大事な作業を忘れていませんか?
みなさま、こんにちは! 前回は、セルフサービスのアンケートを上手に利用するためのポイントを紹介しました。セルフ型サービスは「サクっと聞きたいことが聞けて便利!」という方もいるかと思います。しかし、ちょっと待ってください。アンケートの前に、実は大切な作業があることを知らない、あるいは忘れている方は多いのではないでしょうか。
その作業とは「仮説の構築」です。調査の世界では仮説構築が完了すれば、その調査の大部分の仕事が完了したと言われるほど重要なものなのです。
セルフ型アンケートでよくあるのが「聞きたいことを並べただけ」のアンケートです。たしかに、回答者は「聞けばとりあえず答えてくれます」。これはアンケートに限らず調査全般に言えることなのですが、回答の程度に違いはあるものの、どんな質問でも聞かれればそれなりの答えを得ることができます。ですが、それが回答者の「真意」かどうかは別です。
世の中には話を聞くのが上手な人がいますよね。同じ質問でも、聞き方次第で本音を引き出せるか、通り一遍の答えが返ってくるか違ってきます。せっかくアンケートを実施するのですから、アンケート結果の活用まで見越して質問をしっかり作り込んでから調査に臨みたいものです。
2つの仮説:現状仮説と戦略仮説
では、回答者の真意を引き出すアンケートはどうやったら作ることができるのでしょうか。ここで必要になるのが「仮説」です。仮説には以下の2種類があります。
現状仮説:現状はこのような状況になっているのではないか?
戦略仮説:このようなことをやったらうまくいくのでないか?
2つの仮説は役割が違い、使うタイミングも異なります。それぞれ見ていきましょう。
現状仮説
マーケティングの担当者ならマーケットの現状把握は欠かせませんが、そのために必要なのが「現状仮説」です。「自社製品のマーケットはどれくらいのボリュームがあるのか」「自社製品はお客様の満足を得ているのか」といったものがこれにあたります。
たとえば、ホテルのマーケティング担当者が、最近増えている外国人観光客が宿泊施設の使い勝手をどのように感じているのか把握したいとしましょう。この場合、考えられる現状仮説として以下のようなものがあります。
・日本のホテルのベッドサイズは、欧米からの観光客にとっては小さいと感じてるのではないか。
・日本を選ぶ際には、旅行クチコミサイトだけではなく、身近な人の評判も収集しているのではないか。
・来日1回目と2回目以降では、訪日の理由に違いがあるのではないか。
このように仮説を立てると、どのように聞いたら答えが導き出せるかがわかりますよね。たとえば欧米からの観光客とその他の地域からの観光客それぞれに「ベッドは小さいと感じますか?」とたずねて、違いがでれば仮説が的中したということになります。
戦略仮説
すると、次の段階として「どんな手を打ったら課題を解決できるのか」というアプローチをすることになります。「こんな手を打ったら、マーケットはこのように変化するのではないか」「こんなアプローチをしたら、今まで関心がなかった消費者が関心をもつのではないか」といった仮定を具現化したものが戦略仮説なのです。
先ほどの例で言うと、「狭いベッドで少しでも快適にやすんでいただけるよう、クッションなど補助的なグッズを取り入れてみてはどうか」といった仮説が立つのではないかと思います。ここまでくれば、そのコンセプトが受容されるかを検証すればいいわけです。