見込み顧客を引き寄せる、コンテンツマーケティングとは?
Webで商品を販売している企業/そうでない企業、またBtoB/BtoCにかかわらず、自社サイトに見込み顧客が主体的に訪れてくれるなら、それほど嬉しいことはないだろう。だが、現実にはリスティング広告などでニーズが顕在化した顧客にアピールし、“刈り取って”しまえばそこで終わりだ。
そうした状況を打破する施策として、コンテンツマーケティングが昨年から今年にかけて注目を集めている。コンテンツマーケティングとは、コンテンツを活用して集客する手法であり、徐々に成果を上げている事例も出始めている。しかし、コンテンツマーケティングという言葉を聞いたことはあるものの、詳しい中身はわからない、という人も多いのではないだろうか。
「コンテンツマーケティングとは、お客様のために価値あるコンテンツをつくること」と語るのは、イノーバ 代表取締役 CEOの宗像淳氏。同社は創業3年ながら、コンテンツマーケティングの企画制作や運用支援ですでに120社以上の実績を有するほか、この9月には簡単にオウンドメディアを構築できるマーケティング支援ツール「Cloud CMO」の提供を開始。昨年の売上高は右肩上がり、今年はさらにそれを上回る勢いで伸長している。
宗像氏は、富士通、楽天を経て同社を創業。前職時代にソーシャルメディアマーケティング事業開発部長としてツールの開発・販売を行っていた。その時にコンテンツマーケティングに出会い、その有用性に気付いたという。
コンテンツマーケティングは古くて新しい手法
「コンテンツマーケティングとは、適切で価値あるコンテンツの作成・配布を通して見込み客を引き寄せ、購買に結びつく行動を促すものです。簡単に言えば、『顧客にとって価値あるコンテンツをつくること』だと考えています」と宗像氏は解説する。
従来の広告やアウトバウンド営業と比べて異なるのは、見込み顧客にみずから“訪れて”もらう点だ。実際に同社でも、楽天やYahoo! JAPAN、ソニーといった大手企業との取引の多くが、コンテンツマーケティングによるクライアント側からの問い合わせがきっかけでスタートしているという。
このような、プル型のアプローチであることが、コンテンツマーケティングの特徴のひとつ。そしてもうひとつの特徴は、適切なコンテンツを通して見込み顧客と徐々に関係を築き、購入意向を段階的に高めていく点にある。
「サイトを訪れる人の中には、すでに購入意向が高い人もいれば、たまたまコンテンツを発見しただけで、自社の商品やサービスをまったく知らない人もいます。適切なコンテンツを通して、こうした人を育てていくのも、コンテンツマーケティングが実現できる部分です」(宗像氏)
宗像氏によると、「コンテンツマーケティングは古くて新しい手法」と言われるという。既存のマーケティングでは商品を売り込んでいたが、今や価格競争が進み、売り込むだけでは勝ち残れない。そこへマッチしたのが、商品に関連するアイデアや提案で“引き付ける”方法なのだ。
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低予算で実践でき、同時にブランディングを実現
他のマーケティング手法同様、米国ではすでに実践フェーズに入っている。ある調査によると、今年はBtoB企業の93%が何らかのコンテンツを活用したマーケティングに取り組んでおり、73%が前年よりもコンテンツ量を増やしているという。
一方、日本では、まだ「興味がある」フェーズのようだ。今年2月に発表された調査によると、マーケターが注目するマーケティング施策として、1位のオウンドメディアマーケティング(37.6%)に次いでコンテンツマーケティングは2位(32.4%)に挙げられている(出典:宣伝会議2014年2月号)。この2つは切り口は異なるが、実際の取り組みは類似したものである。宗像氏は「少し前から話題のトピックであるO2O(4位/25.4%)やDMP(9位/14.4%)よりも、かなり上位」と指摘し、その後に同社への検索流入や問い合わせがさらに増えたという。
米国での状況、そして日本での関心の高まりを考えると、これから一気に浸透しても不思議ではない。そもそも米国でここまで一般化した発端は、「予算が少ないシリコンバレーのベンチャー企業が活用し始めたこと」だと宗像氏。
「例えばリスティング広告は、投下し始めると数十万~数百万円はコストがかさみますが、コンテンツマーケティングはそれよりずっと小規模で始められます。また、“ソートリーダーシップ”が発揮できることも有効です。先駆者として考えを発信することで、同業他社やメディアから一目置かれる存在になり、ブランド形成に役立ちます」(宗像氏)
本来マーケターが接触したい、潜在顧客をコンテンツで育成する
