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「ネットの表現」を探る ~『ネットで「効く」コピー』刊行特別企画~

【おおつね×けんすう対談】ネットウォッチは紳士の楽しみ。むきだしの世界となめらかなコミュニケーション


あるサブアカの話

おおつね ネット表現にもつながる話だと思うんですけど、例えば子どもが凄惨な殺人事件を起こしたときに、「子どもたちが凶悪化してるに違いない」みたいなことを書く人がいたとする。それとまったく同じ文体、同じ構造で「どれだけいまの団塊の世代が凶悪化しているか」っていうのに書き換えるのは結構簡単にできるんですよ。

センセーショナルに「幼い子が殺されたらかわいそうじゃないか」っていうところを使って、実は「もっと子どもたちを管理しなきゃいけない」みたいな持論をにじませる文章の構造があったとき、その装飾を取り去ってみると本当に言いたいことがわかる。

同じ表現を使って正反対のことを言ってみるだけで、分析しなくてもその論理のおかしさがわかってしまう、そういうところがあるんですね。

古川 元の文章に対してディスカッションとして「俺はこう思う」ではなく、ネタ化して思想とかの話を進めていくっていうのは日本独特だなぁとは思いますね。

おおつね 2006年ころ、津田(大介)さんが、自分のブログに「『CD売上回復!』というストーリーを作りたいレコード会社たち」という批判記事を書いた。その何日か後に、はてなダイアリーに本人だってわからないサブアカを作って、「津田氏の批判はここがおかしい」と釣り要素たっぷりでブログを書いた。案の定それをTwitterに流して炎上したわけですよ。

僕、それを読んだときに「意図がよくわからないけど、言ってることは津田大介と同じで、ただ単に表現を逆にしただけだ」とコメントを書いておいた。そうしたら2、3日後に本人のブログで「あれは僕のサブアカですよ」っていう種明かしがあった。

コアとなる部分は津田大介が言ってるのと同じことを書いてるのに、津田大介信者であるはずの人まで怒ってる。みんな要するにデコレーションの部分しか見ないんだなと。ここをまねすれば、ぶっちゃけて言うとプロパガンダも書ける。

ネットウォッチャーと調香師の共通点

おおつねさんのようにネットの反応を見ていると、何となく冷めてくることはないのでしょうか。

おおつね この前、脳波を測りながらプロの調香師について調べるテレビ番組があったんです。おならの臭いがする薬を一般の人に嗅がせると、脳の感情の嫌がる部分が反応する。調香師に嗅がせると、おならの臭いであることはわかるけど、「うわっ嫌だ」っていう気持ちにはならないという特徴があったらしいんです。それと同じで「ああ、おならの臭いだな」って思うように、感情やデコレーションの部分を取り除いて、「煽りの文章を書いてるんだな、この人は」と読むことができるんじゃないかなって思った。

僕みたいな読み方は全然おすすめしない。でも何でそうなったのかって考えると、人が本気になってるところが見たいんですよ。本気の逆は何かというと、「こういうふうに書けば、みんな釣れてくれるだろう」っていう小手先のテクニックで書いてるブログとか。わざといじめられてる子ネコの話を入れたり、学校でのいじめ問題を盛り込んだり。そういうのはどうでもいいから、本気を書いてよって思う。

古川 本気が見たいっていうモチベーションはどこからきてるんですか。

おおつね デコレーションの文章を読んでも感情は隆起しないけど、人間の本気を見ると面白いと思う。

古川 内容よりも本気度みたいなほうが重要?

おおつね こだわってる内容がくだらなければくだらないほど害がないというか。「メタルとパンクは違うんだ」ってことを必死にやってる人や『タモリ倶楽部』の鉄道の回とか、何言ってるかよくわかんないけど、こいつら本気だってのはある。

古川 あぁ、それはちょっとわかりますね。

何を基準にリブログするのか

古川 おおつねさんは、Tumblrとかでいろんな画像集めてますが、あれって何か琴線にふれたものを集めてたりするんですか。

おおつね氏のはてなブックマーク、Tumblr、note。FacebookやGoogle+も含め、数多くのサービスを利用している。
おおつね氏のはてなブックマークTumblrnote
FacebookGoogle+も含め、数多くのサービスを利用している。

おおつね Tumblrは絵と文章が半分ぐらいな感じですけど、感動したというよりは「うわ、こんなこと書いてるよ」っていう感じのものが多いですね(参考:おおつね氏のTumblrのarchive)。これがウケるだろうだとか、これをリブログ(ほかのユーザーの投稿を自分で再投稿すること)したら、俺のTumblrの評価が上がるとかはどうでもよくて。

古川 僕がおおつねさんのブクマとかTumblrを見てて面白いなと思うのが、それこそ感情が見えないんですよ。で、何らかのロジックに合わせてコレクションしてるっていう印象を受けて、そこのギャップがすごい面白いなと思ったんですね。

おおつね 確かに感情を込めてブックマークしてる人いますもんね。

古川 ある意味機械的なんですよね。自分はこういう思想だって表したいわけでもなく、感動したからリブログしてるわけでもない。そこがすごい。だからBotっぽく見えると思うんですけど、人間味がないのが面白いなって。

おおつね 「Amazonの『ほしい物リスト』になぜ欲しいものを登録しないんだろう問題」っていうのが近くて、大体の人が頭よさそうに見える本を登録しちゃう。「おまえ本当に欲しいものそれじゃないだろう」って僕はよく突っ込むんですけど。ほしい物リストに本当に欲しいものを登録すると、僕のTumblrみたいな感じに見えると思うんです。

さっきはこんなネタを流したから、かわいいイヌの写真を入れておこうっていうことでもないんですね。

おおつね 未来も過去も考えないほうが面白い。政治の話ばかりQuoteしたから、そろそろ食べ物の写真でも入れようかとかってやると、すごく思考がにごりますね。面白くないですよね、それ。

古川 おおつねさんのTumblrは、イメージ的には時系列以外のカテゴライズがないんですよね。やっぱBotなんじゃないかなあ。

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いまは機械の力で80点取れる

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2015/05/12 16:59 https://markezine.jp/article/detail/20777

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