データを使ってどのように意思決定をするか
一口に「データを使った意思決定」とはいっても、それを実践するのはなかなか難しい。これを実践する企業として、菅原氏が紹介したのが米国のゲーム会社、アクティビジョン社だ。ゲームという商材の特性上、開発から供給、売上計上や管理まで、デジタル化しやすいという特性がある。そのため、あらゆる意思決定でデータを活用することが当たり前になっているという。
たとえば来期のゲーム開発の戦略やスケジュールも、データに基づいて立案する。そのためにどういう人材が必要になるかも分析する。設定すべきKPIも、データを基に弾き出す。
菅原氏は、「これはかなり特殊な例ですが、すべてがデジタル化されている企業であれば、データを統合してダッシュボードで表示し、裏側でAIとつなげることで、意思決定のプロセスを高速化できます。すでにそういう時代は来ています」という。
ポイントとなるのは、経営層やマネージャーなどそれぞれの役職に限定したデータや分析画面を使うのではなく、統合した視点を持つこと。アクティビジョン社の例でいえば、来期の商品開発は、人材採用にも関係するし、そのスケジュールは販促・宣伝、営業活動の進め方にも影響がある。
「CEO、CIO、そしてCMOという経営層は、データを使って意思決定をどうするかという共通テーマがあります。DDM実践の経営課題は、こうしたさまざまな視点のデータをいかに統合するかということなのです」(菅原氏)
DMPはなぜ必要なのか
では、さまざまなデータをいかに、どうやって統合すれば良いのだろうか。
現在、その手段として活用が進んでいるのがDMP(Data Management Platform)だ。DMPとは、Webやメールのログ、属性など、ありとあらゆるデータが集約された基盤で、広告配信プラットフォームとセットで使われることが多く、自社内のCRMを統合した「プライベートDMP」もある。こうしてあらゆるデータを集約することで、分析手法も使えるデータの幅も、飛躍的に広がる。そのため、より詳細なターゲット層が得られるのだ。
たとえば検索エンジンでは、ユーザーの検索履歴を基にある程度の年代や性別を類推できる。広告を配信する際も、このターゲット層に基づいて配信する。だが、検索エンジンだけではこのターゲット層の推測に限界があるという。自社の顧客属性や、セグメント別の購入履歴などの情報があれば、より詳細なターゲティングができるのだ。

仮にひとりの人間に対して、「30代・男性」という分析結果と、「39歳・男性・渋谷区在住・既婚・アプリの使用頻度が高く、ネット決済に抵抗がない」という分析結果の2つがある場合、より効果が高い広告戦略が可能なのは、もちろん後者だ。そのほかにも、反応したクリエイティブの種類やメッセージの内容などの要素が絡めば、そのユーザーがどんなニーズを持っているのかも把握できる。菅原氏は「こうしたデータを、すべてDMPに集約することで、より戦略的な広告投資ができます」と説明する。