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マーケターは企業とコンシューマーを結ぶコネクター
ビジネス構造のデジタルトランスフォームの牽引者となれ!

 近年のモバイルシフトやソーシャルメディアの浸透により、市場におけるコンシューマーの存在感が増大し、マーケティングだけでなく各方面に大きな影響を与えている。SAPジャパン バイスプレジデント クラウドファースト事業 本部長の馬場渉氏は「市場構造が大きく変化しつつある今、企業のビジネス自体を根幹から変えなければ生き残りは難しい」と警鐘を鳴らす。変化のうねりの中で、企業が取り組むべき改革の在り方についてお話をうかがった。

増大するコンシューマーの影響力

 インターネットが普及して以来、市場は加速度的に変化している。最も顕著なのが、市場に対するコンシューマーの影響力の増大だ。これまで最終消費者として製品やサービスを享受するだけだったコンシューマーが、潤沢な情報を手にして、交換・共有することで大きな発言力を持ちつつある。もはやBtoC型の企業はもちろん、BtoB型であっても、その先にコンシューマーが存在する限り、影響を受けずにはいられない。「あらゆる産業、企業でコンシューマーを無視できなくなってきた」とSAPジャパン バイスプレジデント クラウドファースト事業 本部長の馬場渉氏は語る。

SAPジャパン株式会社 バイスプレジデント
  クラウドファースト事業本部長 兼 Co-Innovation Lab 担当 馬場渉氏

 そして、その表裏の関係にあるのが、モバイルデバイスやソーシャルメディアなどの浸透でさらに勢いづいた「デジタルシフト」である。口コミや炎上、レコメンドなどデジタル上でのコミュニケーションが活発化し、コンシューマーの発言力増大の原動力ともなった。一方、そうしたコンシューマーに対応して、いち早くデジタルシフトを実現した企業もある。それらの企業は、コンシューマーとの関係構築に成功し、得られた情報を収集・分析することで業績的にも成果を上げはじめている。

 「自社製品を購入している顧客の性別や年齢、ライフスタイルなど、数十年前には考えられなかったことが、今では明確に把握できるようになりました。既存のチャネルしか持たない企業と、対応できている企業との差は明らかに開きつつあり、脅威に感じている企業も少なくないでしょう」

 しかしながら、馬場氏によると「デジタルシフトが全社で実現できている企業は意外に少なく、ほとんどの企業が部分的に留まっていることが多い」という。その結果、営業部などのフロント側ではデジタル化によってさらに深く顧客を熟知し、顧客から距離があるバックヤード側とのギャップが拡大しているというのだ。

 「顧客接点部門であるマーケティングや営業、カスタマーセンターなどでは、コンシューマーのスピードについていこうと必死です。先回りしよう、理解しようという意欲も高いです。しかし、顧客から離れれば離れるほど、そのスピード感は失われていきます。そうした齟齬は、現場部門と経営層の間にも如実に現れています」

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デジタルシフトするコンシューマーに向き合う

 コンシューマーの影響力が高まり、デジタルシフトが進み、組織内では部門間の齟齬が拡大している。その状況を誰もが認識しているにも関わらず、対応が進まない原因はどこにあるのだろうか。そうした問いに対し、馬場氏は「デジタルテクノロジーに対する理解不足」を上げる。

 「もはや顧客のスピード感、スケール感に対し、デジタルなしで立ち向かえるのかといえば、おそらく『NO』でしょう。根性や精神論では、突然顕在化する顧客のニーズや不満に翻弄されるだけで、真の実態を捉えて先回りすることなど不可能です。既にコンシューマーの多くはとっくにデジタルシフトしています。そうした環境下における可能性と対応しないリスクを鑑みれば、早急に取り組まなくてはと考えるはずでしょう」

 しかしながら、企業の決定権を持つ層には、従来のアナログ型パラダイムのビジネスにおいて成功体験を持ち、それを信じ続ける人が少なくない。また、プライベートにおいてもデジタルとの親和性は低く、デジタル武装した新しいコンシューマーの実態に触れる機会も少ないだろう。そうした実感がない人が陥りがちなのが「デジタルシフト=ITソリューションを入れる」という誤解だ。

 「会社のDNAがアナログで、従来型パラダイムのマインド上にあるにも関わらず、ITソリューションを積み重ねても真の意味での効果が得られるはずがありません。デジタルネイティブな企業が強みを発揮しているのは、デジタル化されているからではなく、デジタルを前提にビジネス全体が作られているからです。ですから、アナログネイティブな企業もマーケティングに留まらず、プロモーションや製品開発、在庫管理など、あらゆる業務プロセスを変革し、ビジネス構造自体が変わる必要があります。局所的ではなく、全体をデジタルトランスフォームすることが大切です」

あなたの会社はデジタルトランスフォースできてる?

