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マーケターは「コンテンツ=マーケティング」であることに気付くべきです【HubSpotインタビュー】


「マーケターならHubSpotで働きたいと思う。なぜならマーケティングの最先端を切り拓いている会社だから」と語るのは、HubSpotのAPACマーケティングディレクターRyan Bonnici氏。競合をも魅了する独自のカルチャーやマーケティングの考え方について聞きました。

マーケティングの最先端を切り拓くHubSpot

 HubSpot社は、マーケティングオートメーションの世界でも際立った存在です。創業者であるブライアン・ハリガンとダァメッシュ・シャアが執筆した『Inbound Marketing』は従来のマーケティング手法に取って代わる、新たなオンラインマーケティングの可能性を示しました。

 今年8月、同社のAPACのマーケティングディレクターを務めるRyan Bonnici氏が来日。9月に刊行された庭山一郎著『BtoBのためのマーケティングオートメーション 正しい選び方・使い方』(翔泳社刊)に収録するため、HubSpotパートナーのスケダチ代表取締役社長 高広伯彦氏も同席するなか、Bonnici氏に、HubSpotはどんな会社なのか、そしてそのマーケティングの考え方についてうかがいました。

MarkeZine Bonniciさんはセールスフォースをはじめ多くの会社に在籍し、ほとんどのマーケティングオートメーションツールに精通しているということですが、実際にHubSpotに入って、その雰囲気やカルチャーに触れて、どのような印象を持ちましたか?

Bonnici 業界で一番いい会社で働きたい、すごい会社で仕事をしたいという思いがあり、マーケティングだったらHubSpotで働きたいと思っていました。なぜならHubSpotは、現在のマーケティングで一番最先端を走っている会社だからです。これからマーケティングはどうあるべきかという新しい台本を書いているように感じられて、すごくエキサイティングだと思います。理念も含めてすばらしい会社です。

HubSpot APACマーケティングディレクター Ryan Bonnici氏
HubSpot APACマーケティングディレクター Ryan Bonnici氏

 私がHubSpotに入った理由は3つあります。私は多くのマーケティングオートメーションツールを使ってきましたが、いろいろと足りない機能があった。HubSpotを使ったとき「これならうまくいく、本当にいい」と感じました。まず製品がすばらしいというのが1つ。2つめは、HubSpotの人と会ったときに、彼らは本当に頭がいい人たち、マーケターとして素晴らしい人たちなんだという印象を持ちました。実験をしたい、いろいろやってみようというカルチャーがあるし、うまくいっていないというレポーティングを受ければ、それになんとか対応しようします。

 そして3つめに、今までの会社では味わったことない文化があること。HubSpotには「HEART」という言葉があるのですが、採用するときにはこの言葉が表す5つのものを持っていることが求められます。Hは「Humility」、謙遜できる人であること。Eは「Effective」、有能であること。Aは「Adoptable」。この業界のすばやい変化に対応できること。変化が嫌いな人はHubSpotで仕事ができないと思います。Rは「Remarkability」、なにか並外れたものを持っていること。すばらしいコンテンツが作れる、分析がすごくうまい、人とつながるのがうまいとか、何かひとつほかの人に負けないものを持っている人であること。Tは「Transparency」。透明性、オープンな人であることです。もし間違いをおかしてしまったら、それを言えること。HubSpotはいろいろなルールを設けるのを嫌います。たとえば経費です。どこかに出張に行くとして、その経費に対してのルールは特にないんです。社員それぞれが経費について良い判断をすることが求められる。「経費はこうしなければいけない」というルールは設けていないのです。

「HEART」が何を意味するかを説明するBonnici氏
「HEART」が何を意味するかを説明するBonnici氏

 この5つの能力を持っている人を採用しているので、誰かがミスをしたときに、その人にそれを正すように言うことはあっても、社員全員にあれこれルールを設けることはしたくない。自立している会社と言いますか、マネージャーから「これをやれ、あれをやれ」と言われることがないのです。毎週、チームのメンバーと一対一のミーティングをやるときは「OK、今日は何の話をしようか?」とたずねます。彼らが一番したい話を言ってくるべきなので、私のほうから「これとこれとこれについて聞きたい」ということはありません。

