中立的なトータルサポートが強み
2000年に創業したマイクロウェーブは、Webサイトの制作はもちろん、フィーチャーフォンの時代を経て、最近ではスマートフォンアプリも含め、デジタル戦略の立案から開発・構築・運用までトータルで支援している。中でも山林氏と八木氏が所属するマーケティング事業部は、制作のみならず、そのサイトがどうあるべきか、どのターゲットを狙うべきかという部分から、実際に成果を上げるためにツールを使ってデータを分析し、そこから新たな施策を提案・実行する役割までを担っている。
山林:我々の特徴は、コンサルティングだけでなく、その後の施策の実行や運用まで、すべて行っている点です。業界では二極化が進んでいて、コンサルティングなどの上流工程を追究していく企業と、クリエイティブや開発などの制作技術を追求していく企業が多いと思っています。
――御社はその両方の機能を兼ね備えていると。
山林:そうです。上流工程に特化すると、どんどん新しい技術が生まれてくるデジタル領域において通用しなくなり、制作のみに特化しても、成果の出ないものを生み出したり、価格競争に陥っていくばかりです。両方の機能を兼ね備えているからこそ、費用対効果まで考えた上で、現実的で最適な施策の提案ができると考えています。
――総合的に提案することが、貴社にとっても、クライアントにとっても良いということですね。
山林:おっしゃる通りです。またそのWin-Winの関係をより強固にするために弊社で大事にしているのが、ベンダーフリーという立ち位置です。表立ってベンダーのツールを担ぐと、その中でできる範囲のことしか提案できなくなってしまいます。そうではなく、顧客ファーストで一番いい方法をご提案していくのが、我々の使命だと感じています。
プラットフォームとしての魅力
――では、「Microsoft Azure」(以下、Azure)に関しても、パートナーでありながら中立的な目線で見ているのですね。
山林:はい。ただ、中立的な目線で見てもAzureはインフラとしての側面、デジタルマーケティングのプラットフォームとしての側面それぞれに強みを持っているので、いろんな顧客ニーズに対応しやすいのが正直なところですね。
――具体的な事例はありますか。
山林:例えば、アプリを作りたい、プッシュ通知も配信したいというニーズを持つ企業がいました。今まではそういった場合、すべて一からプログラムを書いて構築していました。そこにAzureを導入したところ、すでにプラットフォーム上に用意されたアプリ群を組み合わせることで、低価格・短納期での制作が可能になりました。
また、新たに施策を行う際も、1つのプラットフォーム上に様々な機能が追加されているので、新たなツールを導入しなくても完結できます。これはAzureの強みの一つだと思っています。
――Azureのインフラとしての強みとはどういった点ですか。
山林:Azureはインフラとして、とても魅力的です。特に魅力を感じる点は、災害時などの冗長化が驚くほど低価格で構築・運用できる点です。
弊社のお客様の中でも、いまだに自社でサーバーを組んでいる会社や、冗長化されていないレンタルサーバーを借りて、運用している企業が非常に多いです。震災以降、基幹システムなどにおいて災害時対策で地域を分けた冗長化が進みましたが、Webサイトではまだまだという状況です。
例えば、東日本、西日本にサーバーを置いて、どちらかが災害で使えなくなってしまった場合、もう片方へ切り替えるといったディザスタリカバリ構成は、一昔前に実現しようとすると初期構築で数百万から数千万。運用コストも数百万かかるような時もありました。Azureの場合、その10分の1程度の費用で構築・運用が可能となります。
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事前の設計に基づいて自動アップデート
――先ほどはインフラ面での話が主でしたが、マーケティングのプラットフォームとしてはどうでしょうか。
八木:特に機械学習を簡単に利用できる「Azure Machine Learning」(以下、Azure ML)は魅力的な機能ですね。達成したいKPIや分析すべきデータの設計を事前に行えば、設計したルールに基づき分析や施策にアップデートを自動的に行えますからね。
ある教育会社でWebサイトの改修を行う際、現状分析でユーザーは大きく3パターンに分けられることが判明しました。そこで3パターンのユーザーにあったシナリオを設計して、アプローチしたところ、CVRを2倍まで引き上げることに成功したんです。
ただ、セグメントの切り方やアプローチの方法は、新たに溜まっていくデータとともに常に変化させる必要があります。これを人力で行うと、再び同じようにクラスタ分析やそれに基づく施策の設計をしなければなりません。
そこで事前のKPIなどをきちんと設計した上でAzure MLを導入しました。そうすることで、データが蓄積される毎にセグメントや行うべきアプローチが日々アップデートされるため、高いCVRを維持し続けることができます。
今流行のマーケティングオートメーション(MA)も一般的には年に1回といったペースでクラスタ分析を行いセグメントの切り方を見直していかなければなりません。しかし、Azure MLはそれさえも自動化することが可能なツールとなっており、MAの効果をさらに高められる存在になると思っています。
