“イノベーションン大学”のミッション「より良い世界と強い国をつくること」
「イノベーション教育」にはさまざまな側面があります。その一つは従来の学問の枠を超えた学際的な教育で、なかでもデザイン(やクリエイティブワーク)の思考法を論理的ビジネスの世界に取り入れることです。スタンフォード大学のd-schoolが標榜する“デザイン思考”はまさにそれに当たります。(デザイン思考に関する連載はこちら!)
前回の連載でも触れましたが、イノベーション大学として世界的に有名なフィンランドのアアルト大学は、3つの大学(ヘルシンキ工科大学、ヘルシンキ経済大学、ヘルシンキ芸術デザイン大学)を統合して2010年に設立されました。理系、文系だけでなく、デザイン系も含まれているところに特徴があります。
アアルト大学は国立でも私立でもなく、“基金ベース”の大学です。基金の約70%を政府が、約30%を財界が出資しています。この構想は2007年から3年をかけて準備され、2010年に実現しました。
2万人近い学生(うち10%以上が留学生)がいて、芸術デザイン建築スクール、ビジネス・スクール、エンジニアリング・スクールなど6つのスクール(学部に当たる)から成り立っています。「アアルト大学のミッションは、より良い世界と強いフィンランドを作ることだ。」とウェブサイトの冒頭にも述べられているように、この大学は産業の振興と強く結びついています。前回の記事でもお伝えしましたが、「アアルト大学の最大の特徴は、学際的プロジェクト(cross-disciplinary project)と実践研究(learning in practice)である。」とも述べられています。
では、6つに分かれているスクールをどうcrossさせ、どのようにpracticeの中で学んでいるのでしょうか?その辺りを含め、実際にアアルト大学で学んでいる二人の学生に聞いてみました。この2人のアアルト大学での日常を聞くことで、イノベーション教育の実態に迫ってみたいと思います。また、日本とフィンランドの様々な違いについても質問をしてみました。