発端は、ダイレクトマーケティングの世界で得た危機感
押久保:本松さんは、ADKに入社される前に銀行、コンサルティング会社を渡り歩いてきた、異色の経歴の持ち主です。ADKに転職されてからは、ダイレクトマーケティング案件で大手クライアントを数々ご担当されながら、グロースハック・プランニング室の室長を務められ、2016年からは第5デジタルプランニング局 局長となられています。その中で、アブソルートワンの設立。なぜ、今回のタイミングで新会社を設立することになったのでしょうか。
本松:私がADKに入社したのが2006年です。実は入社当初から、アブソルートワンのような組織の必要性をずっと感じていました。対外的にも必要だと言い出したのが2012年。元々は、ADKの九州支社でダイレクトマーケティングに関わってきたことがきっかけです。
当時、ダイレクトマーケティングの世界で投資対効果をシビアに見られつつも、大きな成果へと繋がる案件に関わってきました。一方で、その当時はメディア取引量という、広告代理店ならではの強みでも案件を確保でき、その流れで様々なデジタルソリューションの提案にも関わることができました。しかし、今後はこうしたデジタルソリューションが常に提案できるような体制を、ADKとして持つべきではないか。組織として対策を講じておかないと、これからの時代に立ち行かないと思ったのです。
時代を見越したマーケティング体制を確立するために
押久保:特にその感覚が強くなってきたのが約8年前だったわけですね。
本松:広告会社の利益の源泉は媒体手数料ですが、当時は特にマス媒体が主流です。入社時の2006年は、マスと比べるとデジタル広告費は約10分の1、通販系でも最大に見積もって5分の1くらい。そうなると、メディアとの取り引き総量ばかりが判断材料になりがちで、テレビをやっていないクライアントは、敬遠されるような傾向がありました。
一方で、デジタルがもたらす価値や可能性は明らかで、メディアバイイング以外の作業に、もっと自覚的に目を向けないと、時代に置いていかれる。私の中で、こうした危機感がずっとくすぶっていました。広告という側面以上に運用面で、デジタルに求められることは計りしれないからです。
押久保:つまり、クライアントへの真の貢献を考えていくと、メディアバイイングを重視せざるをえない当時の体制では、対応しきれないと?
本松:おっしゃるとおりです。自社にノウハウを貯める必要がある。デジタルで知見を貯めていくための計測ツールを設定し、ツール経由でデータを分析したり、クリエイティブの価値を分解しながら再評価、最適化について追求したり。デジタル領域において、最高のマーケティングサービスを提供するための組織化が急務だと思ったのです。