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「あのキャンペーン」の担当者に直撃!

サンスターとPARTYが提案する歯磨き体験、スマート歯ブラシ「G・U・M PLAY」が目指すもの

普及を前提に考えると、電動歯ブラシよりもアタッチメント型

MZ:実際に世に出た商品は歯ブラシにジョイントして、データをとってアプリと連動させる、というアウトプットになりました。どうしてこの形になったのでしょう?

田中:当社が“体験”を大切にしていることもあり、歯ブラシの動きで何かが動くという方式は視覚的にもわかりやすく、子供にも有効だと考えました。ですから、データを活用してアプリを動かす案はわりと最初から出ていました。形状に関しては議論しましたね。

 電動歯ブラシに機能を追加したほうが技術的には、より簡単に実現できます。ですが、これだと高価になりますし、いちいち充電も必要になります。そこで、普通の歯ブラシにアタッチメントをつける方向になりました。これなら、歯磨きに対してもともと意識の高い方などに限らず、多くの方に使っていただけますから。

松富:実際、日本の電動歯ブラシの市場は構成比で約15%程度です。私たちは、みなさんのオーラルケアの意識を変えたいと考えているため、普及することが大前提。アタッチメント型がベストだと判断しました。

田中:加えて、アタッチメントならばカラーバリエーションが用意できます。デザイン的にも自分の洗面台に置いておきたいモノにできる点も狙いですね。

MZ:アタッチメント型ならば、歯ブラシを入れ替えるだけで済むので、歯ブラシの売上にも貢献しそうですね。

松富:そうですね。今、日本人の1年間の歯ブラシの平均使用本数は2.6本です。しかし歯ブラシは1か月使うと毛先も開きますし、摩耗して除去率が落ちるので、毎月取り替えるのが望ましいんです。そのため、アプリには歯ブラシ取り替え通知という機能も設けています。

ウケるものは企画書では伝わらない、プロトタイプをどんどん作った

MZ:サンスターのような有名企業がIoTデバイスを一般の方へ提供する事例は、現時点では非常に少ないと思います。このような新しい挑戦に、社内で反対はありませんでしたか?

松富:どの企業でもそうだと思いますが、やはり新しいことを始めるときに反対意見はつきものです。G・U・M PLAYも、当初は反対が多かった点は否めません。そもそも、スマホを使わないから理解できないという声や、サンスターがオモチャを作るのか、ブランドのイメージと合うのか、子供が夢中になるあまり喉を突いてクレームが来るんじゃないか、など様々な議論がありました。

 最終的には、IoTはただの手段であって、お客様の課題解決につながるということ、ビジネス的な拡大性が見込めるという2軸で説得していきました。また、実際に使ってみないとわからないと思い、プロトタイプを何度も作って、社内関係者に体験してもらいました。物事が簡単に進んだというと嘘になりますが、反対意見に気づかされることも多く、G・U・M PLAYを実現するプロセスとして考えると有意義でしたね。

田中:今の時代にウケるものは、パワーポイントのような企画書ではわからないものばかり。だからプロトタイプを作ることは重要です。じゃないと、面白さは絶対伝わらない。今回も、松富さんが社内で受けた意見はすぐにプロトタイプに反映して、バージョンアップさせたものを「はい、これ持って行ってください!」と渡していましたね(笑)。

松富:アップデートのスピードがすごいんですよ。時にはプレゼンの直前までちゃんと動いていたのに、いざ本番になると動かないという冷や汗もののシーンもありました(笑)。それでも、あきらめずにやったのが良かった。

G・U・M PLAYで譲らなかったもの・意見を取り入れたこと

MZ:お話からは、当初のG・U・M PLAYの構想から多くの変更や調整が加えられたことがわかります。反対に、一貫して譲らなかった部分はありますか?

松富:二つあります。一つは楽しさです。“やらなくちゃ”から“やりたい”に変えるためには、楽しくないと継続できないし行動もできません。もう一つが正しい歯磨きを身につけられること。単純に楽しいだけでは、サンスターが取り組む意味がありませんから。そのために、アプリ製作の際には何人もの歯科衛生士さんの歯磨きデータを何度も抽出して、正しい磨き方がどのようなものか検討しました。

様々なアプリが用意されている
様々なアプリが用意されている

田中:みなさん、それぞれ磨き方は正しいけれど、個性があるんです。そこを一般化させるのに時間をかけましたね。

松富:年代によっても磨き方が違うんですよ。20代の方はものすごく小刻みにブラシを動かしていて、40代の方は少しゆっくりと、という具合。その平均をとって基準を作り、それでいいのかを歯科衛生士さんに確認してもらって、を繰り返しました。さらに、子供は大人と磨き方が違うので、実際に子供たちに体験してもらう機会を作って、実際に使っているシーンもデータをとりました。

田中:その際に、あるお子さんがG・U・M PLAYを使った後に「ママ、本当にこんなのがあったらいいね」って言ってくれたときは、ちょっと泣きそうになりましたね。いいものを作ってるなって(笑)。

MZ:ほしいと思ってもらえるものを作る、というのはクリエイター・マーケター冥利につきますね。では、当初の予定と大きく変えた部分はありますか?

松富:アラート機能を追加しました。例えば子供が喉を突かないように、強く磨きすぎると“もっとやさしく磨いて”とアラートが出ます。

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販売数は目標の150%を推移、ブランド育成を重視した販売方法を

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター
出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/10/07 10:00 https://markezine.jp/article/detail/25274

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