これまでの連載では4回にわたり、世界で、そして日本で拡がっている「イノベーション教育」についてお伝えしてきました。最終回となる今回は、日本イノベーション教育界の草分け的な存在のひとつ、慶應義塾大学大学院SDMを紹介します。
領域横断的な「イノベーション教育」が求められている
世界的にはデザイン思考で有名な学校としては、スタンフォード大学のd.school、今回の連載で紹介したアアルト大学(フィンランド)の他に、トロント大学(カナダ)のロットマンスクール、RCAロイヤル・カレッジ・オブ・アート(イギリス)、CIIDコペンハーゲン・インスティチュート・オブ・インタラクション・デザイン(デンマーク)などがあります。またハーバード大学MBAやノースウエスタン大学MBA(ケロッグ校)など従来から有名なビジネス・スクールでも、イノベーション教育的なプログラムが設けられるようになってきています。

日本のこの分野で、前回紹介した東大ischoolと並んで草分け的な存在が、慶應のSDM(システムデザイン・マネジメント)研究科です。学部を持たない大学院だけの組織で、慶應義塾150周年記念の一環として2008年に設立されました。慶應義塾の創設者である福澤諭吉先生が、いまという時代に生きていたらどんな大学を作っただろう?そんな問いかけを元にして、プログラムが練られたといいます。
「現代は、幕末のような時代なのだ」と、それを聞いてそう思いました。世界中が、日本の幕末のような状況になっている。つまり、従来の常識が通じず、それまでの専門性だけで努力を続けても問題は解決せず、さまざまな専門性の叡智を集めて、なんとか次の時代を作っていこうとしているのだ、と。だから、世界中で、従来の専門性を越えた領域横断的な大学や大学院が注目を集めているのではないでしょうか。

福澤諭吉先生の幕末の活動に想いを馳せて作られたSDMは、さまざまな学部を卒業して入ってくる人が3~4割ほどで、社会人が6割~7割ほど。社会人にはアーティストもいればエンジニアもいて、大企業の幹部社員も多く、一部上場企業の社長さんもいるそうです。50代以上の年輩男性3人に20代の学部を出たばかりの女性1人の4人がチームになったケースもありますが、20代の女性も臆することなく対等に議論し、年配の男性たちも若きクラスメートを対等に扱う。そんな、世代も超えた学びの場になっています。
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佐藤 達郎(サトウ タツロウ)
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論/メディア論)。2004年カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員。浦和高校→一橋大学→ADK→(青学MBA)→博報堂DYMP→2011年4月 より現職。
受賞歴は、カンヌ国際広告祭、アドフェスト、東京インタラクティブアドアワード、ACC賞など。審査員としても、多数参加。個人事務所コミュニケーション・ラボにて、執筆・講演・研修・企画・コンサルなども。また、小田急エージェンシーの外部アドバイザー、古河電池の社外取...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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