アナリスト・ロール:「データを分析する」
この連載では「アナリスト」と呼びますが、一般的に「データ・サイエンティスト」という言葉はこのロールを指していることが多いと思います。アナリスト・ロールは、データ分析ツールのスキルが必須で、統計学の知識が問われる場面も出てきます。
データ分析ツールを使うスキル
データの分析ツールには過去のデータを表やグラフにして観察する、いわゆる「ビジネス・インテリジェンス」と呼ばれるソフトウェアと、過去のデータから法則性を見出し将来予測につなげることのできる「ビジネス・アナリティクス」と呼ばれるソフトウェアとがあります。両方をカバーするソフトも最近多くありますし、両方の内容を指してビジネス・アナリティクスと呼ぶ場合もありますが、2つの性質があることはご理解いただきたいと思います。
統計解析の理論に通暁している
基礎的な部分としては、確率理論に始まって、確率分布や仮説検定、単回帰・重回帰分析、統計値の意味や用途などになると思います。また必要に応じてベイズ統計学など各種の統計理論やデータ・マイニング/コンピューター・サイエンスに進んでいくと良いと思います。初心者の方からよく受ける質問、「アナリティクスに統計学の知識は必要ですか?」に関してはのちほど詳述します。
コンサルタント・ロール:「データ分析の活用を働きかける」
ディミトリ・マークスとポール・ブラウンが著書『データ・サイエンティストに学ぶ分析力』(日経BP社)の中で、「魔法使い」という表現でこのコンサルタント・ロールの特徴を端的に語っています。
アナリティクスでの知見はしばしば数字や数式という形で出てきます。コンサルタント・ロールはこれをビジネスの文脈で捉え直して会社のROIにつながるストーリー仕立てで語り、夢を見せつつ期待値コントロールも忘れない、こんな役どころとなります。具体的なスキルは以下のようになります。
コンサルティング・スキル
「アナリティクスの知見を業務で活用してもらう」と言うのは簡単ですが、実際には大変なことです。業務がそれでより良くなるからアナリティクスを活用する意味があるわけで、業務部門の人の知見をアナリティクスで凌駕する必要があります。ここで言うコンサルティング・スキルとは、アナリティクスで得られた知見をビジネスの文脈で捉え直して分かりやすく伝える、また業務や経営の課題の解決をアナリティクスのプロジェクトに落とし込むことを含みます。必ずしも順境とは限らない環境の中で粘り強く交渉する力も大切になってきます。
幅広い知識
業務・経営とアナリティクスの橋渡しをするロールですから、その両方に明るいことが求められます。外部からこんなスキルの人を探すのは難しいでしょうが、アナリティクスの発展段階が進んでこのロールが必要になった段階で、経験を積んだアナリストがプロモーションする形でロールを作ることも可能です。
コンサルタント・ロールが必要になるのは、初期段階というよりも、もう少し段階が進んでからでも良いと思います。初期段階はもの珍しさも手伝って協力者が得やすく、特に活用を促進するためのロールを置かなくても回ることが多いためです。ただある程度段階が進むと、初期段階の熱気は失われる一方、アナリティクスのバリューを証明しなくてはならない状況に置かれ始めます。その段階では、コンサルタント・ロールの人が、バリューを証明する、新たにバリューを創れるアナリティクスのプロジェクトを構想するなどのアクティビティをする必要が出てきます。
以上、3つのロールを見てきましたが、1つのロールがとても多岐にわたる内容であるため、一人で実施するというよりもチームで実施することが実際には多いと思います。