 仕事の仕方は昔と変わってきています。仕事の環境も柔軟になっていて、家族がいれば子どもを朝学校に連れて行ったり、迎えに行ったりしなければいけない。それをやりつつ仕事をしたり、在宅で仕事をすることもできる。どのくらい仕事をするのかではなく、どのような結果を生み出せるかが重要なのです。午後5時から夜中の3時まで働いてもいいし、朝の5時から午後3時までが能率が上がるというならそれでもいい。HubSpotの文化に関して、SlideShareでプレゼン資料を公開しているのですが、百万以上のビューを獲得しています。休暇をとるのに関しても制限がありません。どのくらい休んで遊びに行ってもかまわない。仕事を達成すればいくら休暇をとってもかまわないのです。

MarkeZine Eloquaの元CMOの人が書いたVentureBeatの記事で、「僕たちはHubSpotの創業者が書いたインバウンドマーケティングの本をむさぼるように読んだ。そしてそのエッセンスを取り込んだ」と語っていました。そのように競合をも魅了してしまうのもHubSpotの特異な点だと思います。

高広 HubSpot社のそもそもの成り立ちを語るとき、創業者のひとりであるダァメッシュ・シャアが書いていたブログに多くの人が集まり、共感を呼んだというエピソードがあります。小さな会社が成長するのにマーケティングもセールスも必要ではあるけれど、ブログにコンテンツを書いて人が集まるのであれば、そこからリードを集めてビジネスをスタートしてみよう。そこから「HubSpot」というツールが生まれたのです。

Bonnici 当時はまだコンテンツマーケティングやインバウンドマーケティングというカテゴリはなく、HubSpotが新たにインバウンドのカテゴリを生み出したと言えます。

高広 さらにHubSpotの魅力を語るとき、誰かにアピールする「attractive」というよりも、「magnetic」という言葉、磁石で引き寄せてくるという言い方もできると思う。カルチャーも含めて、ユーザーだけでなく、いろんな会社が注目する磁力を持っているんです。

Bonnici 私達はソリューションをお客様だけでなく、社員に対しても提供しているのです。ボストンのオフィスでは犬を連れてきてもいい。調査をしたら、動物がいると心理的にも良い方向に働くようなのです。チームがハッピー、お客様もパートナーもハッピーになるということを念頭に置いています。

「マーケティング=コンテンツ」という考え方

MarkeZine 日本では、マーケティングオートメーション以前に、マーケティング自体が不足しているという部分があると思います。日本市場でHubSpotを広げていくときに困難を感じることもあると思うのですが。

Bonnici どんなところでも新しい市場には困難が伴います。私たちは、日本の企業としてどういう問題があるのかに焦点を当て、それらにどう対応していくのかを考えてコンテンツをつくっていきます。日本のマーケターやCEO、営業の人たちが解題を解決する助けになるようなコンテンツ、彼らに知識を与えるコンテンツをつくることで、彼らをファネルに引き寄せることになると思います。

HubSpot社の日本向けサイト。ここから日本語のコンテンツを発信していく。

※HubSpot社の日本向けサイト(http://www.hubspot.jp/)。
ここから日本語のコンテンツを発信していく。

高広 今の話は、マーケットの中でHubSpotをどのように売り込んでいくか、説得して買ってもらうのかという話だと思います。ただ、先ほどのRyanの話もそうですけど、課題を持っているお客様に「その課題に対する解説策がありますよ」と提示するというのがインバウンドな考え方。お客様にどう売り込むのかという発想はアウトバウンドなセールスじゃないですか。そこのプロセスが全然違う。お客様の課題というのはどこにでも存在するものなので。

Bonnici まず教育ですね。製品がどうというのではなく。教育をどうするのかを考えます。

高広 その時点で課題がはっきりしているから、ちゃんとインバウンドなプロセスを踏んでHubSpotの利用をスタートしてもらうと、お客さんの課題から入ってそこにHubSpotがフィットするという形になるので、すごくすんなり入ることができる。むしろ、HubSpotを売り込もうとすると、たぶんいろいろな問題が発生すると思います。

