「働き方に、もっと、自由を!」
「サラリーマンには2つ選べないものがある。それは上司と勤務地だ」伝統的な大企業に務める優秀な40代の友人の言葉です。従来の日本企業において、本人の意思と無縁の転勤は、ごく普通のことでした。家族もいる50代で、2年間の九州勤務を終えて東京に戻り、仲間で帰京祝いをやった直後に、今度は北海道に転勤になった友人がいます。別の40代の知人は、中国奥地への勤務を命じられました。
もちろん、九州で働くこと自体、北海道で働くこと自体、中国で働くこと自体は、まったく悪いことではありません。東京で働くことばかりが良いとも、僕自身まるで考えていません。問題は、「望んでもいない」のに、時に「自分にとって不都合でイヤ」なのにもかかわらず、会社の都合で勝手に、働く土地を命じられることです。
僕は、幾つかの働き方を組み合わせて働く「モジュール型ワーキング」を、第三の働き方として提唱し、書籍も出版しています。閉塞感の強い現在の日本で、少しでも「働き方に自由を」もたらすための、一つの方法論として提示しています。その本の中でも、「働き方を自分自身の手に取り戻す」ことを重要なテーマとして、取り上げています。
働くということに関して、5つのWと2つのHが考えられると思います。WHAT(何をするか?)、WHEN(勤務時間はどうか?)、WHO(誰と働くか?)、WHY(何故働くのか?)、HOW(どんな風に働くか?)、HOW MUCH(収入はどうか?)。そして、今回焦点を当てるWHERE(どこで働くか?)です。働くことに関してのWHERE、すなわち働く土地は、暮らして生きて生活をする場所でもあります。家族がいれば家族と自分自身の歴史を刻んで行く場所です。どう考えたって、重要です。ここが、今の一般的な働き方みたいに「不自由」でいいはずがありません。
そんな中、友人知人の中に、自ら選び取って東京以外の場所で働く人の例を、いろいろと見聞きするようになってきました。九州で働き始めた人、長野に住み始めた人、シンガポールに移動した人。そして彼らの話は、従来言われているUターン・Iターンといった移住とは、一線を画すイメージが感じられました。覚悟は持っているが悲壮ではない。都落ちといったネガティブな印象は感じられない。一種、軽やかでさえある。彼らの話はどれも、新しい働き方にチャレンジしている人に特有な「自由さ」の感じられるものでした。
というわけで、この連載では「WHEREから始める」という新しい働き方を実践している人たちを紹介していきます。業務内容や収入やヤリガイに加えて、これからは、働く土地も働き方の重要な要素になっていくでしょう。読者のみなさんのキャリア・メイクのヒントにしていただければ、と思います。