そして、低コスト、ブランド形成と並んで見過ごせないメリットが、冒頭でも紹介した「見込み顧客を開拓できる」点だ。リスティング広告や被リンク型SEOと比べると、コンテンツマーケティングは当然ながらコンテンツを蓄積する時間が必要であり、即効性も低い。
「リスティングを最適化していないなら、まずはそれを整備することを私も勧めます。ただ、単価の高騰がネックです。Googleは被リンク型SEOを取り締まるようになっています。それらと比較すると、コンテンツマーケティングは他の“刈取り型”施策では難しい見込み顧客の育成という効果が期待できます。さらに、コンテンツが蓄積すればそれが資産になります」(宗像氏)
リスティングやリターゲティング広告、販促キャンペーンなどはニーズが顕在化している層にアプローチするため、顧客獲得にも時間がかからない。だが、本来マーケターが接触したいのは、それよりも自社や商品のことを知らない潜在層、さらにはその商品へのニーズにすら気付いていない深い潜在層である。それを叶えるのが、コンテンツマーケティングだ。
では、具体的にどのようなコンテンツでアプローチすればいいのだろうか? 宗像氏は、「商品やサービスとの関連性が高いか/低いか」そして「共感されやすいか/されにくいか」の2軸でコンテンツを分類して考えることを提案する。成功例では、これまで見逃されていた「関連性は低い」が「共感されやすい」部分をうまく埋めているという。
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ターゲットのインサイトを突いた国内成功事例
「これまでのネットビジネスは、いかに商品を説明して売るかに注力され、商品周りのコンテンツは充実していました。コンテンツマーケティングでは、ターゲットの共感にまず注目し、そうした記事を入り口にして商品に関連性の高い記事へと誘導していきます」と語り、宗像氏は事例を提示する。
例えばメガネ専門ECサイト「Oh My Glasses(オーマイグラスィズ)」が取り組むWebマガジン「OMG PRESS」が優れているという。店頭購入が当たり前だった市場にECを持ち込み、返品無料などの試しやすい工夫とともに、自社メディアを集客に活用。ECサイトが32万UUに対し、こちらは17万UUにまで伸びている。
OMG PRESSのコンセプトは“メガネに特化したファッション誌”。最近では、検索エンジンのデータ調査から「レイバンの偽物に関して調べている人が多い」ことを知り、「Ray-Ban #5-絶対に偽物を買わないための5つの注意点。本物と偽物の見分け方」という記事をアップしたところ、大きな反響があった。そこで、記事タイトルの直下に購入ページへの大きなバナーを貼ったところ、閲覧者の2割をECサイトに誘導することに成功したという。
ほかにも、子供用品の輸入セレクトショップ「babytopia」では、「『マタニティマーク』海外の事情は?」「夫婦喧嘩が子供に与える影響」などの記事を通してアクセスが10倍に。BtoBではソフトウェアベンダー「salesforce.com」が、マーケティング情報サイト「Customer Success」においてeBookダウンロードを行うなどして、リード獲得に効果を上げている。
コンテンツマーケティングを成功させる3つの秘訣
イノーバの支援事例でも、ショッピングカートASPを手がけるデジタルスタジオの「Live Commerce blog」や、不動産向けWebマーケティングコンサルティング企業、カップル向け美容メディアサイトなどで大幅な成果が得られているという。
「うまくいっている会社は、その流入内訳の3~5割がSNS経由です。タイムラインの中に流れる投稿で自然に消費者の目に触れ、彼らが自主的に拡散してくれるという状態をつくるのが、プル型で顧客を育てるのと並ぶコンテンツマーケティングのもうひとつの側面です」(宗像氏)
最後に宗像氏は、成功の秘訣として「運用体制×戦略的なコンテンツ×場所」と提示する。質の高いコンテンツを定期的に生み出せる体制はもちろん、先の2軸のマトリクス図に基づくようなコンテンツの出し分け、またオウンドメディア構築やSEOなど、どう訪れてもらうかという意味での場所の観点も重要だ。
イノーバでは、冒頭で紹介したマーケティング支援ツール「Cloud CMO」の提供、大手出版社での経験豊富な編集者による質の高いコンテンツ制作、またこれまでの運用ノウハウを元に、日々増えるコンテンツマーケティングの実践をサポートする。
「潜在顧客のニーズを理解し、自分たちの良さを伝えるコンテンツマーケティングは、とても可能性のあるマーケティング手法です。これをもっと広めていきたいと考えています」と宗像氏。まだ見ぬ顧客との出会いを生むコンテンツマーケティング。イノーバの手がけた事例から、今後も好例がますます増えそうだ。
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