SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

世界を変えるビジネスを生み出す「イノベーション教育」とは?

「本来は誰もがクリエイティビティを持っている」横串の専門家を育成する慶應SDMの挑戦

SDMのミッションは「横串の専門家」を育てること

 そこで、SDM創立にも関わったという白坂成功准教授に、お話をうかがってきました。白坂先生は、大学教員になる前はメーカーで宇宙開発に携わり、宇宙飛行士試験のセミファイナルに2度も残った経験を持っています。SDMの初代研究科委員長がJAXAの研究所のトップの方で、最初にNASAのカンファレンスで出会ったのだとか。この初代研究科委員長が白坂先生の発表を聞いて、声をかけたのが始まりだそうです。

慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 准教授 白坂成功氏

佐藤:SDMって、なぜ大学院だけなのでしょうか。

白坂:今の世の中の問題は複雑で、ひとつの専門だけでは解けません。従来の大学院は専門性を追求する場所でしたが、SDMでは専門を超えて、“専門家を束ねて問題を解決できる”ことの専門家を育て、そのことを研究しようとしています。

 従来の専門性は縦軸。そこを横串で刺す必要が出てきていると思います。いわば“横串の専門性”を確立したいのです。そのためには、それぞれの学生はそれぞれの専門性をすでに持っているべき。自分の専門性を持ったうえでSDMで学んで、“横串の専門家”になっていってほしいと思っています。そういう意味で、大学院だけの研究科としました。

佐藤:なるほど。わかりやすいですね。そういう意味では、アアルト大学もインターディシプリナリー(領域横断)を標榜はしていて、横串型のプログラムはいろいろと用意されているけれど、“横串の専門家になれ”とまで明言している感じはしませんでしたね。

白坂:世界のイノベーション教育系のプログラムも、いろいろなアプローチがありますからね。でも、SDMほど広くやっているところは、世界にも例を見ないという自負はあります。SDMのプログラムには様々な側面があるのですが、d.schoolでやっているME310にも似たプロジェクト型のものもあって、“デザイン・プロジェクト”と呼ばれでいます。

佐藤:それは、企業と一緒にやる形ということでしょうか。

白坂:そうです。これは、スタンフォードとMITとSDM、3大学で協同で始めて、いまはアデレード大学も参加しています。修士の必修課程で、プロポーザーと呼ばれる企業の課題に6か月で提案を出します。最初の1か月は座学、次の1か月は前の月に学んだことを使って課題解決に取り組み、最後の4か月はやり方は問わないから、とにかく良い結果を出せというプログラムです。

佐藤:たとえば、どんな企業がプロポーザーになっているのですか。

白坂:直近ではUR都市機構さんにプロポーザーになっていただいて、いま注目の虎の門地区再開発について取り組んだりもしました。ひとつのプロポーザーに1チームか2チームが付きます。1チームの構成は、4~7人。成果物は、最終プロトタイピングのケースもあるし、企画書みたいなものの場合もあります。

佐藤:途中経過も、企業の方は見れるのでしょうか。

白坂:2週間に1回、発表をして、企業の方にも出席とフィードバックをお願いしています。アイディアを出してプロトタイピングをしてフィードバックを得る、この1サイクルを2週間という間隔で廻して行きます。

佐藤:それは、忙しいですね。ところで、イノベーション教育への取組を、企業ではなく大学院でやる意義はどこにあるのでしょうか。

白坂:1社だけでやるのも、もちろんアリだと思います。でも、このようなやり方をモデル化・体系化できるメリットはあると思いますね。SDMのカリキュラムも、設立された2008年からずいぶんと変わっていて、どんどん進化しています。

次のページ
クリエイティビティは本来、誰もが持っている

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
世界を変えるビジネスを生み出す「イノベーション教育」とは?連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

佐藤 達郎(サトウ タツロウ)

多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論/メディア論)。2004年カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員。浦和高校→一橋大学→ADK→(青学MBA)→博報堂DYMP→2011年4月 より現職。
受賞歴は、カンヌ国際広告祭、アドフェスト、東京インタラクティブアドアワード、ACC賞など。審査員としても、多数参加。個人事務所コミュニケーション・ラボにて、執筆・講演・研修・企画・コンサルなども。また、小田急エージェンシーの外部アドバイザー、古河電池の社外取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2014/09/04 08:00 https://markezine.jp/article/detail/20813

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング