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世界を変えるビジネスを生み出す「イノベーション教育」とは?

「“イノベーション大学”のミッションは、より良い世界と強い国をつくること」アアルト大学訪問記【後編】


“スタディ・リーブ”学ぶために職場を離れる

TARO MORIMOTOさん

 TARO MORIMOTOさん、35歳。フィンランド人と日本人のハーフで、ずっとフィンランドで育ったといいます。大学でコンピュータ・サイエンスを学び、10年以上働いてから、いまはアアルト大学のメディアラボ大学院で学んでいます。子供も2人。TAROさんの通うメディアラボには、「ニューメディア」「サウンドインメディア」「ゲームデザイン&プロダクション」と3つのコースがあり、TAROさんはニューメディアに通っています。でも他のコースの授業を取れるので、例えばゲームデザインの授業も取っているそうです。

――一度働いてから大学院で学び直す人は、フィンランドでは多いのでしょうか。

TAROさん:“スタディ・リーブ(学ぶために職場を離れる)”という制度があって、8年以上勤めると、学んでいる間1~2年分の給料を政府が払ってくれるんです。だから、一度働いてから、大学院に学びに行く人は、かなりの数います。

――メディアラボでの学び心地は、どうですか。

TAROさん:多岐にわたる授業があり、自由に選べるので、とても楽しく学んでいます。でも、同時に選ぶのが難しい、という側面もあります。多岐にわたり過ぎて、深い専門を持ちづらいこともあるわけです。

――アアルト大学のイノベーション教育については?

TAROさん:メディアラボで言えば、プロトタイピングは必ずと言っていいほど、行われています。メディアラボでは試験というものはありません。授業はプロジェクトベースで、アイディアを示すために、簡単なプロトタイプを作ります

――では、先生は、どうやって学生を評価するのでしょうか。

TAROさん:プロジェクトの仕上がり、そこでの活躍し具合といったことです。まぁ、評価に関しては、課題はあると思いますが。集まって来る学生のバックグラウンドがかなり違うので難しい問題ですね。

ウェブスタジオの光景

――実践研究という点は、どうですか?

TAROさん:例えば“アクション・ゲーム”という授業があって、最終的には“アクションするようなゲーム”の企画をするのですが、アイディアを考える前に、実際にトランポリンが置いてあって飛び跳ねたり、サッカーをしたり、フェンシングをしたり、ボルダリングをしたりするんです。これが、ね、けっこう疲れるんですよ。でも、ゲームの企画するに当たっては、元になるアクションを深く知ることができるので、とても良い授業だと思います。

――日本の企業や経済は、ここ20年上手く行ってないと言われています。特にイノベーションが起きていない、と。

TAROさん:日本では、トップダウンの傾向が強過ぎるのではないでしょうか。

――フィンランドでは、その辺はどうですか?

TAROさん:上司に対して“それは違うんじゃないか”と言える雰囲気は、普通にありますね。でも、締切があって、それに間に合わせなければならない、というようなことはやはりあるので、なかなかいいアイディアが実現されない部分はあります。

――スタートアップ(起業)については、どうでしょうか。

TAROさん:スタートアップを応援する制度は充実しています。しかるべき計画だと認定されれば、政府が金銭面での支援をします。

――いいスタートアップのアイディアかどうか、役人に判断できるのでしょうか?

TAROさん:お金は政府が出すのですが、審査するのは実業界の人が多いので、そこは大丈夫なんです。

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企業も政府も、学生を戦力として認めている

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この記事の著者

佐藤 達郎(サトウ タツロウ)

多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論/メディア論)。2004年カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員。浦和高校→一橋大学→ADK→(青学MBA)→博報堂DYMP→2011年4月 より現職。
受賞歴は、カンヌ国際広告祭、アドフェスト、東京インタラクティブアドアワード、ACC賞など。審査員としても、多数参加。個人事務所コミュニケーション・ラボにて、執筆・講演・研修・企画・コンサルなども。また、小田急エージェンシーの外部アドバイザー、古河電池の社外取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/08/25 09:37 https://markezine.jp/article/detail/20504

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