VRゴーグルを会社説明会で配布した真意とは?
あらゆる業務において、デジタルの活用が必要とされる今。とりわけコーポレート系業務において、その重要性を浮き彫りにしたのが、2016年卒業者から適用される、「就職活動の後ろ倒し」です。
より短い期間で、より多くの優秀な人材を呼び込むためには、広い層に情報を行き渡らせるIT戦略が欠かせません。そこで今回は、コーポレート系業務におけるデジタル活用の一例として、各社の新卒採用にクローズアップします。
まず紹介するのは、デジタル総合型の広告会社として、2003年に創業したスパイスボックスです。事業領域であるデジタルを活用した広告コミュニケーションについて、その楽しさや可能性を多くの学生に感じてもらうべく、掲げたコンセプトは「DIVE INTO DIGITAL(デジタルの世界に飛び込もう)」。「デジタルを活用した事業を行う」=「デジタルの世界に飛び込む」というように、事業の根幹を直感的に表現したフレーズが興味を引きますが、施策の中身も、非常に直感的です。
同社が採用活動に用いたのはVRゴーグル「Milbox(みるボックス)」。これを会社説明会に訪れた学生たちへ配布しました。覗き込むと、若者に人気のロックバンド「東京快速」とのコラボレーションで制作したVRミュージックビデオが映し出され、バーチャル化したバンドメンバーが攻撃してきたり、自分の声が物理的な形となって、飛び出してきたりします。なお、視聴者の声に反応するといった、双方向的な体験ができるVRミュージックビデオは、スパイスボックス曰く、世界初の試みとのこと。
広告コミュニケーションやデジタル事業といったフレーズは、スパイスボックスの説明会に参加する学生にとって耳に馴染みはあるものの、肝心の業務内容はどこかぼんやりとして、つかみ所のないものです。それを社内開発のVRゴーグルを用いることで可視化し、さらに“世界初”を打ち出すことで、入社すれば一端を担える可能性までアピールできた事例といえます。
ちなみに、同社は会社説明会の後に、この仕掛けが楽しめるスマホアプリをiPhoneとAndroidから無料リリース。アプリはNHKなどにも取り上げられ、広告業界やIT業界に興味のなかった学生にも、会社名やデジタル事業の可能性を知らしめる機会を創出しています。
「顔採用」の都市伝説を活用した企業も
次にご紹介するのが東急エージェンシーによる事例です。その名も「これがホントの、顔採用」。独自に開発したWEBカメラによる顔認識システムを、サイト上に公開。顔認識から性格を分析し、その結果に応じて、さまざまな就活支援の特典が得られるという仕組みです。
「企業に採用されるには、ルックスの良し悪しがモノを言うのではないか……?」就活生のあいだで囁かれる都市伝説を逆手に取った、大胆なこの施策。新卒採用サイトが公開されるやいなや、SNSやWEBメディアのみならず、雑誌やラジオ番組でも紹介されるほどの話題になりました。
しかし、なぜ大手広告会社にも数えられる同社が、このような大胆な施策に打って出たのでしょうか? そして、どのような手応えを得たのでしょう?今回、同取り組みの背景を東急エージェンシーに直撃してきました!
この連載は?
本連載はマーケティングにおけるデジタル活用情報を伝えるウェブメディア、「D2Cスマイル」の記事を、MarkeZine向けに再編集した出張版です。出典元はこちらです。