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MarkeZine Day 2025 Retail

事例で探る!デジタル時代の「共創マーケティング」

なぜ今、共創マーケティングなのか~「顧客とともに体験をつくりあげる」ことの重要性を考える

文脈価値の創出に必要な視点とは

 読者のみなさんの商材において、文脈価値をつくれるタイミングはどこでしょうか。購買前、購買時、購買後、どこに顧客接点をつくり、新たな体験を作り出せるでしょうか。

 北米トヨタのブランド「Scion(サイオン)」は、若年層をリサーチする中で個性を表現する手段として自動車を利用している人のトライブ(共通する趣味・嗜好、考え方をもった集団)を発見しました。彼らは運転にかける時間と同じくらいの時間を自動車の装飾、カスタマイズにかけており、ファンのコミュニティやイベントに参加しています。

 そこで、トヨタはカスタマイズ用のパーツやアクセサリーの製造会社にサイオンの製造プロセスを開放し、サイオン用の製品を作りやすくすることで、カスタマイズをより楽しめるようにしました。また、好きな音楽や出身地に関するシンボルを組み合わせた自分だけのエンブレムを作成できる「Scion Speak(サイオンスピーク)」というサイトを作りました。参加者は自分だけのエンブレムをステッカーにしたりSNSに投稿したり、ファンのコミュニティのプロフィール画像にすることで、個性を表現できます。

 自社がつくり出せる文脈価値を知るには、これまでのモノをつくるためのリサーチに加え顧客の体験をより深く知るリサーチが必要です。楽しい、ワクワクする体験を探し出し、その製品はどのような文脈で利用されると価値が最大になるのかを考えます。そしてその文脈価値が、顧客同士の共創によってさらに高まる場合、共創型のサービスや場をつくりあげることができます。

 また、サービスは一度作って終わりではありません。既存顧客の中でもサービスに協力してくれるパートナーから継続的に意見を聞き、サービスを改良していくためには共創コミュニティが有効です。

文脈価値をパートナーと共創する
文脈価値をパートナーと共創する

競合はソシャゲ、共創プラットフォームを育むために

 体験の中には、一人での体験よりもまわりの仲間と共有したほうが楽しく感じられるものがあります。NIKE+は走るという体験を、走った速度、距離などとして記録できます。その記録を仲間と共有することで、競争意識が高まるなどの体験が生まれています。このような、体験の共有ができる場が共創プラットフォームです。

 共創プラットフォームは時間、距離的制約を超えて多くの人が参加するために、スマートフォンなどからアクセスできるようアプリや、ウェブサイトとして作られるケースが多く、コミュニティの機能などが含まれています。生活者の時間を使って体験してもらう場となるため、ソーシャルゲームなどが競合になります。ゲームよりも楽しい体験を提供するためには、リアルとの連動が有効です。

 自分の意見で辞書が作り変えられる、イベントで自分のカスタマイズした車や、自分だけのエンブレムを自慢できる。こういったリアルとの連動は、リアルなモノをつくっている企業が体験を提供する上での優位性です。

 体験を生み出す共創プラットフォームは、その場にいる体験自体を価値と感じてもらえるかどうかが重要です。このため、重要なKPIはプラットフォームに参加し続けてくれるかの継続率で、継続していく中で生活者が顧客に、顧客がパートナーに成長しているかを見ていきます。

文脈価値自体を生み出す共創プラットフォーム
文脈価値自体を生み出す共創プラットフォーム

壁はある、でも、それ以上にやるべき理由がある

 共創マーケティングで文脈価値をつくる取り組みはまだ始まったばかりです。この成功のためには、越えなければならない壁がいくつもあります。例えば、モノ中心の考え方で企業の組織が形成されているため、文脈価値を提供するサービスを担当する部署がない。中長期的な施策であるため、成果が出るまでは時間がかかる。生活者と共創していく手法が確立されていないなどがあります。

 しかし、モノ(機能的価値)だけで差別的な競争優位性を獲得することはますます難しくなっています。マーケティングの競争ドライバーは、機能的価値から情緒価値へ、そして情緒価値から文脈価値へと移行しつつあります。そして、その文脈価値は、顧客(仲間)同士がつながり、様々な活動を共創した方が、より高くなる領域が増えています。

 共創マーケティングとは、自社のブランドを愛している顧客と、顧客がより一層楽しんだり、熱狂したりできる体験をつくっていける最高にエキサイティングな仕事です。他社との差別化を考えるのではなく、どうしたらもっと顧客が熱狂してくれるのかを考える。ぜひあなたも顧客とともに新たな体験をつくりだす共創マーケティングを考えてみてください。

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この記事の著者

宮本 昌尚(ミヤモトマサナオ)

 株式会社トライバルメディアハウス 共創マーケティング部 部長。アクセンチュアのITコンサルタントを経て現職。ソーシャルメディアの黎明期から、ソーシャルメディアマーケティングの戦略策定や、オウンドメディアのソーシャル化支援、リスク対策、国内外のFacebookページ構築運用支援のプロジェクトマネージャーを勤める。その後、共創マーケティング部を立ち上げ、コミュニティの戦略策定から商品の企画提案を担当。過去に担当したクライアントはキリンビール、KFC、P&am...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/09/04 14:00 https://markezine.jp/article/detail/22895

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