ExactTargetが加わって生まれ変わった、SalesforceのMarketing Cloud
CRM(顧客管理)、SFA(営業支援)のSaaSトップベンダーであるセールスフォース・ドットコム。同社のサービスの1つである「Marketing Cloud」には、自社開発のキャンペーン管理機能に加え、買収したソーシャルリスニング機能を提供する「Radian6」、ソーシャルメディアや自社Webサイトにコンテンツを効率よく公開するための「Buddy Media」、ソーシャル広告を管理する「Social.com」がある。これらにマーケティングオートメーションを実現する機能として新たに加わったのが「ExactTarget」だ。これにより、同社のマーケティングソリューションは「Salesforce1 ExactTarget Marketing Cloud」となり、マーケティング全体を自動化できる仕組みに生まれ変わった。

Salesforce1は、2013年にセールスフォース・ドットコムが新たに提供を開始したクラウド・プラットフォームだ。モバイルデバイスの普及、さらにはセンサーの増加などもあり、あらゆるものがインターネットにつながる"Internet of Things"の時代がやってくる。商品を介してすぐにベンダーと顧客がつながる。また、あらゆる生活シーンの中でも企業と顧客がつながる。Salesforce1を使えば、それを可能にするモバイルアプリケーションを簡単に作ることができ、既存のSalesforceのクラウドアプリケーションにも容易に顧客情報を取り込める。このSalesforce1という新たなプラットフォームに、ExactTargetも融合される。
新生ExactTarget Marketing Cloudでは、メール、モバイル・プッシュ、ソーシャル、Webといったすべてのデジタルチャネルを用い、マーケティングオートメーションを実現するツールとなった。顧客へのチャネル増加とともに、大きな変化となっているのがモバイルの普及だ。スマートフォンやタブレット端末などを通じ、顧客といかにつながれるか。それが今後のマーケティング活動の鍵となる。その中で高い成果を上げるには「One To Oneカスタマープラットフォーム」が必要であり、その部分に強くフォーカスしているのがExactTarget Marketing Cloudでもある。
顧客情報の一元管理とカスタマージャーニー
このOne To Oneのプラットフォームを実現するために必要なのが、顧客情報の一元管理だ。顧客に関するさまざまなデータを顧客プロファイルに結び付け一元的に管理する。オンライン上の行動履歴だけでなく、すべてのデータを紐付け、「カスタマージャーニー」というかたちで顧客を捉えるのだ。

顧客が企業との関わりでいまどういう状況にあるのか。それを把握し、その状況に適切な施策を自動的に実施する。たとえばECサイトで、顧客がカートに商品を放置してしまうことがあるだろう。放置からの経過時間などで判断し、適切なタイミングで購入し忘れがないかのアラートメールで送るといったことが自動化できる。あるいは、顧客の誕生日に合わせて自動でその人専用のクーポンを配ることも可能だ。
また、位置情報も活用できる。モバイルのアプリケーションをスマートフォンなどに入れてもらえれば、顧客が店舗近くに来た際に最適なキャンペーン情報をプッシュメッセージで届けることができる。
ExactTarget Marketing Cloudでは、このカスタマージャーニーに対するキャンペーンの設計が、ドラッグ&ドロップの操作で簡単に行える。顧客ごとに大量のキャンペーンを実施することも、GUIを利用し容易に実現できる。

ExactTarget Marketing Cloudは、顧客1人1人を捉え、それに対し自動でリアルタイムにレスポンスを返す機能があるので、比較的BtoCに強いと言われている。Eloquaのように自動でリードを絞り込んで顧客を育てていくというよりは、顧客をカスタマージャーニーとして捉え多彩なチャネルから最適なレスポンスを自動化するところが他のツールと異なるところだろう。
顧客に関するすべてのデータをExactTargetに一元的に集められるか
One To Oneの対応を可能にするには、個々の顧客に合わせたコンテンツを容易に作れなければならない。ExactTarget Marketing Cloudには、効果的なコンテンツを作るためのクリエイティブ機能も内包されている。Webページ用のHTMLだけでなく、それをメールに展開したりモバイル用に変換したりすることも、ツールを用い容易に実現できる。
クラウドサービスなのでクリエイターにアカウントを発行すれば、マーケッターと共同で最適なコンテンツの作成も迅速に行える。すべてのコンテンツは、クラウド上で一元的に管理できるのも便利だ。コンテンツについてクリエイターとメールなどでやりとりをしていると、どのコンテンツがどの顧客用なのかといった管理も煩雑となり、とてもOne To Oneの対応をタイムリーには行えない。
顧客との関わりをカスタマージャーニーとして捉えるには、CRMやSFA、あるいはサービス管理などのアプリケーションから顧客との接点に関する情報を一元的に収集する必要がある。これらのアプリケーションがすべてSalesforce上で動いていれば、データを一元的に収集することもさほど難しくないだろう。とはいえ、Salesforce以外のシステムで動いている場合は、それらからリアルタイムにデータ収集する仕組みがないと、当然ながらリアルタイムな自動レスポンスは難しくなる。
今後は既存システムとどう連携、融合させられるかでExactTargetの機能を十分に発揮できるかが決まりそうだ。そのためにExactTargetでは、他システムとの連携用アダプタなども多数用意してる。また、PaaSのかたちで3rdパーティーアプリケーションを取り込む環境も用意する。この新たに加わったExactTargetの機能部分は、日本では2014年6月から本格的に市場展開される予定だ。
続く「中編」では、IBMとAdobeの動向を紹介する。