IT側から見たデータ活用の可能性
100%国内資本のソフトウェアベンダーであるウイングアーク1stは、大手企業を中心に18,000社以上に導入されている帳票設計・帳票出力システム「SVF」や、「Dr.Sum EA」「MotionBoard」といったBI(ビジネス・インテリジェンス)・データ活用ソリューションを提供している。多岐に渡る企業における情報管理のコンサルティングを継続的に行いながら、現場のニーズに基づいたソフトウェアを開発してきた。
「BIの観点から、帳票という紙の資料を時代の流れと共にデータに置き換え、それをいかに自由に扱うか研究を重ねてきました」と、中土井利行氏は話す。今回の講演では「一歩進んだDMP活用 ビッグデータ、オープンデータを活用したデータドリブンマーケティング」と題し、中土井氏よりプライベートDMPの分析・可視化ソリューション「MotionBoard Cloud for DMP」を活用した効率的かつ実用的なデータ分析が紹介された。
マーケターが基幹業務システムを扱うことはそう多くないかもしれないが、ここで管理されている売上や生産、物流から財務会計までのデータは、ビジネスの成果そのものである。これらのデータを共通のデータウェアハウスで管理し、さらに各フェーズの効率をチェックして、限られた経営資源の最適配分を行うのがBIの概念だ。「私はここに、広告・マーケティングのフェーズも加わるべきだと考えています」と中土井氏は語る。
その理由は、自社製品やサービスを知ってもらったり、顧客と関係を築いたりといったマーケティング活動の重要性が増したことにある。これまで企業の基幹業務といわれてきた『モノをつくって届ける』部分を分析するだけでは、最適な経営資源の投下ができなくなっているからだ。実際に、大手企業から最近「ビジネス全体における広告やマーケティング活動の成果を観測したい」という希望を受けることが増えているという。
DMPで経営資源の最適化を
「広告やプロモーションはもちろん、営業担当者の活動そのものやCRMまでも、今や基幹業務といえます。あいにく現在、基幹業務管理システムと呼ばれるツールの中に、マーケティング活動に関するデータまで一貫して可視化し、分析できるものはありません。だからこそ、DMPが非常に大きな役割を果たすと考えています」と中土井氏。
基幹業務管理を通して経営資源のROIを最大化することを、エンタープライズBIという。これに対して、DMPを通してマーケティングの各フェーズへの投資を最適化し、マーケティング活動のROIを最大化することを「マーケティングBI」と中土井氏は定義する。
「これらを統合し、データを可視化して経営資源を最適配分する『マーケティング・リソース・プランニング(MRP)』という考え方を提案したい。DMPはDSPなど広告出稿の延長で必要性が語られることが多いですが、こういう使い方もできるのです」と中土井氏は語る。
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部門の壁を越え、企業活動を見通すためにDMPが有効
同時に、マス広告やデジタルマーケティング、店舗やDMなどを通したプロモーション、そして購買成立後のCRMの一連の活動をDMPで管理することは、分断されがちな各活動を連携させ、全体を効率化することにもつながる。「高度に分業化された組織では、DMPが組織の壁を破る有効な手段としても機能しています」と中土井氏。この3年ほど、氏が直接関わった500件あまりのBIツール導入例においても、副次的な効果として情報の共有化が促進されているという。
同社では以前より、企業の現場担当者がさまざまなデータを、使いやすく組み合わせてダッシュボードを作成できるツール「MotionBoard」を提供している。リアルタイムでデータを可視化し、高度な分析を直感的な操作で行えるので、多くの企業でデータからインサイトを得るために活用されている。このツールをマーケターの視点で作り変えたものが、「MotionBoard Cloud for DMP」だ。
名称どおりクラウド型なのでシステム構築が要らず、月額課金での利用となる。すでに自社内にDMPを構築済みなら、それと組み合わせることで大きな成果が得られる。
導入に関心高くとも、現実は二極化
