企業内にデータが分断して存在、「サイロ化」が課題に
MarkeZine編集部(以下MZ):昨年4月、IBMはマーケティングオートメーション領域の先駆者であるSilverpopを買収しました。現在、同名のツールを「IBM Silverpop」として展開中ですが、まずはマーケティングオートメーションツールが求められている背景を教えてください。
伊東:大きくは、生活者の変化と企業内の分断という2つがあると思います。生活者の変化については、ますますデジタル化が進み、デバイスを自由自在に使い分ける人も増えてきました。チャネルは増えたものの、接触する情報量が多いので、不要なものはすぐに切り捨てられてしまいます。そのため、より一人ひとりの顧客を深く理解して、個別最適なコミュニケーションを図る必要があります。
MZ:もうひとつの企業内の分断とは、どういうことでしょうか?
伊東:テクノロジーの進化によって取得できるデータは増えているのに、それらが企業内でばらばらに存在していることです。「データのサイロ化」などと言われていますが、サイト内の行動、リアル店舗のPOS、メールマーケティングへの反応といった各種のデータがそれぞれ別の部署で管理されていて、横断的な活用が難しい。さらに、それらをマーケティング担当者が簡単に扱うこともできない、という状況に手をこまねいている企業が少なくありません。
あらゆるユーザー行動をコミュニケーションに反映
MZ:確かに、理論的にはデータを活用したさまざまな施策が可能なのに、いまだに同一内容のメルマガの一斉配信も目にします。
伊東:当然、反応率は低下しますよね。ただ、名前の差し込み程度なら一般的なメール配信ベンダーのサービスで可能ですが、内容までパーソナライズしてかつ自動運用するのは、実際にはかなり難しいものです。
そうした状況を、Silverpopは解決します。サイトへの訪問回数や閲覧ページ、購入商品などを踏まえてメールの内容を変えたり、開封のタイミングなどを自動学習して、その人に最適な時間帯に配信したりできます。さらに、ABテストも可能です。元々メールマーケティングツールから発展しているので、メールには特に強いんです。
MZ:冒頭でデータ管理の話がありましたが、属性や行動のデータを横断的に管理しているから、こうしたメール配信最適化が可能になるのですか?
伊東:ええ。Silverpopの特長は3つあり、洗練されたメールマーケティング機能はそのひとつです。
2つ目は「Behavioural Marketing Automation」といって、あらゆるソースからユーザーの“行動”を捉えてコミュニケーションに反映できることです。
3つ目は「Lead to Revenue Management」です。こちらは主にBtoB領域で活用されていますが、見込み顧客をスコアリングし、しきい値に達したら営業向けにコールリストを作成するなど、収益(revenue)にこだわってリードを自動育成します。
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お問い合わせ先/日本アイ・ビー・エム株式会社
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高度なクラウド型マーケティングプラットフォーム
MZ:既存のマーケティングオートメーションツールよりも、幅広く高度な施策が可能なツールなのですね。
伊東:そうですね。なので当社では、Silverpopをデジタルマーケティングプラットフォームと位置づけています。実際、機能するデータベースを持たないブランドの場合でも、Silverpopのクラウドのデータベースに既存のデータを格納し、さらにサイト内行動やメールへの反応など、今後取得するデータも蓄積していけます。
チャネルを横断してデータを一元管理し、さらにデバイスを問わずシングルIDでユーザーを可視化・洞察するので、チャネル、コンテンツ、アプローチのタイミングまでを最適化した施策の実施が可能になります。
Silverpopはグローバルですでに多くの企業が活用していますが、IBMでは既存のカスタマーエンゲージメントソリューションと組み合わせて、企業のオムニチャネルマーケティング支援をさらに推進します。
MZ:ちなみに、どのくらいの企業に活用されているのですか?
伊東:2,500社以上、約5,000ブランドで採用されています。クラウドサービスなので、ビジネスの規模が大きくなくても手軽に使えることが利点です。
ユーザー行動をスコアリングしてコンテンツ最適化
MZ:Silverpopは、BtoB、BtoCを問わず活用できるのですか?
