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世界を変えるビジネスを生み出す「イノベーション教育」とは?

「本来は誰もがクリエイティビティを持っている」横串の専門家を育成する慶應SDMの挑戦

クリエイティビティは本来、誰もが持っている

佐藤:たとえば、ブレーンストーミングをしても、慣れてないというか、“突飛なアイディア”を出せない人も、けっこういますよね。

白坂:そういう人は少なくないです。ふだん考えてる枠から出れない。アイディア開発ではよく、発散と収束と言うわけですが、単に発散しろと言っても発散できないんですね。なので、ある目的があってその目的に役に立つ形で、発散(枠の外に出る)させるというようなことをやっています。

佐藤:なるほど。でも、ブレストでは、“あらかじめ役に立つかどうか判断しない”というのが発散の基本的な形では?

白坂:はい。だから、SDMではブレストだけに頼ることはしないんです。2年間で約1万人のワークショップをやってわかったのは、一般的に企業の中では“ちゃんとしたものをつくらなければ”という意識が強いので突飛な発想をするのに慣れてなくて、やりなさいと言ってもできないということ。だから、“いま出てきているアイディアは枠なのだ”とまず認識してもらうところから始めてもらう。そのサポートを我々がする。いま出て来たものは目の前にある。だから、枠として認識しやすく、そこから出やすくなる。そこに構造を作ってあげる。学生さんにそういう意識を持たせるということですね。

 そういったことのために、16の手法を整備していて、ブレーンストーミングやプロトタイピングといった既存のものの他に、WCA(欲求連鎖分析)などオリジナルの手法も用意しています。

佐藤:ところで、数年たったわけですが、卒業生の進路とか成果はどのような状況ですか。

白坂:社会人で通ってた方は、新規事業や企画の部など、イノベーションに関係する部署に移る人が多いようですね。しかも、出世しながら。企業との共同研究や研修の話を、卒業生が持って来てくれるケースも多いですね。そういう意味では、SDMでの学びが企業の中で活かされている。SDM卒業生は、基本的にいいポジションにいると思います。

佐藤:白坂先生ご自身の、この分野で教えるモチベーションは?

白坂:IDEOとd.schoolの創設者であるケリー兄弟が言っている“クリエイティブ・コンフィデンス”は、僕の問題意識に近いですね。つまり、クリエイティビティは本来、誰もが持っているのに、従来型の教育では、クリエイティビティを失う方向に向かいがちだったということです。日本人がイノベーション発想をできないはずはない、と思っています。いいモノもってるはずなのに、失なわれているので、それを取り戻させたいんです。

 実は、僕自身が、自分はクリエイティビティとか苦手だと思っていたんです。ところが勉強すると、できるようになるんですね。そのことを学んで教えるのは、とても楽しいですよ。

佐藤:これからの日本は、どんなふうになっていくべきだと思われますか。

白坂:いまの日本人の多くは、対象をシステム的に扱うことに慣れていません。小さい範囲を詰めて行くこと、個別の解決を図るのは得意なのに。俯瞰して眺めて対処して行くのが、苦手なのです。しかし、これから、ほとんどのことは、そういう方向へ進むと思います。つまり俯瞰することやシステムが大事になっていく。個別のことはもうほとんど対処できるようになって来ているので、そこに高い価値はなくなっているんですね。

 そして“記憶の教育”は、もう昔ほどの必要がない。ネットで調べてパッと出るものは、覚えておかなくてもいいですから。だから、教育全体が早く舵を切らないといけないと思います!アメリカでは、記憶の教育ではない方向に大きく舵を切ったと聞いていますし。

SDMでは書籍も出されているので、興味のある方はこちらをぜひ!少子化による人口構成の変化ひとつ見ても、これからの日本が、先の読めない、予断を許さない社会になることはあきらかなように思えます。硬直した知識を大量に貯えこむだけでは、個人も組織もサバイブできません。本連載で4回にわたってお伝えしてきた「イノベーション教育」。その知恵が世の中に活かされることを願い、自分自身も参考にしたいと思います。

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この記事の著者

佐藤 達郎(サトウ タツロウ)

多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論/メディア論)。2004年カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員。浦和高校→一橋大学→ADK→(青学MBA)→博報堂DYMP→2011年4月 より現職。
受賞歴は、カンヌ国際広告祭、アドフェスト、東京インタラクティブアドアワード、ACC賞など。審査員としても、多数参加。個人事務所コミュニケーション・ラボにて、執筆・講演・研修・企画・コンサルなども。また、小田急エージェンシーの外部アドバイザー、古河電池の社外取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/09/04 08:00 https://markezine.jp/article/detail/20813

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