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SAPが語るビジネス変革とマーケティング(AD)

目覚ましいスピードで破壊的なイノベーションが起こる今、何をすべきか? SAPが示すデジタル時代の戦略

 2016年6月30日、日本では初となる「SAP Hybris Summit 2016」が東京・日本橋で開催された。SAP Hybrisは、オムニチャネル・コマース・ソリューションのフロントランナーであり、デジタルによるビジネスおよびマーケティング改革を長年支援してきた実績を持つ。そんなSAP Hybrisの国内初イベントのゼネラルセッションのテーマは、「Beyond Digitalization(デジタル化の先に何があるのか)」。果たしてビジネスにおける「Beyond Digitalization」とはどういうことなのか、SAPジャパン 馬場渉氏と、阿部匠氏が解説した。

世界の変化スピードをどれだけ認識できているか

 ビジネス系記事の中で散見される紋切り型の表現に、「ビジネス環境の変化スピードは、年々速くなっている」というものがある。ほとんどのビジネスマンは、この表現を見ると「そんなことはわかっている」「当たり前だ」と思うはずだ。

 では、その変化スピードを、当事者としてどこまで認識できているのか? こう疑問を呈するのは、SAPジャパン バイスプレジデント・チーフイノベーションオフィサー 馬場渉氏だ。

 SAPジャパン バイスプレジデント・チーフイノベーションオフィサー 馬場渉氏
SAPジャパン バイスプレジデント・チーフイノベーションオフィサー 馬場渉氏

 「たとえばサッカーや野球のようなスポーツでも、変化の波は起きています。野球の場合、1990年代は日本もメジャーリーグも共に1000億円規模だったのですが、今やメジャーは1兆円規模の巨大ビジネスにまで成長しています。知らないうちにこれだけの差がついてしまった。ビジネスでは、さらに差がついています」(馬場氏)

 実際、Fortune500に取り上げられる日本企業の数は、約20年にわたり減り続けており、現在は54社ほどとなっている。代わりに台頭しているのが中国企業だ。その数は98社で、日本企業のほぼ倍となっている。

 IT業界はさらに変化が激しい。設立して約12年のFacebookは2兆円企業となり、2000年当時は存続すら危ぶまれたアマゾンが、日本国内だけで1兆円規模の売上を達成するに至っている。

 馬場氏は「こうした新しい企業がこれだけ伸びたということは、相対的にどこかのシェアを奪っているからです。今や日本企業は、この“差”を意識しないと、奪われる立場にあるのです」という。

デジタル化は業種・業態の垣根をなくす

 どうすればこの“差”を解消できるのか。「スピードに追随するために、デジタル化を進めよう」という方向は、間違っていないが、“正しいもの”とは限らない。なぜなら、リアル店舗の代わりにECサイトを構築したり、スマホ対応をしたりすることが「デジタル化」ではないからだ。

 デジタル化を進めるというのならば、デジタル化の本質を知る必要がある。

 馬場氏は、「今やさまざまな業種・業態でデジタル化が進み、その垣根はなくなりつつあります」という。その一例として挙げたのが、農業だ。

 かつて農業といえば、生産から出荷までのプロセスにおいて、農機や農薬、種・苗の開発業者、卸業などが関わるスタイルが一般的だった。ところが今の技術を使えば、オープンデータを活用して天候予測の精度を上げ、農作業のスケジュールを組むことができる。そのスケジュールを農機が受け取り、人間の基本的なオペレーションだけで農作業を完了することも可能だ。

 どの農作地に、どんな作物を植えれば、収穫量がどれだけ見込めるかもわかる。万が一、収穫量が予想以下だった場合、損失を補填する保険業があればいい。つまり、もはやこれまでの競合企業だけでなく、まったく別業種の企業と競争することもあり得るわけだ。

 「これまで直接農業と関係なかった企業も、データやネットワークでつながることで付加価値を生む状態です。もはや、総合格闘技戦といえるでしょう」(馬場氏)

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デジタル化時代を勝ち抜くポイントは顧客と常につなった上で付加価値を提供すること

 今や「デジタル化」とは、さまざまな業種、業態がテクノロジーを活用して、まったく別の分野に参入し、新しい付加価値を提供することを意味する。そんな混沌とした中、先行企業との差を縮めるために何が必要なのか。

 この問いに対し、馬場氏は「勝ちの条件とは、顧客と常につながる環境を構築することです」と説明する。これまでは、生産/製造から顧客まで、それぞれの分野を得意とする企業でバリューチェーンが組まれていた。このバリューチェーンをスキップするのが、テクノロジーの力だ。

 たとえば、コーヒーマシンのネスプレッソを提供するネスレは、日本市場をモデルケースとして新たに「ネスレ ウェルネス」という健康サービスを開始した。これは、コーヒーカプセルではなく健康飲料カプセルが届くサービスで、飲んだ後の体調変化に加え、普段の食生活や体重などのヘルスデータをネスレに送信し、より調子に合ったカプセルのレコメンドを受けて健康寿命を延ばすというもの。

ネスレ ウェルネスのサービス
ネスレ ウェルネスのサービス

 馬場氏は「まずコーヒーで顧客とのダイレクトルートを作り、その上に“健康”という新たな付加価値を提供する。『エンドユーザーを握った者勝ち』で、デジタルで顧客とつながり、そこでどのような付加価値を提供するかという、デザイン思考が問われているのです」と語り、デジタル化時代を勝ち抜くポイントを明らかにした。

