プレミアム動画コンテンツの先行販売の場「NewFronts」
米国では、毎年5月にテレビ業界にとって重要なイベント「Upfronts」がニューヨークで開催される。これは9月~6月のシーズンに放映される番組のセールス開始時期に合わせて、番組の魅力を広告主にアピールするために行われるもの。招待された主要な広告主企業の前に、番組に出演する俳優やタレントが登場し、華やかなプレゼンテーションが展開される。
その1週間前には、広告業界にとってもう1つ大きなイベントが開催される。“動画広告版Upfronts”ともいえる「NewFronts」だ。もともとは、プレミアム動画広告枠の先行販売・先買いを目的としたイベントとして、エージェンシーのDigitasをはじめ、プラットフォーマーのAOL、Google、Hulu、Microsoft、Yahoo!が創設パートナーとなり「Digital Upfronts」の名称で2008年にスタート。2012年からは米インタラクティブ広告業界団体IABが主催者となり、名前も「Digital Content NewFronts」に改称された。
今回MarkeZine編集部は、広告取引の関係者以外は参加できない招待制のイベントに日本から参加したCCIのストラテジスト板井秀代志氏に、各社のプレゼン内容と今年のキーワードについて聞くことができた。イベント参加には各媒体社からの特別なインビテーションチケットが必要で、イベントによっては、1000人以上のウェイティングがかかるなど、招待を受けるのも大変難しい。このクローズドなイベントのレポートを通じて、米動画広告の最前線をお伝えしたいと思う。
媒体社として参加するための3つの条件
4月27日~5月7日の2週間にわたって行なわれた今年のNewFrontsは、過去最大となる34の媒体社が参加。それぞれ会場を用意し、趣向を凝らした内容でイベントを盛り上げた。ただし、媒体社として参加するには以下の3つの基準を満たすことが条件とされる。
1. オリジナルのデジタルコンテンツを制作していること(テレビコンテンツの二次利用は含まない)
2. 媒体社の動画コンテンツとして高い広告需要があること
3. ビデオ広告営業チームがあること
日本の状況を考えると、かなりハードルが高いと感じるだろう。図の右下のオープンマーケットプレイスのところでは、現在RTBによる取引が加速している。その中で媒体社を悩ませているのが、売買価格の低迷である。図の左上に位置するNewFrontsが担っているのは、動画広告の中でも予約型で売買されるプレミアム動画広告であり、板井氏はまさにそのマーケットを国内で拡大したいと考えている。
厳しい条件をクリアして、今年参画した企業の一覧は以下のとおり。1週目にNewFronts創設パートナーである大型媒体社を中心に主要メディアが顔をそろえた。年によって多少の入れ替わりがあり、動画プラットフォームとしても躍進するFacebookの登場もささやかれたが、同社はNewfronts開催前の4月22日に独自のイベントをニューヨークで開催し、動画広告コンテンツの新たなパートナープログラム「Anthology」を発表した。
では、板井氏が参加した1週目の各媒体社のプレゼンの内容を紹介しよう。