MarkeZine では最後に日本のマーケターに向けてメッセージをお願いします。

Bonnici お客様の問題点、抱えている悩みにどれだけ自分が想いを同じにすることできるかということ。どういう問題があり、夜寝られないくらい悩んでいるのかというのをちゃんと把握して、それに対する適切なサポートをすること。これによって長期的な信頼関係を築いていけるのだと思います。日本語の公式ブログ(http://blog.hubspot.jp/)も開設したので、これからコンテンツを拡充していきます。

 マーケティングというのはコンテンツです。広告もすべてコンテンツだと思います。マーケターは「このコンテンツは……」という考え方を止めなければなりません。「コンテンツ=マーケティング」なのです。私のマーケティングがどれだけお客様の助けになれるか。私にとっての助けになっている場合、それは製品をプッシュしていることになります。それではダメです(笑)。お客様の課題に役立つことによってはじめていいコンテンツと言える。お客様は助けてほしいのです。だから、そうしてくれるものに引き付けられるのです。

MarkeZine まず、マーケティングについての発想の転換が重要になりそうですね。今日はありがとうございました。

通訳:神田千尋、通訳コーディネート:株式会社グローヴァ
※本インタビューは、HubSpotパートナーであるスケダチ代表取締役 高広伯彦氏の協力によって実現しました。

(左から)インタビューに同席した高広伯彦氏、庭山一郎氏、Ryan Bonnici氏

(左から)インタビューに同席した高広伯彦氏、庭山一郎氏、Ryan Bonnici氏

【終わりに】
Bonnici氏のインタビューは、9月18日刊行の庭山一郎氏の書籍『BtoBのためのマーケティングオートメーション 正しい選び方・使い方』に収録するために行われました。BtoBマーケティングの観点から考察した「ハウスリストの価値を根底から問い直す、『インバウンドマーケティング』という考え方」という文章は必読です(Amazon/その他のオンライン書店へのリンクはこちらから)。

BtoBのためのマーケティングオートメーション 正しい選び方・使い方日本企業のマーケティングと営業を考える庭山一郎 著ISBN:9784798143088価格:本体1,980円+税

BtoBのためのマーケティングオートメーション 正しい選び方・使い方
日本企業のマーケティングと営業を考える
庭山一郎 著(翔泳社刊、本体1,980円+税)

『BtoBのためのマーケティングオートメーション 正しい選び方・使い方』 目次

第1章 マーケティングオートメーション その歴史と役割

 なぜ今、マーケティングオートメーションなのか?
マーケティングオートメーションを選ぶために理解しなければならないこと
日本がマーケティング後進国になった理由
デマンドジェネレーションとは
デマンドセンター、それは営業を本質的にサポートする仕組み
デマンドセンターが必要な3つの理由
第三世代のSFAの補完機能として誕生したマーケティングオートメーション
マーケティングオートメーションの「ルーツと個性」
代表的なマーケティングオートメーション製品

第2章 デマンドジェネレーションの4つのプロセス
デマンドジェネレーションの4つのプロセス
①「リードジェネレーション」~データを収集する3つのチャネル~
個人を特定するためのいくつかの手法
②「データマネジメント」~料理の下ごしらえはしっかりと~
「名寄せ」の難しさ ~表記揺れで起きるトラブル~
③リードナーチャリング ~「発芽したニーズ」を育てる~
BtoBにおける3つのブランディング
④リードクオリフィケーション~スコアリングによるリードの絞り込み~

第3章 マーケティングオートメーション導入で実現する新しい世界
アカウントベースドマーケティング(ABM)の潮流
全体最適を実現するために
ハウスリストの価値を根底から問い直す「インバウンドマーケティング」という考え方

第4章 導入に失敗しないために
「屍の山」を築かないために今やるべきこと
導入に失敗しないための7つのポイント

第5章 主要ツールベンダー7社に聞く、自社製品の特徴
マーケティングオートメーションの主な機能
Oracle Cross-Channel Marketing Platform
Marketo
Silverpop Engage
Adobe Campaign
Salesforce Pardot
Microsoft Dynamics Marketing
HubSpot

第6章 導入企業の事例に学ぶ
日本電気株式会社
ルネサス エレクトロニクス株式会社
ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社

第7章 座談会「営業が本当にほしいリードとは」

用語解説

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/10/02 12:25 https://markezine.jp/article/detail/23060

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