組織的な“上からパターン”を試しているんです。それが社外CMOとか社外CAO。先日発表した社外フェローもその取り組みのひとつです。
押久保 電通レイザーフィッシュの社外フェローですね。
清水 あれは完全にトップダウンで、必要なお金をかけて、体制も評価体系も変えて、実際のプロジェクトでやる。それを閉じた世界でやってしまうと、その会社しか良くならない。社長レベルから本気になりだした、データに対して投資をし始めたというメッセージを伝えるために、社外フェローというタイトルをもらってプレスリリースを打ってもらいました。
小川 オープンにする意味ってそこですよね。電通レイザーフィッシュはやる気だぞと、やるということは何かしら成果が出るはずだということで、お互いにプレッシャーもあるし、期待もある。あれは結構覚悟いるなと。
清水 だから、あれは宣言なんです。そこまでするほど本気なのかという、ある意味“踏絵”みたいなもの(笑)。コミットするならこちらもコミットする。それでうまく成果が出たら、事例として公開して広めていくことができる。
小川 僕はまったく方向が逆で、現場で困っている人にアプローチしていく。普通のアクセス解析ツールでできることってまだいっぱいあるし、個人で悩んでいるところもやれることはいっぱいある。そういう人たちを一人でも底上げできれば。そういう人が5年後10年後に、マーケティング部長やCMOみたいに偉くなってくれればいいなと。
清水 そうしたら、またトップダウンでだんだん組織も変わっていくし。