レコメンドでも大きく力を発揮するAzure ML
――他にAzure MLが使われるシーンはありますか。
八木:例えばレコメンドとして活用するのは有効だと思います。昨今は「この商品を買った人はこの商品も買っています」「このページを見た人はこのページも見ています」という協調フィルタリングによるレコメンドシステムがメインになっています。
売上の最大化を目的と考えた際、買いやすいものをレコメンドするのはもちろん重要です。しかし、よりあるべき姿として考えられるのが、LTVを最大化できる商品のレコメンドです。商品Aを買うのと最も同時に買われやすいのは商品Bだが、商品Aと商品Cを同時に買った人の方が1年後のLTVが高いとなれば、商品Cをレコメンドするべきなのです。この考えを実現するのがAzure MLなのです。
また、最近では、サイト上での行動ログ(閲覧ページや購入商品)以外の属性を使ったレコメンド要望もよくあがってきます。製薬会社の医師向け会員サイトで10,000ほどあるコンテンツのレコメンドをする際に、Azure MLを活用した事例があります。
年齢や開業医・勤務医、診療科などの属性を組み合わせ、各属性の重み付けなどレコメンドにおける最適解を見つけるには、人力だと毎回分析や設定に大きな労力が発生してしまいます。そこでAzure MLを活用することで、より最適な属性の組合せや重み付けを見つけることができ、効果の高いコンテンツを自動でレコメンドする仕組みを作ることができました。
――Azure MLの事例を聞くと、事前の設計が重要なようですね。
八木:重要であり、顧客が一番つまずく部分でもあります。「ルールの作り方がわからない」から始まり、「どのセグメントで分類するのか」「どうPDCAが回る仕組みを作るか」などに頭を悩ませる企業様が多いので、弊社がそこを明確にするためのサポートに入るケースが多いですね。
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目的とリスクを踏まえた費用対効果の予測が重要
――八木さんは普段、制作の前段階のコンサルティングをご担当されていると聞いていますが、コンサルティングを行う際に、気をつけていることはありますか?
八木:クライアントから施策ベースの要望、「SEOがやりたい」「Facebookを始めたい」といったご要望をいただくケースが多くあります。ただ、重要なのは目的を達成することなので、目的に対し最適でないと判断した場合には、他の手法を提案します。
――手法ありきではダメだということですね。
八木:そうです。また、もうひとつポイントがあります。当たり前のことではありますが、提案する各施策の費用対効果を考え、実施の優先順位を決めることです。クラスタ分析やカスタマージャーニーマップなど上流のコンサルティングを行うことでWebサイトのあるべき姿は見えてきます。それと同時に多数のやるべき施策が上がってきます。それに対し、まずは、ビジネスインパクトの強いものから選定するのですが、同時に、それを行うためのコストと実現性を検討する必要があります。
Webサイトの裏側に基幹のシステムなどとつながった複雑なシステムが絡んでいる場合、もしくは厳重なセキュリティ要件で構築されたシステムの場合、レイアウトをひとつ変えるにも莫大なコストがかかってしまうケースもあります。弊社はWebの具体的な制作やシステム開発も行っていることから、そのあたりもイメージしやすく、各施策の実現性含め考慮し提案するようにしています。
インフラからマーティングプラットフォームへ
――Azure ML以外で魅力的だと思う機能はありますか?
山林:最近リリースされた「Mobile Engagement」という機能がとても良いですね。アプリで取得したデータをもとに行動分析が行えたり、ユーザーセグメント毎に最適化されたプッシュ通知が行えたりします。
一言でまとめると簡単そうに聞こえるかもしれませんが、セグメント毎のプッシュ通知ひとつをとっても、実装するには相当な工数と費用がかかります。それがAzureのアプリケーションとして提供されるのは、構築側にとってもクライアントにとっても、非常に嬉しいことではないでしょうか。
――Azureは非エンジニアでも扱える機能が多いとのことですが、実際御社では非エンジニアの方もAzureを触ることがありますか。
山林:はい。もちろんデータベース周りの設計などエンジニアが行う部分もあります。ただ、溜まったデータを他のアプリケーションと連携させたり、分析に必要なデータを抽出したりといったことは我々もやっています。多少試行錯誤が必要なこともありますけどね。
――最後に、今後どのように、クライアントへAzureを提供していきたいですか?
山林:デジタルプラットフォームとしての価値はもちろん、その前にインフラとしての価値も非常に高いので、取り急ぎインフラ基盤として導入して間違いないものだと思います。運用を始めてから、徐々にAzureの多彩な機能を使っていくことで、いつの間にかマーケティングプラットフォームとして活用していたという風になっていくと思います。
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