マーケティング・オートメーション、つまり顧客のセグメンテーションからキャンペーン立案・実行、効果分析までを一貫かつ高速で自動化できる仕組みは、ECサイトでの活用が進んでいる。ここで中土井氏はアクセス解析を手がけるオーリック・システムズの福岡浩二氏を招き、福岡氏よりECサイトのトレンドと現状が解説された。
「特にこの1年で顧客や世の中のニーズが様変わりし、アクセスログだけで次のアクションにつなげることが難しくなりました」と福岡氏は切り出す。「従って、最近特に話が挙がることが多いオムニチャネルの活用やネットとリアルの融合など、ネット上のデータ以外を組み合わせて、あくまで個別のお客さま単位で見ていかなければ、有効なアクションに結びつけるのが難しくなっています」と福岡氏。
そのため同社でも先日、非構造化データをDMPに組み込む際に必要な事前処理を簡単に行えるソフトウェア「Essentia」を開発。クラウドで、データのクレンジングなどを一気に行えるという。昨今のトレンドとして、いろいろな業種のクライアントがアトリビューションに高い関心を寄せており、顧客に関わる総合的なデータをDMPに組み込み、次の施策につなげることを改めて検討しているという。だが、その上で現実的に実現できているかというと、「二極化しているのが現状」と福岡氏は語る。
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DMP運用のポイントとは?
DMP導入に対して二極化している理由は、トップの協力が得にくい、ROIを判断しにくい、また、データ投入の事前処理で相当な時間とコストがかかる、などが挙げられる。実際に現場での感覚として、DMP導入にまで踏み切れている企業は多めに見ても2割程度だという。解決策は、意外と業種などにはよらず、シンプルだと福岡氏。「アトリビューションの処理は複雑ではありますが、簡単に分析できるツールを導入し、仮説検証を回していくことを組織に染み込ませることが第一歩です。その運用を、トップまで含めてサポートできる仕組みをつくることが大事です」。
ネットで得られるデータ以外も組み込んで、マーケティング施策の効果測定をより精緻に行い、コンバージョンを高めていく。その際、これからポイントになる考え方が「カスタマージャーニー」だと福岡氏は話す。顧客が時系列でどのような行動を取ったのかを把握し、どの施策がどのように効いているかを見ることで、より効果がある施策を立案することができる。「アトリビューションを見るには非常に高度な処理が必要ですが、大事なのは使う人がごく簡単に扱えることです。これが現実的にDMPを有効活用してマーケティングをしていくポイントだと思います」。
IT部門に頼らないデータ活用を実現
福岡氏の解説を受けて中土井氏は、「データをまとめ上げて、実際にツールを使う現場の方が次のアクションを判断できるよう、インサイトを可視化することが我々IT技術者の役割」と語る。前述の「MotionBoard Cloud for DMP」はマーケティングの現場での使用を想定しているため、さまざまな環境のデータベースとの連携が可能といった特徴のほかに、さまざまな統計データやサードパーティーのデータがあらかじめ組み込まれている。
これまでIT部門などに分析やデータ抽出を依頼していたような状況を、こうしたツールを使って解消し、膨大なデータからインサイトを発見することこそ、今回の講演タイトルである「データドリブンマーケティング」だと言える。
最後に中土井氏は、ID-POSを扱うカスタマー・コミュニケーションズが有している分析手法「ABCL分析(R)」を紹介。同社とのアライアンスにより、この分析を用いた大規模な消費者パネル調査を「MotionBoard Cloud for DMP」を通して提供することができると解説した。5,000万会員のPOSデータから、食品スーパーのユーザー250万人、ドラッグストアのユーザー600万人から成るパネルを利用し、200ものカテゴリについて購買動向情報が活用できる。「このような大規模なデータベースを、マーケターの方々が使いやすい環境で提供し、ビッグデータからさまざまなインサイトを発見するサポートをしていきます」と中土井氏は展望を語った。
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