ブランディングの目標設定と効果測定をどう行うか
こうしたニューバランスの課題感に対して、マリンソフトウェアの森下氏は、「目標に対しての広告効果を検証できるよう、テクノロジーを活用してオンラインで数値化された結果とリアルな事象に対する効果ををつなぐソリューションをご提供できます。」と語る。
その握りのもと、ターゲットとなるユーザーがどのようなタッチポイントを経るのか、どのようなカスタマージャーニーであれば評価が高まるのかといったストーリーを組み立てる。さらには、ソーシャルメディアなどでどう評価され、話題になれば“成果があった”とみなすのか、そしてその成果を最大化するためにどうすればいいのか、顧客と共に考え、伴走するというわけだ。
確かにニーズが明らかな顧客の行動は、目標設定と達成成果で明確化できるだろう。しかし、ブランディングの効果として、鈴木氏が気にするのは、顕在化した事象よりも潜在的なインサイト、「どうなったか」よりも「どう考えているか」だという。
例えば、既にブラントとして認知した人に「認知されたイメージ」を提供すれば反応が返ってくることは明白だ。しかし、認知していない人、あるいは否定的な人に対して広告だけで印象を変えることができるのか。そもそも、そうした人たちの内面を汲み取ることができるのか。数値に表れないものをどう捉えるのか。コンテキストを掴まなければ、見えてこないものもある。
その問いに対して、現時点で明確な解を持つソリューションはないだろう。となれば、マーケターは仮説を考え続け、テクニカル側では検証を繰り返し、その中からおぼろげな輪郭や反応をあぶり出す方法を考え続ける必要がある。
マーケターとテクノロジーサイドの連携が肝
「天気のいい朝に走ろうかなと思っているところに届くメッセージと、夜遊び中に届くメッセージでは全く印象が違うでしょう。ブランディングのシナリオがあった上で、テクノロジーとしてどう設計して最適化するか。それが実現できれば、今のように平準化したデータを見て一喜一憂するよりも合理的なのではないかと。ただ、その仮説が整理できているわけではないので、徐々に始めていきたいと考えています」(鈴木氏)
そうした仮説検証の取り組みの一つが、検索ワードの選定だ。ECとブランディングでそれぞれキーワードを別々に選んでいるという。ECでは購買率を高める目的であり、ブランディングでは「共感した人が検索するのでは」という仮説のもと、広告のKPIとしての妥当性を検証しようというわけだ。
こうした意図に、「マリンソフトウェアもまた、様々なデータを連携・活用し、より適切なオーディエンスにより適切な広告を届けるために、プラットフォームとしてのテクノロジーで応えようとしています」と野澤氏。例えば、オーディエンス・マーケティング・スイートにより、オフラインのイベントと連携して、ソーシャルメディアでユーザーのシグナルを捉えて何らかの反応をブーストしたり、外部の天気データから天候に応じて効果的と思われるメッセージを送付したり、テレビと連携したソーシャルメデイアでの広告キャンペーンの展開・最適化など、様々な仮説に基づく施策構築を容易に行い、検証できる環境を整えている。
確かに、ユーザーのインサイトを推測するのは非常に難しいことだ。しかし、マーケターとテクノロジーサイドが共に連携し、ブランディングにおける仮説と効果検証を繰り返し、運用することで、見えなかった「何か」が見えてくるかもしれないのだ。