ベンダーサイドはマーケターをいかに支援するか
深田:前回の対談では、楽天の濱野斗百礼さんにお話をうかがいました。楽天さんはサービスを通して獲得したユーザーデータを元に、自社メディア化しマーケティングのプラットフォームとして、クライアント企業に活用してもらうことを目指しているそうです。つまり、マスメディアとデータプラットフォームを組み合わせた立ち位置ですね。
一方で、オラクルさんはベンダーとして、ツールを通してクライアントの活動支援をしていく立ち位置かと思います。御社では今後データ活用を通して広告主のマーケティングをどう支援していくのか、というところからお話を伺えればと思います。
大山:オラクルというとデータベースのイメージが強いですよね。しかし現在、大手のIT企業がマーケティングテクノロジーの買収を通して、トータルでマーケティングソリューションを提供するという流れがあり、オラクルも例に漏れません。
もちろんオラクルのコアはデータベースですから、買収してきた企業は、データをスケールできる技術や設計思想を持っていることが共通の特徴です。オラクルのクラウドがデータプラットフォームとしてマーケティングデータの受け皿になり、顧客のオフラインの購買や来店データ、オンラインの行動データ等が入ってくる。そして、そのデータを元にマーケターがシームレスにアクションできることを目指しています。具体的にはデータのインとアウトの箱となり、データの統合管理をするのがOracle Data Management Platform(旧Bluekai。以下、Oracle DMP)です。
Oracle DMPは、マーケティングに必要なデータを一元化して活用できるようにしますが、データの中にはクライアント自身が収集するファーストパーティデータもあれば、プライベートDMPとして収集するセカンドパーティデータもあります。さらに、Oracle DMPは第三者としての立ち位置でサードパーティデータを売買できるマーケットプレイスを提供しているという特徴があります。サードパーティでやりとりされるデータは個人を特定しない匿名データとなりますが、マーケティングで必要なあらゆる属性データが一元化されて、結びつけられるのです。
買収先のデータとツールの技術、どちらが重要?
深田:顧客に関するあらゆるマーケティングデータを管理するのがOracle DMPということになるのでしょうか。個人をどうやって認識するのですか?
大山:ID Graph(アイディグラフ)という技術を使って、メールアドレスや会員IDをキーにユーザー情報を暗号化した上で自動的に紐付けることができます。Cookieだと、端末が変わるとユーザーをトラッキングができませんが、IDを利用するのでデバイスをまたいだり、オンライン・オフラインと環境が変わったりしても同じユーザーとして認識できますし、店舗の購買データとも結びつけて、ユーザーを認識することができるのです。
企業にとっては、Webで購入しても店舗に来店しても同じひとりのお客様です。その方に向けて統一的なメッセージを発信することは、まさに「おもてなしの基盤」になるものです。メッセージの配信はあらゆる顧客接点ごとに、例えば会員登録などのオプトインをしていない場合は匿名データを元に広告でリーチし、メール配信などのパーミッションをとっているお客さまにはよりパーソナライズされたメッセージでタイムリーにコミュニケーションできます。
深田:オラクルさんはこれまでデータの入れ物となるツールベンダーを買収してきたと思います。その場合、買収先が持つデータも付随してきますよね。データとツールとどちらが重要なのでしょうか?
もちろんオラクルさんはデータベースという入れ物だけでなく、データそのものをやり取りする会社でもあります。しかし、ツールベンダーとしての立場からスタートしたことを考えれば、サードパーティでのデータ売買などを含めて、ある種のデータプロバイダー、アグリゲーターのような立場に進化してきているという印象があります。
大山:もともとデータベースの会社ですから、そのパフォーマンス、セキュリティ技術の重要性は絶対的なものです。加えて、その上部のアプリケーションレイヤーとなるマーケティングツールを買収によって獲得し、これまでのインフラに対する信頼性を基盤として機能レベルでイノベーションを生み続けています。特にサードパーティデータの売買やデータ一元化のプラットフォームは、オラクルのデータクラウドというDaaS(Data as a Service)部門が専門に動いており、日本ではこれからデータを集めていくという段階です。