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時代はダウンロードからストリーミングへ。音楽ビジネスはどう変わるのか

音楽ストリーミングはミュージシャンの敵か味方か

 音楽ストリーミングは、定額で数百~数千万曲が聴き放題となるサービスです。従来のCDアルバムがおよそ15曲で3,000円だとすると、単純に計算しても、ミュージシャンの収入は減るようにみえます。

 しかし、「CDが売れない」「音楽不況」の直接的な原因が、音楽ストリーミングかといえば、そうではないでしょう。その最大の要因は、海賊版だと考えられます。フィジカルな実体をもたない、いってしまえばただの「データ」である音楽や動画は、ブロードバンド時代の進化とともに、良くも悪くもその流通の仕方が大きく変化しました。

 良い面はiTunesなど、悪い面は海賊版というわけです。悪いことだとわかっていても、多くの人が違法ダウンロードに手を染めた実態がそこにはありました。

 その点で、「Spotifyが海賊版ユーザを合法な世界に引き戻した」というのは、業界全体の認識です。わざわざ違法ファイルを探してダウンロードするより、Spotifyに登録してさえいれば、無料でたくさんの曲が聞けるわけですから。

 一度便利な状況に慣れてしまうと、前に戻るのは難しいもの。音楽ストリーミングも、恐らくは不可逆なものでしょう。そうであれば、音楽をビジネスとして成り立たせるために、ミュージシャンや音楽業界は新たなる方法を模索する必要があります。音楽ストリーミングでは、すでに再生回数に応じて収益を分配する仕組みを取り入れています。現時点では、それほど高い利益を生み出していないともいわれますが、今後のユーザ数の増加により、市場としての拡大が見込まれています。

 具体的な数値については、音楽ビジネス、及びストリーミングサービスに草創期から携わっていらっしゃる、榎本幹朗さんが詳細に分析されています。こちらをご参照ください。

音楽業界のこれからのビジネスモデル

 アメリカの人気歌手、テイラー・スウィフトさんは、「自分の楽曲をタダで配信されたくない」とし、Spotifyからすべての音源を引き上げました。また彼女以外にも、いまだにSpotifyへの楽曲提供を拒む大物ミュージシャンは多数存在します。理由は、前述で触れた通り、「音楽を無料で消費できる」という点に納得がいかないからだといわれます(実際には、非課金ユーザに表示される広告収入が分配されますが、無料で音楽を消費できる点は変わらず、そこを許容できないという主張です)。

 しかし、彼女を含めた多くのミュージシャンは、YouTubeなどでは無料でシングル曲を配信しています。これはなぜでしょうか?

 一見矛盾しているようにも見えるこの戦略ですが、実際には、シングル曲を「入り口」としてアルバムを購入させ、最終的にはライブに足を運ばせることで収益を生み出そうとしています。これからの音楽業界のビジネスモデルのひとつの解でしょう。

 一方で、音楽ストリーミングがもたらす分配金もまた、大きな流れのひとつとなっていくのではないでしょうか。利用ユーザが増えることで、ビジネスとしてのスケールも大きくなるでしょうし、CDが売れない時代、特に新人ミュージシャンが表に出てくる場所として、ストリーミングサービスのような新機軸が存在することも意味があるといえます。

 しばらくは、ミュージシャンにとって冬の時代が続くかもしれませんが、ミュージシャンが変化に対応し、音楽ストリーミングが普及することにより、その雪解けは近くなるのではないかと個人的には思います。

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この記事の著者

渡邊 徹則(ワタナベ テツノリ)

株式会社Version7代表取締役。Web・コンテンツ制作、分析、マーケティングなどを手掛ける。
執筆業では、主にソーシャル、EC、海外サービス、メディアなどが専門。
会社概要 - seven@ver7.jp - Twitter/Facebook @brigate7

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/02/03 10:00 https://markezine.jp/article/detail/23774

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