AIの進化と普及により、AIによるアシスタントサービスが浸透を始めた昨今。そうした中、新たに誕生したのがNTTドコモによるAIエージェントサービス「my daiz(マイデイズ)」です。
ドコモではAIによるアシスタントサービスが登場する以前から、「iコンシェル」や「しゃべってコンシェル」を通じ、ユーザーの行動をアシストするサービスを提供してきました。さらにここへAIのテクノロジーが加わることで、いったいどんな変化が生まれ、どのような価値が生み出されるのでしょうか。
株式会社NTTドコモ コンシューマビジネス推進部の的場雄太氏とプラットフォームビジネス推進部の山本美沙氏を招き、開発に携わったD2C smart CRM事業部の奈良幸子氏、麻原彪史氏がインタビューしました。
「ひつじのしつじくん」と何が違うのか
麻原:NTTドコモから新たにリリースされた「my daiz」。2018年5月30日より提供が開始されましたが、どのようなサービスなのか、あらためてお聞かせください。
的場:「my daiz」は弊社による「iコンシェル」「しゃべってコンシェル」の後継にあたり、AIを用いたエージェントサービスです。ドコモの回線を利用いただいているお客様以外の方にも広く使っていただけるサービスとして提供(※)していますが、特徴は大きく2つあります。まず1つ目は、スマホの使用履歴や位置情報による行動履歴に基づき、お客様一人一人に合わせたパーソナライズ化が可能なこと。その高精度なパーソナライズ化により、お客様のニーズを先読みして、情報を提供できることです。
※iOS版は2018年5月30日から提供、 Android版は2018年9月27日から提供
2つ目には、様々な企業や自治体との連携により、「my daiz」という1つのプラットフォームを通じて、多種多様な情報提供が可能な点です。現在、56のメンバー(9/27時点)を提供していますが、この企業や自治体が提供するエージェントのことを「メンバー」と呼んでいます。お客様が必要とされる企業や自治体を自由にセレクトし、ここでもパーソナライズ化が図れる仕組みです。いわば、自分だけの「チーム」を作るようなイメージですね。
麻原:お話しいただいたように、御社では長くエージェントサービスを提供されてきましたが、新たに「my daiz」開発に至った理由についてもお聞かせください。
的場:プッシュ通知でお客様に情報を届ける「iコンシェル」は10年前から、対話を通じて情報を届ける「しゃべってコンシェル」については6年前から提供を続けて参りました。その一方で世間では、AIアシスタントが定着しつつあります。こうした潮流の中、従来のサービスから培ったノウハウを武器に、新たな挑戦をしていきたい。弊社こその強みを生かし、お客様に新たな価値を届けたいという思いが、開発の背景にあります。
山本:ドコモの従来のサービスで培ったノウハウの1つがキャラです。「ひつじのしつじくん」と「メイドのメイちゃん」は、「iコンシェル」「しゃべってコンシェル」で活躍しているキャラクターですが、しつじくんはお客様を「ご主人様」と呼び、メイちゃんは少しツンデレな要素を持ち合わせた性格で、キャラクター性が立つた個性的なキャラクターとなっています。
そんなmy daizは私とメイが集めた情報の粒を元に生まれましたが、実は私とメイのことを知らないみたいなんです。そのため、私とメイはかげながらmy daizを見守っています(@>ェ<@)
— ひつじのしつじくん/my daiz(マイデイズ) (@hshitsujikun) 2018年7月17日
ひつじのしつじ#ひつじのしつじ #mydaiz #今後ともmydaizをよろしくお願いします pic.twitter.com/PzAo6hQi1k
だからこそ、多くの方からかわいがっていただいた反面、お客様の趣味嗜好により、好き嫌いが明確に分かれるキャラクターでもありました。そのため、今回の「my daiz」では、より幅広いお客様から愛されることを意識してキャラクター設計を行いました。基本形は立方体のようなビジュアルですが、いろいろな形に変形します。天気情報を届けるときには太陽の形になったり、乗り換え案内では電車の形になったり。一つのイメージに固執せず、柔軟に形を変えます。
柔軟に形を変えるキャラクターがユーザーとの会話を生み出す
麻原:そのキャラクターの名前も、サービス名と同じく「my daiz」ですね。そして、ただ情報を届けるだけでなく、対話も可能です。
的場:「my daiz」にキャラクターを置いた理由も、これまでの経験に基づいています。AIアシスタントが定着しつつある最中ですが、やはり何らかのキャラクターがいたほうが、圧倒的に話しかけやすいと考えています。このことは、今回新しいAIエージェントサービスを検討する中で行ったユーザテストやユーザヒアリングにおいても確認ができました。
麻原:確かにキャラクターの存在が、端末に話しかけることの気恥ずかしさのようなものを取り払ってくれますね。しかも「my daiz」に関しては、音声としての返答だけでなく、形の変化からも反応をくれます。
山本:その「my daiz」特有のアクションが、さらに話しかけたい思いを強めるはずだと考えます。キャラクターに動きが加わると、感想を述べたくなりますよね。「あなたって、そんな形にもなるの?」というように(笑)そうした取っ掛かりをうまく活用し、より実質的な対話に持ち込みたいという狙いもあります。
麻原:まさにその狙いが当たったと言いますか、「my daiz」特有のアクションについてサービス提供直後から、SNSでも話題を集めています。その他に、印象的なユーザーの声をお教えください。
的場:印象的だったのが、しつじくんやメイちゃんを惜しむ声です。「my daiz」の機能にも、一部、彼らを採用していますが、それでも「寂しい」「残念」というお声を多くいただき、ありがたい限りです。実は社内でも「キャラクターを一新していいのか」という声が上がりました。かなり議論を重ねた部分でしたが、新たなキャラクターにも「かわいい」「愛着が湧く」という声を多くいただき、ホッとしていますね(笑)
奈良:SNSでのお声をチェックしていますと、スマホの充電中に見せるアクションや、イヤホンを接続したときに見せるアクションも、非常に話題になっていますね。さらに独自の愛称を付けてくださるユーザーも見られます。あの四角いフォルムから「豆腐」だったり、「コンセント」だったり(笑)
的場:一つのイメージに固執しないという、キャラクターデザインへのこだわりが、お客様に伝わったのかもしれません。シンプルな分、いろいろな解釈が生まれるんですね。実は弊社においても、開発段階には「はんぺん太郎」と呼んでいました(笑)
麻原:SNSでは「キャラクターグッズの販売はないのか」というお声までありますね。どうでしょう、グッズを作られるご予定は?
的場:具体的な話は進行していませんが、そうしたお声を受け、社内からも「何か作れないか」という意見は上がっています。
奈良:キャラクターデザインへの反響ももちろんですが、対話の部分でも、大きな反響がありますよね。ツイッターでは「こんなことを話しかけたら、こんな形に変化した!」という、発見を楽しむようなつぶやきが見られます。
山本:情報が欲しいから話しかけるというだけでなく、何気ない雑談などの日常会話からキャラクターの変化を発見し、お楽しみいただいています。この雑談に関しても、かなり注力している部分です。実は「しゃべってコンシェル」においても、ユーザーの2割ほどが雑談を楽しまれているんです。こうしたログの解析により、お客様がどのような対話を楽しみたいのかについてもノウハウが蓄積されています。