初回調査で得られた示唆とは
最初の結果は、おおむねJALが予測していた内容を補強する結果であった。モバイルに特化した対応をするには、現段階では時期尚早であるという結論に至った。
「1度目は、まずは使ってみよう、という実態把握の段階でした。2014年当時、メルマガのモバイル利用比率が上がってきているのはサイト分析から類推できていたので、その裏づけになればと思っていました」(塚本氏)
また、塚本氏によれば、旅行や航空業界のメルマガは他の業界と比べ、エンゲージメントが比較的高いとされているという。実際に試した結果、他の統計値と比べても滞在時間が長く、それが証明できたことは大きいという。
同時に、スマートフォンやタブレットなどのモバイルによる閲覧比率が想像より高いという結果は出ながらも、根本的な改善が必要なほど割合を占めているわけではないことも判明した。
そこで同社は、2回目のサービス利用まで、やや期間を置くこととした。
「すでに無視できない数字にはなっていましたが、JALという企業規模全体で対応することを考えると、タイミングには注意を払いたい。今と違い、当時はまだモバイル決済を選択するお客さまは少数派で、メルマガの中身をしっかり読んでいただいている、JALからの情報に関心が高いお客さまはモバイルよりPCを優先的に利用していたデータも出ていたからです」(塚本氏)
「1回目の調査から、モバイルユーザーのエンゲージメントがPCより高いという結果は出ていましたが、費用対効果を考えると、この時点で一気にモバイル最適化を視野に入れた大きな改革を行うにはまだ早かった。ただ、こうした判断材料が見えてきて、今後を見据えたマーケティングプランが立てられるのも、開封エンゲージメントサービスならではの特徴です」(吉澤氏)
モバイル対応の改修を後押し
それから1年と9ヶ月。市場ではモバイルファーストという機運が熟しはじめ、2回目は年末を控えた2015年12月配信のメールで開封エンゲージメントサービスを利用した。すると、モバイルによる閲覧者が前回より10%以上も上昇する結果が出てきた。
「他にも、PCとモバイル両方を見て購入しているお客さまもかなりの割合で増えてきていることもわかってきていました。また、滞在時間をみても、PCよりモバイルユーザーのほうがエンゲージメントが高く、これからはモバイル対応も必要だろうという判断に至りました」(高山氏)
プロジェクトはいよいよ本格的な判断を下す時期となり、3回目の分析は、そのわずか3ヵ月後の2016年3月配信のメールで実施した。
「JALさんにとって、最もメルマガ利用の動きが活発となるこの時期に、再度分析を実施し、デバイス/キャリア別、エリア別などのセグメントに応じたクロス集計など、検証を深めていきました。結果は、2回目をさらに補強するデータばかりが集計されました」(小山氏)
「3回目では、さらに考察を深めるために、デバイスに応じてメールデザインを出し分けるクリエイティブのA/Bテストも実施しました。モバイルと特定できるお客さまに対して、モバイルファーストなデザインと従来のPCデザインで出し分けた結果、前者のエンゲージメントが高かったため、いよいよレスポンシブメールに対応する必然性がデータとして明確に揃ったのです」(吉澤氏)