伊東:はい。少し事例をご紹介しますと、まずBtoCでは、ムースジョーという米のアウトドアブランドでは、顧客の定着率が悪く、コンバージョン率が低いという課題がありました。そこで同社はSilverpopと、IBMの分析ツール「IBM Digital Analytics」を使って顧客をセグメンテーション化し、パーソナライズしたメールを配信しました。
サイト上の閲覧箇所などの行動データと、これまでの購買データを掛け合わせてメールのコンテンツを最適化し、さらに配信時刻の最適化も図ったところ、開封率が80%に向上し、コンバージョン率向上にもつながりました。
MZ:具体的に、どうやってユーザーごとの関連性の高いコンテンツを導き出しているのですか?
伊東:この例はBtoCですが、Silverpopの特長として紹介した、リード育成に有効なスコアリングを採用しました。カタログのダウンロードや、特定ページのコンテンツをいくつ読んだかなどにあらかじめポイントを付与しておき、その蓄積数によって顧客との関係の深さを推測、コンテンツを出し分けています。
スコアリングは加算方式だけでなく、しばらく接触がない、メール開封やサイトへの来訪が減ったなどの行動でマイナスポイントを加算するなどの設定も可能なので、長期かつ緻密に顧客体験を積み重ねることが有効なBtoB商材には最適ですね。
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施策をすぐに実行し、タイミングを逃さない
MZ:社内で分断しているデータを一元化して活用できると、ブランドを横断したクロスセルなども見込めますか?
伊東:はい。例えば米アパレルブランドのデッカーズでは、複数ブランドがばらばらに施策を実施していましたが、ターゲット顧客層の異なる5つのブランド・ラインでSilverpopという統一のプラットフォームを採用しました。その上で戦略的にメールマーケティングを展開したところ、ROIが37倍になるという高い成果が上がりました。
逆に、データを一元化しているからこそ、その価値を最大限に活かす徹底したセグメンテーションが可能になります。北米マツダでは、自動車10モデルごとのフレキシブルなマーケティング施策が求められましたが、個別ユーザーの関心を踏まえたレビューを配信して効果を上げました。それも、同じレビューを2度配信しないよう、Silverpopの「インタラクションエンジン」が機能しています。
MZ:Silverpopを導入して得られる成果を、さらに引き上げていくポイントはありますか?
伊東:小規模でも、施策を考えついたらすぐに試してみることです。メールなら、極論を言えば配信直後から反応が分かりますよね。
例えば先週サイトを訪れてこのコンテンツを見てくれた人には、こういうオファーが効きそうだと思ったら、IT部門などに依頼せずにマーケターがすぐに実行することができます。小さくPDCAのサイクルを回していくことが、データの蓄積にもノウハウの蓄積にもつながります。
万全のサポート体制でオムニチャネル化を実現
MZ:機能が非常に多く、かつイメージした施策をすぐに実行できる機動力にも優れているのですね。今後もさまざまな業種の企業に導入されていくと思いますが、特にどういったビジネスに適していますか?
伊東:Silverpopはクラウドで提供されるサービスなので、オンラインでのビジネスで、顧客とのコミュニケーションがメールWeb、モバイルというデジタルチャネルがメインという業種に多く採用されています。
顧客数10万から数100万の中小規模で多いですね。顧客数が1,000万を超え、オフライン(POS、コールセンター、etc)のデータを活用し、コミュニケーションチャネルに、DMやコールセンターも含まれる企業では、マーケティング・オートメーションとして、オンプレミスのIBM Campaign(旧Unica Campaign)をメッセージングプラットフォームとしてSilverpopを組み合わせて提供しています。
MZ:最後に、今後の展望をお教えください。
伊東:IBMはまだハードウェア・ソフトウェアメーカーのイメージがありますが、私が所属しているExperienceOneはマーケティングソリューションにフォーカスしたチームです。顧客の新規獲得からリテンションまで、広告から顧客データを活用したダイレクトなアプローチまでをカバーする複数のパートナー企業とも連携して、我々の顧客である企業のマーケティング業務の効率/効果の向上実現に貢献しています。
Silverpopでできること、さらにIBMのさまざまなソリューションと組み合わせて実現するマーケティングは非常に奥深く、可能性を秘めています。 その実現を私たちが万全にサポートしますので、顧客理解を推進しながら、オムニチャネルマーケティングを当たり前のものにしていただければと思います。
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