デジタル変革の5つのパターン

 続いて登場したSAPジャパン SAP Hybris ソリューション事業本部 ソリューション エンジニアリング ディレクター 阿部匠氏は、馬場氏が明らかにした「Beyond Digitalization」をさらに深掘りする。

 SAPジャパン SAP Hybris ソリューション事業本部 ソリューション エンジニアリング ディレクター 阿部匠氏
SAPジャパン SAP Hybris ソリューション事業本部 ソリューション エンジニアリング ディレクター 阿部匠氏

 阿部氏は「デジタル化とは、マーケティングが便利になったり、お客様とつながったりという側面のほか、もっと大きな意味があります。それは、ビジネスモデルを変える/破壊するということで、つまりは業界を破壊する、またはビジネスモデル自体が変化することです」と語り、その変化には次の5つのパターンがあると紹介した。

  1. エコシステムを構築して戦う
  2. 資産の共有コミュニティによる新ビジネスモデル
  3. 商品・サービスのデジタル化
  4. ITビジネス基盤確立による新たな顧客接点の創造-
  5. 成果に基づくビジネス

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4つの事例から見る「デジタル化の本質」

 続いて、阿部氏は5つのポイントをそれぞれ押さえた4つの先進事例を紹介した。1つ目のエコシステムとは、異業種同士をデジタルで融合することで新たな価値を提供し、相互にカスタマーエンゲージメントを高め合うものだ。一例を挙げると、定額制音楽サービスSpotifyとスターバックスの取り組みがある。

 これはスターバックス店内でSpotifyアプリを起動すると、今流れている曲をお気に入りリストに登録したり、またはリクエストを出したりできるというもの。音楽そのものと、それを聴く環境を組み合わせた新たなサービスを実現している。

 2つ目のパターンの事例で有名なものは、Uberだ。これは輸送手段という資産をデジタルで共有化することで、輸送やロジスティクスのビジネスモデルに変革を起こすというもの。

 3つ目の商品・サービスのデジタル化でいえば、国際配送サービスUPSが自社拠点に3Dプリンタを設置して、メーカーが発注した試作品を迅速に届ける取り組みが挙げられる。今やデータさえあれば製品を提供することさえ可能なのだ。

 4つ目のITビジネス基盤確立による顧客接点の創造は、法律改正(自由化)による新規事業者の市場参入や、5つ目の成果に基づくビジネスは、IoTの仕組みを生かし機器を使用した分だけの代金を受け取る建設機器大手・コマツの取り組みが挙げられる。

 これらに共通するポイントは何か。阿部氏は「すでに存在する技術、珍しくない技術を組み合わせることでイノベーションを生み出しているのです」と指摘する。デジタル化とは、こうした取り組みすべてを含めたことを指すのだ。

デザインシンキングから具現化へ

 こうして考えると、デジタル化以前・以降の最大の違いは、「バリューチェーンの中で、各業種・業態の住み分けができているかどうか」ということが見えてくる。デジタルの力は、このバリューチェーンをスキップし、時には壊して、新たな価値をエンドユーザーにもたらすことにある。

 阿部氏によると、現在経営者の60%ほどが、デジタル化を「脅威」と捉えているという。その理由は「破壊力」と「スピード」だ。バリューチェーンをゼロリセットしてしまう「破壊力」は前述のとおりだが、阿部氏は同時に「スピード」を強調する。アマゾンが世界トップレベルの小売店になるまでに5年、アップルが世界を買えるのに3年、Uberが北米No1のタクシー会社になるまでに1年。人や物理的なモノはコピーするのに時間を要するが、デジタルつまりITの成功モデルを発見した後の展開のスピードは、比較にならないほど早いことは既に世界中で実証されている。

 「テクノロジーの要素技術は、SAP Hybrisを含めて、もう揃っているのです。そこで一歩先に進むためには、自分たちのビジネスにおける強みを理解し、最適な技術を組み合わせて新たなチャレンジをしなくてはいけません」(阿部氏)

 そこで日本企業のチャレンジになるのが、社内コンセンサスの醸成だ。従来の日本企業の強みであるボトムアップ型意思決定、すり合わせ型コミュニケーションによる高い品質、トップダウン型意思決定による迅速な意思決定を融合させ、そこに最新のテクノロジーの有効活用をミックスした進め方を、阿部氏は提案する。

 SAPは、SAP Hybrisというビジネスソリューションをプラットフォームに加え、新たな価値創造に向けた3ステップのコンサルティングを提供している。それが、既存モデルにとらわれずに新しい発想を磨く「デザインシンキング」、出てきたアイディアをIT/ビジネスのアーキテクチャに落とし込む「エンビジョンワークショップ」、そして、それを短期間で具現化することを繰り返す「プロトタイピング」だ。

 この3ステップは、ツールとしてデジタルを導入するのではなく、競争を勝ち抜くデジタルイノベーションには欠かせないステップといえる。今後、ますます複雑化するデジタル時代において、コアコンピテンスを生かしつつ勝ち抜くビジネスをデザインできるか。これが最も重要なポイントだ。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2016/09/15 16:09 https://markezine.jp/article/detail/24780