『科学』『学習』以外にも、顧客目線を心掛け、ヒット作を続々と世に送り出す
MarkeZine読者の中には、お茶の間で聞いた「まだかなまだかな~。学研のおばちゃんまだかな~」というテレビCMを覚えている人が多いことだろう。
“学研のおばちゃん”が毎月届けてくれていたのが学研によって発行されていた小学生向け学習雑誌『科学』『学習』。『○年の科学』や『○年の学習』が自宅に届く日を心待ちにしていた人も多いはずだ。今でも『大人の科学マガジン』シリーズの新刊が出るたびにネットで話題になっていることから、根強いファンがいることが伺える。
そんな『科学』と『学習』は、数世代にわたるファンに惜しまれながらも2010年、2009年にそれぞれ休刊となってしまった。少子化が進んだことも一因だが、共働きの世帯が増えたことで“学研のおばちゃん”が各家庭に訪問して販売するスタイルが最適解ではなくなってきたことも要因として挙げられるのだろう。
そのような経験をしてきたこともあってだろうか。本来あるべき顧客目線で商品開発する「マーケットイン」の視点よりも、編集者が自らの思いを世に問おうと「プロダクトアウト」の発想をしてしまいがちな出版業界において、学研は顧客目線を重視。顧客の現状を冷静に調査・分析することで、ダイエット本の『樫木式カーヴィーダンス』シリーズ、大学受験用の『マドンナ古文』シリーズなどのヒット作品を続々と生み出している。
そして『科学』『学習』を子供に買い与えていた親世代がシニアになってきたことから、高齢者向け住宅・介護サービスにも参入。顧客と真摯に向き合いながら、同社のグループ理念にあるように「今日の感動・満足・安心と明日への夢・希望を提供」するべく、出版以外のビジネスにも視野を広げ、多角的に事業を展開している。
「お茶の間の役割をSNSで再現」 家族向けSNSに大きな期待
顧客を理解するため、学研が注目しているのはソーシャルメディアだ。顧客・見込顧客との接点を築いた後、どうすれば見込顧客を顧客に変えることができるのか。数年も前から、どういった施策を実施していけば最善なのかと検討を重ねてきた。
「出版業界では今、電子出版が注目されています。学研は出版業界の中でも電子出版に率先して取り組み、電子書籍化率では業界トップクラスです。ただ、電子出版が注目されたから『顧客目線を大事にしよう』『マーケティング手法を見直そう』と考えるようになったわけではありません。電子書籍の他にもう1つ、ソーシャルメディアの利用が拡大してきています。学研はソーシャルメディアが極めて重要なものだと早くから認識し、『ソーシャルメディアをどうやって活用すべきなのか』と数年前から重要課題に挙げてきました。
IBMが顧客の“顧”を“個”に変えて、“個客”を見据えるマーケティングに切り替えようと提唱していますが、さすがだなと思いましたね。学研も“個客”に焦点を当てて、ソーシャルメディアから得られるデータを基に“個客”の考え方・行動を分析して、マーケティングを再構築していこうと考えています」(学研 常務取締役 木村路則氏)
そういった背景からソーシャルメディアを研究・検討、FacebookページやTwitterアカウントを開設し、試行錯誤しながら運用を続けてきた。Facebookページ・Twitterアカウントの運用から得られた知見、そして長年にわたる顧客の生活・消費行動の分析を踏まえ、学研が同社のビジネスに大きなインパクトを与えることになるかもしれないと期待を込めて6月3日に発表したのが家族関係に特化したSNS「wellnote(ウェルノート)」を開発したウェルスタイル株式会社との業務提携だ。学研は「wellnote」に教育・子育てコンテンツを提供。祖父母や父親も加わり家族みんなで子供の教育をサポートできる場を生み出そうとしている。
「日本から消えたお茶の間の役割を、もう1度SNSで再現する」と木村常務は力を込めてwellnoteとの取り組みに掛ける思いを語っている。
学研は「wellnote」を軸にして、同社のマーケティングを大きく変革しようと考えている。「wellnote」によって学研が実現しようとしている野心的なマーケティング関連の取り組みとはどんなものか。こちらのPDFで紹介しよう。