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ジェイ・コウガミの“デジタル音楽の新潮流”

徹底したパーソナル化、アメリカで一人勝ちした音楽サービス「Pandora」


 ネットでラジオが聴ける。それだけでなく、自分の好みに合った音楽をかけてくれる。そんなパーソナライズド・ラジオの世界を切り開いた巨大サービス「Pandora」の魅力とビジネスの核をジェイ・コウガミさんが解説します。

ネットラジオの地平を切り開いた「Pandora」とは?

 世界では、音楽ストリーミングサービスが著しい成長期を迎えています。無料、または月額定額制で好きな音楽がPCでもスマホでもタブレットでも好きな時間に聴ける聴き放題音楽サービスの中には、月間で数百万、時には数千万のアクティブユーザーを集める人気サービスも出てきました。

 特に今その分野で注目を集めているのが、世界最大の音楽マーケットであるアメリカで最大のユーザー数を誇る、無料のネットラジオ「Pandora」(パンドラ)です。

ラジオを徹底的にパーソナル化

 ここ5~6年の間に、デジタル音楽サービスの分野では、「Spotify」や「Deezer」などの音楽スタートアップから、アップルやグーグル、アマゾンなど巨大IT企業まで、さまざまな規模の企業がプロダクトを発表してきました。一方でデジタル音楽サービスの世界は、収益化やユーザー獲得、コンテンツ配信契約の難しさから、多くの企業が参加しては撤退を余儀なくされるビジネスでもあります。

 タワー・オブ・パワー、MCハマー、グリーン・デイなどファンクからヒップホップ、ロックまで幅広いミュージシャンを輩出してきたカリフォルニア州オークランドに本社を置くPandoraの創業は2000年。音楽ビジネスの世界で10年以上も事業を継続しています。

 アメリカ人の生活には音楽を日常的に聴く文化があります。その生活を支えているメディアの1つがラジオです。Pandoraは、この分野において初めてデジタル化に成功したラジオ=ネットラジオです。その成功の秘訣といえるのが徹底したパーソナル化でした。

 Pandoraは、リスナーの好みに合わせて自動で選曲してくれるレコメンデーション機能をフル活用した、パーソナルなラジオです。

 Pandoraの使い方は非常にシンプル。リスナーはログイン後、好きなアーティストやアルバム、曲名を検索し再生するだけで、2曲目からはPandoraがリスナーの好みに適した音楽を自動で再生してくれます。設定や曲のダウンロード、アップロードをすることなく、聴き流しながら音楽を楽しめるのが最大の特徴です。リスナーが選んだ曲を元にして音楽ステーションを構築してくれるネットラジオは、パーソナライズド・ラジオと呼ばれています。Pandoraはこの分野で他のどの企業よりも一歩リードしてきました。

 自動レコメンデーションを可能にしているのは、Pandoraが独自に開発しているテクノロジー「Music Genome Project」(ミュージック・ゲノム・プロジェクト)。これは、プロのミュージシャンや音楽の専門家が、Pandoraで再生する楽曲を1曲ずつ、ジャンルやテンポ、楽器など細かく属性によってカテゴリー分けしてデータベース化するプロジェクトです。Music Genome Project内に存在する属性はなんと400以上! Music Genome Projectはその膨大な情報量を人の手で作ろうという途方もない規模のプロジェクトなのです。マシーンによるアルゴリズムではなく、人間の耳に委ねられたコンテンツ解析システムという大変ユニークなアプローチを売りにしています。

 Pandoraリスナーは音楽が再生され始めたら、好きな曲には「Thumb Up!」(フェイスブックの「いいね!」ボタンと似た機能)ボタンをクリックすることができます。このボタンがクリックされるほど、各ユーザーごとの音楽に関する趣味嗜好がデータベースに蓄積されていきます。PandoraはこのデータをMusic Genomeのデータと組み合わせることで、リスナーの好みに近い音楽レコメンデーションの精度を高めていくことができます。

 Pandoraが狙う層には、これまで地上波ラジオに聴き親しんできたユーザーや、仕事場や勉強中にBGM代わりにラジオをつけて作業するユーザーがいます。このような一般利用者は、必ずしもIT業界に属しているわけではありません。誰もが使えるようにサービスを徹底的に簡素化して提供しているところが、人気の秘訣と言えるのではないでしょうか。

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この記事の著者

ジェイ・コウガミ(ジェイ コウガミ)

海外の音楽とテクノロジーの動向を追いかけるブログを書いています。デジタル音楽をテーマに、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービスや音楽サービス、新しいテクノロジー、業界の最新動向、クリエイティブなデジタルPR事例、企業の音楽マーケティングなどをいち早く日本で紹介しています。米国オレゴン大学卒。雑誌やオンラインで音楽関連の寄稿記事を書いています。

Twitter: @jaykogami
Facebook: jaykogami
ブログ:http://jaykogami.com

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/11/29 11:29 https://markezine.jp/article/detail/18900

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