カッコよくても、自分に酔ったら届かない
一方で、敬意を欠いた文章とはどのようなものか。内田さんはその1つに、自分に向かって書いた文章を挙げる。カッコいい文体や言葉を駆使して、<自分が言ったことを、自分で読んで、喜んでいる>文章のことだ。これは自分に酔った文章、内容よりも自分がいかに頭が良いかを訴える文章だ。
このような文章には、読み手という相手が不在なのだ。だからリーダビリティもない。案外と文章に自信がある人によく見られるし、コピーライターになりたての人もやってしまいがちで、「へたくそなポエムかっ!」と上司に怒られたというのはよく聞く話(それは私です)。
似たようなタイプでは、本来届けたい相手ではなく、上司やクライアントの担当者向けに書かれた文章がある。その昔、「上司が最新のビジネス用語をたくさん使ったカッコいいコピーが好きなのでそういう感じでお願いします」と言われたことがあるが、これも相手がいない、読み手への敬意を欠いた文章だと言える。
外山さんも内田さんも、コピーなどビジネスの実用文のことまでふまえて言っているわけではないと思うが、コピーライティングのかまえとしても肝に銘じるべき話だと思っている。
実際にコピーライターの先達の中には、コピーは書くものでなく、読んでもらうもの。説得や共感など目的を果たしてこそコピーであると断言している人もおられる。もっともなことだ。<言いたいことが伝わる>も<言いたいことが理解してもらえる>も、読まれないことにはクリアできない。
頭では分かっていても、書いている間に忘れてしまうものだ。文章は読まれてナンボなのである。心して書こう。
今回のまとめ
- Webをじっくり読む人は、知りたい情報にアクセスできないリスクが高い
- 文章を読むのが苦手な人には、小学生~中学生レベルのライティングが必要
- 文章で一番大切なのは<読まれること>。読まれるためには、読み手への敬意が必要

●読ませる文章の書き方(鈴木康之/日経ビジネス人文庫)
読まれないことを前提に書く広告コピーを題材に、読まれるための表現の発想、説明力、内容の見つけ方を紹介しています。
名作広告コピーとWebとの相性は、一見それほど良いものではありませんが、実はそこで使われている、様々なノウハウやテクニックはWebコピーでも効果を発揮します。
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