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ディープラーニングって何?人工知能ブームに火をつけたアルゴリズムをどう捉えるべきか

 マーケター向けに、マーケティング分野における人工知能(AI)の活用について解説する本連載。第3回は人工知能ブームを引き起こした「ディープラーニング(深層学習)」について少し深掘りし、取り組むうえで重要な要素を考える。

「弱い人工知能」の具体的事例

 今回は、すでに実現されている人工知能(AI)について当社事例をもとに紹介し、さらに昨今の人工知能ブームを引き起こした「ディープラーニング(深層学習)」について少し深堀りして説明する。そのうえで今後、人工知能やディープラーニング、あるいはビッグデータ活用に取り組んでいくうえで重要な要素は何かを考えたい。

 第1回で言及したように、弱い人工知能とは「人間の知能の代わりを一部する機械」のことだ。当社のサービスを例に挙げると、DMP「AudienceOne」に搭載されているオーディエンス拡張機能を使い、DSP「MarketOne」で効率的な広告配信を行っている。これは、「効率的に集客するために、誰に広告配信するかを決めて、実際に広告を配信する」作業を人の代わりに機械がやっているのだ。

 オーディエンス拡張の場合は、例えば「自社商品購入者の行動傾向」を、機械学習を用いてモデル化し、そのモデルを適用してスコアの高い人、すなわち「購入者と行動傾向が似ている人」に対して広告配信を行う。この一連の作業を人手でやるのは現実的ではないし、機械がやったほうが精度も高く処理も速い。(オーディエンス拡張の詳細については、こちらの記事を参照していただきたい。)

 さらに、近い将来には「オーディエンス拡張の効果がどうもイマイチなようだ」という場合にそれを自動的に認知・判断して予算を他の配信方法に配分し直す、といった機能も提供する予定だ。これも「広告予算の再配分」という作業を人間の代わりに機械が行う、人工知能の1つといえる。

 当社に限らず、ビッグデータを有効に活用している企業においては、その具体的な成果物として「弱い人工知能」が実現されている事例は多いだろう(それを「人工知能」「AI」と銘打っているかどうかは別として)。

ニューラルネットワークとディープラーニング

 前述のとおり、人工知能はすでに実現されている中で、ディープラーニングが一気に人工知能ブームに火をつけた。このディープラーニングが生まれた背景と、その特徴を説明したい。

 ディープラーニングはニューラルネットワークというアルゴリズムから発展して生まれた。ニューラルネットワークは脳神経の構造を模して研究されたアルゴリズムである。つまり、多数のニューロンが結合し合うネットワーク構造を形成して、その結合部分であるシナプスが一定以上の強さの信号を受けるとニューロンからニューロンへ情報を伝達する、という仕組みだ。ニューラルネットワークを多層化することで、より複雑な特徴量(※1)の表現と計算を可能にしたものがディープラーニングなのだ。

 多層化による勾配消失(※2)とオーバーフィッティング(※3)の問題があったが、近年、アルゴリズムの改良とデータ量の増大、そして膨大なデータを処理できる計算装置(コンピュータ)の爆発的な性能向上によって問題が解消されてきた。

※1 特徴量:そのデータが持つ特徴を数値化または数式化したもの。例えば画像であれば色、輝度、被写体の形状や大きさ、頂点の位置や配置など、「その画像に何が写っているか」を判定するために必要となるだろう要素はすべて特徴であり、それを数値化したものが特徴量。

※2 勾配消失問題:ディープラーニングによる判別結果と正解データの誤差を、出力層側から入力層側に向かって伝播して、パラメータを変化させることで精度を上げていく(誤差逆伝播法またはバック・プロパゲーションという)際、複数の層を伝播していく過程で誤差情報が消失してしまう現象。自己符号化器による事前学習で初期値設定することで解消された。

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※3 オーバーフィッティング:多層化によって複雑な事象をモデル化できるが、一方でデータが小さいと学習データに含まれる個々の事象を抽象化することなくそのまま表現できてしまう。このような状態だと、学習データに存在しない新たな事象にはフィットせず、モデルとして機能しない。これをオーバーフィッティングまたは過学習という。

 なお、ディープラーニングとはニューラルネットワークを多層化した手法全般を指す総称であって、実際には複数の手法が提案・研究、あるいは活用されている。ディープラーニングの事例で見られる手法を以下に挙げよう。

 これらの名称が出てきたらディープラーニングの話題だな、と思っていいだろう。また、上記以外に最近ではDeep Q-Network(DQN)という、強化学習にディープラーニングを活用した手法も目にするようになった。DQNは囲碁やゲームなどのプレイ・攻略法の探索などの事例が見られる。

 このディープラーニングは、特定の領域では突出して高性能である(特定の領域については後述)。突出した高性能が実現することは、「これまで実現できていたことを、さらに高精度にする」だけではない。いままで実用レベルではなかった領域が一気に実用レベルに達する、つまり既存技術では不可能だった領域で人工知能を実現することが可能になる。ディープラーニングが人工知能ブームに火をつけたことによって、人工知能の実用化を推進する人も急増するだろう。


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