ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン2015は、「デジタル時代におけるグローバルマーケットで勝つためには」をテーマに、世界各国のマーケティングの第一人者を招き開催された。開会にあたり、同サミットの創業者兼主催者である米ノースウエスタン大学 ケロッグ経営大学院のフィリップ・コトラー氏は現代マーケティングの持つ役割と問題の本質について、次のように語った。
マーケティングがなければ資本主義は崩壊する
コトラー氏は、基調講演の冒頭で「マーケティングがどうしたら、1%の資本主義の恩恵を受ける人だけでなく、より多くの人にとって資本主義が有効に活用できるのか、ということを考えたいと思う」と切り出した。富をもっと多くの人々に共有しなければならないということだ。「利益」「地球」「人」のトリプルボトムラインをいかにして共有できるのかということを考えていく必要があると主張する。
70年代から90年代にかけて、日本は次々と産業を席巻してきた。多くの製品、新しいコンセプトを次々と生み出し、「カイゼン」や「TQ(総合的品質)」といった言葉もこの時代に生まれた。これらは、90年代に日本がもたらした贈り物、ギフトだったのだ。しかし今、世界は大きく変わった。その中で日本の企業も戦略を再検証する必要があるとコトラー氏は語る。
その上で、コトラー氏は1つのテーマを提起する。「マーケティングと資本主義に関係性はあるのか」ということだ。かつて英国首相のチャーチルが、「民主主義は最悪のシステムだが、それ以上のシステムはない」と表現したのを引用し、コトラー氏は「資本主義は最悪のシステムだが、それ以上のシステムはない」と語る。なぜ資本主義が最高のシステムなのだろうか。それは、物やサービスを多量に生産できるからだ。資本主義の利点は、非常によい「供給システム」だということだ。しかし、システムとして本当に機能するには十分な需要を構築できるのか、ということが重要となる。いくら物が供給できたとしても、個人が「買わない」という判断をする場合もあるからだ。もしだれも何も買わなければ資本主義経済は崩壊してしまう。だからこそコトラー氏は「強力なマーケティングがなければ資本主義は崩壊する」と説いている。しかし、現代のマーケティングは、そもそも解決しなければならない問題を内包している。