 それでは「デジタルトランスフォーム」を実現するには、何が必要なのだろうか。馬場氏は「デジタル化を前提にビジネス自体を再構築することであり、企業改革と同義」と説明する。

 「これまでSAPは、企業改革を目指す上での経営課題となる『イノベーション』と『トランスフォーメーション』を支援してきました。激変する経済環境で企業が生き抜くためにはイノベーションによる新たな仕組みづくりと、トランスフォーメーションにより効率化・標準化しながら強い運用組織をつくることが必要です。その両輪が機能してこそ、真の企業改革が可能になると考えています。そして、そのために3つの成功要因『実現のための方法論(BPRなど)』『推進者の育成対応』『支援ツール(ERPなど)』を提供し、企業改革推進を支援してきました」

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ロジカルシンキングの延長上にイノベーションの解はない

 同社は、企業のトランスフォーメーション実現に向けて、約40年にわたって支援を続けてきた実績を持ち、そのロジックと解を明らかにしてきた。しかし、イノベーションには答えがない。なぜなら、イノベーションを実現するためには、既存のものを破壊し、常識をくつがえす斬新な考え方からアプローチする必要があるがあるからだ。「ロジカルシンキングの延長線上に解はありません。むしろ日常的に無意識に行っている仕事のやり方がイノベーションを阻害していると理解することからはじまる」と馬場氏は指摘する。

 しかしながら、破壊は目的なく行われるものではない。目指すべきは、市場に絶大な影響力を持つコンシューマーの攻略だ。まずはコンシューマーを理解し、その接点であるネットにおけるデジタルアドバンテージを高める必要がある。そして、そこで得たコンシューマーの実感を、バックヤード部門に伝え、全社で共有していく必要がある。ばらばらに判断されていた部門をデジタルで結び、チームとしてまとめ上げること。こうしたことを一気通貫で実現するのが 「SAP Cloud for Customer」 だ。

 馬場氏は「データが溜まったら勝ったようなもの」と語る。また、データを分析して各部門が必要な形で情報を受け取ったり、フロントとバックヤード、現場と経営を情報連携させる点においても、そこは同社の得意分野である。

 「これまでチャネルや部門ごとに分断されがちだったCRMが統合されることで、真の顧客像を掴み、その先に目指すものが見えてきます。イノベーションは常に最前線のコンシューマーと協業し、その先を見渡せたとき、部署や職務を越えた共通認識として生まれてくるものなのかもしれません。そうしたイノベーション体質を持つ企業に生まれ変わるために『SAP Cloud for Customer』は大いに貢献するでしょう」

マーケターは企業とコンシューマーを結ぶコネクター

 それでは「SAP Cloud for Customer」を活用し、コンシューマーの実態を把握することでどのようにビジネスが変わったのか、2つの事例を紹介しよう。

事例1:大クレームを巻き起こしたCMの真相

 とある企業で刺激的なCMを放映したところ、大クレームが発生した。経営陣は放映停止を決定するものの、マーケター側は「そのクレームは私たちの本当のターゲット層から寄せられているものなのか」と疑問を持った。そこで「SAP Cloud for Customer」を活用して分析を行ったところ、製品のターゲットとなる層からは高い評価を受けていることが明らかになった。そして、ユーザー層別に反応の違いを定量化して明示し、経営陣を説得してCM続行を決定した。その結果、CM作成費用が無駄にならなかっただけでなく、売上増加へと結びついた。

事例2:在庫はあるはずなのに、必要としている消費者に届いていない

 また、その他のある企業では自社の商品がヒットし、増産に踏み切り、すぐさま出荷を行った。にも関わらず、SNS上の顧客の声から、ほしいと思っている人に商品が届いていないことが明らかになった。そこで出荷履歴や回転数などを分析したところ、偏った分配が行われ、ターゲットとの親和性が低い小売事業者に多く納品され、在庫として残っていることが判明した。その結果、分配ポリシーを見直し、販売の機会損失を大幅に低下させることができた。

考察

 いずれも現場の担当者は「CMの妥当性」「分配の間違い」に感覚的に気づいていたと思われる。それを分析することで、客観的な判断の指標としての数値でその感覚の根拠を示すことができた。よって決済者である経営者を説得でき、組織を動かすことができたのだ。その積み重ねにより、企業全体の意思決定がスムーズになり、現場と経営層の軋轢も解消していくだろう。その意味でも、マーケターは企業改革、デジタルトランスフォームの牽引者といえる。

 「マーケターは狭義のマーケティング業務に閉じこもらず、ぜひともテクノロジーを味方につけて革新的なマインドを持ち、フロントとバックヤード、現場と経営、そして企業とコンシューマーをコネクトできる存在になってほしいですね。SAPは次世代マーケティングを支える存在となるべく、中長期的にマーケティングを対象としたサービスに徹底的に注力していきます。大いに期待していただければと思います」

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウマミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2013/11/19 10:00 https://markezine.jp/article/detail/18630