30年後も売上維持するためにLTVを35%増やせるか
押久保:前回記事では、行動履歴をユーザー軸で捉えることの重要性について聞きました。今回はその延長線上の機能追加ということですが、まず今のマーケットおよび未来をどのように捉えているのか教えてください。ある講演で大局を見据えることで、企業の採るべきマーケティング戦略が見えてくると語られたと聞いています。
岩田:日本社会で進行している少子高齢化による人口減少と消費者ニーズの多様化を踏まえなければ、今後のデジタルマーケティング戦略を正しく組み立てることはできません。
押久保:人口減少とニーズの多様化が、今後のマーケティング戦略を考える鍵となるのですね。
岩田:はい。まずは人口減少のほうから説明しましょう。日本の人口は、2004年にピークの1億2,784万人を迎え、そこから劇的に下降曲線をたどっています。2050年には人口が25%ほど減少し、9515万人になる見通しです。
このように人口が減少すると、ライフタイムバリュー(LTV)を35%ほど増やさないと、現状の売上を維持できなくなります。飲食店を例として挙げると、これまで1日3食だったお客さんに、もう1食分を食べてもらわなければいけない――そんなのは無理ですよね(笑)。
押久保:なかなか厳しい現実ですね……。
岩田:若年層に限ると、もっと厳しくなります。LTV を2.2倍に増やさないと現状の売上を維持できないでしょう。
ニーズの多様化で縮小する市場がさらに分割
押久保:もう一つ、消費者ニーズの多様化という問題もあります。
岩田:人口の減少で市場全体が縮小するだけでなく、ニーズの多様化によって小さな市場がさらに分割されています。
企業は細分化された消費者それぞれに対して、細やかな対応を求められるでしょう。きめ細かなコミュニケーションを通じて、一人当たりのLTVを向上させなければならなくなります。しかも、多様化するのは消費者だけではありません。メディアも今以上に多様化していくでしょう。企業が消費者とコミュニケーションする手段は、ますます複雑になるはずです。
その上、人口減少にともなって企業側の人員も減っていきます。業務は増加・複雑化して、人員は減っていく。このままでは多くの企業が“消費者への対応難”に陥るのではないでしょうか。