バイラルメディアの登場
「バイラルメディア」という言葉が定着してはや数年。一過性かとも思われたその勢いは、衰えるどころか増すばかり。ついに今冬には、その元祖とも言えるサービス「BuzzFeed」が国内最大のポータルサイトYahoo! Japanとタッグを組み、日本に上陸します。今回はそのBuzzFeedを改めてご紹介するとともに、そのビジネスモデルと技術、及びFacebookやTwitterなどの巨大プラットフォーマーたちとの関係から見える今後について考えみたいと思います。
一昔前、Webサイトにアクセスを集める手段といえば、検索結果で上位に表示される(SEO)もしくは、お金を払って露出を高める(リスティングやバナー広告)ことが主流でした。しかし、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアが社会インフラとして普及した結果、新たな方法が確立されます。それが「SNS上で言及される」という、クチコミの力を利用するものであり、その大きな波をいち早く乗りこなしたのが、いわゆる「バイラルメディア」だといえるでしょう。
まるでウィルスのように広がることから“ウイルス性の”という意味を持つ「バイラル(Viral)」と名付けられたこれらのサービスは、とにかく「シェア」「いいね」「RT」を呼びこむコンテンツを量産しました。彼らは検索で集客しようなどとは毛頭考えていませんから、テキストやキーワード情報は二の次。たとえどんな内容でも、とにかく多くの人の目に留まれば勝ちです。
その参入障壁の低さ、コンテンツ制作の容易さ、そして何より、急激に影響力を伸ばしてきたソーシャルメディアの勢いを背に、世界中でまさに雨後の筍のごとく、数多くのバイラルメディアが現れました。彼らは、従来のWebサービスにとって絶対的な存在であった、Googleなどの検索エンジンの呪縛から解き放たれた、初めての存在だったといえるかもしれません。
BuzzFeedが提供したモノ。「記事」ではなく「話題」
そんなバイラルメディアの先駆けと言えるのが、今夏Yahoo! Japanとの提携を発表した、アメリカ発祥の「BuzzFeed」であることに異論はないでしょう。すでに月間来訪者2億人超えという恐るべき力をもったこのサービスは、一体何が新しかったのでしょうか。
今ではおなじみとなった「○○を成功させる9つの方法」とか「××が人気な7つの理由」とかいった記事。この、箇条書きで記事を構成する「Listicle(ListとArticleを組み合わせた造語)」と言われる手法を定着させたのがBuzzFeedだといわれています。
ついついクリックしてしまうタイトルや、簡潔で読みやすい文体。そして、内容にあえて「突っ込みどころ」を作ることで、読み手に「それは違う」「これが足りない」などの議論を促す、いわば「話のネタ」としての仕組みは、ソーシャル時代に最適でした。彼らは、人種や宗教などかなりきわどいものまで躊躇なくネタにしますが、拡散しているのは記事そのものというより、そこから派生する会話や議論だといえるのかもしれません。