発想方法は、「それは例えると何?」 マインドマップ式に書き出せ
比喩の中でもコピーによく用いられるのが<明喩(直喩)>と<隠喩>だ。<明喩(直喩)>は、形や色、感情などを似ているものに置き換える、あるいは似ているもので形容する表現だ。
『レトリック感覚』の著者・佐藤信夫氏の定義では、<明喩>は「XはYのようだ」「YのようなX」と例える言い方で、XとYという異なるものごとの間に類似性(=アナロジー)を見出して表現する。
例を挙げると、<紙のように薄い><糸のように細い><風のように速い><亀のように鈍い>といった、状態や状況のレベルを強調するときに使われる。たとえば<白い>色を説明する際、単純に<白い>と言うか、<雪のように白い>や<ミルクのように白い>や<ロウのように白い>と言うかで読み手のイメージは変わってくる。
以前、<バケツをひっくり返したような雨にも濡れない>というコートのキャッチフレーズを見かけた。<~のような>を使った分かりやすい表現だ。高い防水機能を強調して印象づけたいという意図だろう。
<激しい雨>や<すごい雨>でも分からなくはないが、<バケツをひっくり返したような雨>と言うことで読み手のイメージは鮮やかになる。
ただし、使い方には注意しなくてはいけない。基本的に比喩を使うのは、注目してほしい言葉に限る。強調しなくてよい言葉を比喩で飾り立てると、うっとうしい読みづらい文章になってしまう。メリハリが必要なのだ。
また、<明喩>はすべて<~のような>を使うわけではない。エアコンでも洗濯機でもよいが、稼働音が小さなモデルがあるとしよう。静かな音を訴求ポイントとしたキャッチフレーズではどのような表現ができるか。
たとえば<稼働音が小さい>→<静かな稼働音>→<どのくらい静かなのか?>→<赤ちゃんも起きないくらい静か>→<イメージしやすいよう置き換えると?>→<ささやき声くらい>というプロセスが考えられる。そうすると、キャッチフレーズは<ささやき声ほどの稼働音、赤ちゃんもぐっすり。>といった表現ができる。
この場合は<静か>を<~のように>で形容したのではなく、<静か>そのものを<ささやき声>に置き換えたのである。これも<明喩>である。
例では<~ほど>を用いたが、その他にも<~に似た><~そっくりの><~くらい><~めいた><~風の><~を思わせる><~の形の>などの表現が考えられる。
<明喩>を生み出すには、<それは例えると何?>と脳に問い続けるしかない。白さを強調したいので、<~のように白い>や<~のような白さ>というワードで検索すれば何かしら出てはくるが、いつもうまくいくわけではない。
置き換える言葉にいたっては、検索で探すのは無理なので、頭に汗をかくしかない。比喩のもうひとつの定番である<隠喩>も、<比喩>以上によく考えることが要求される。頭の中で考えるのにも限界があるので、書き出してみよう。
マインドマップのように言葉を書き出して、さらにその言葉から連想する言葉を思いつくまま書き出して、それを眺めながら考える以外によい方法はない。<隠喩>のアウトプットはそうした方法が不可欠だ。さて、その<隠喩>についてだが、文字数が尽きてきたので、次回でくわしく紹介したい。
まとめ
- レトリックを使うと注目されやすく記憶されやすい
- 比喩を上手く使えば、メッセージに強さが生まれる
- <明喩>のストレートな例えは、言葉のイメージを増幅する

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