人気の動画広告市場に生まれた、「新たなニーズ」とは
MarkeZine編集部(以下、MZ):田中さんは、今回独立して「Funnel1」というプラットフォームを立ち上げたそうですね。このコンセプトが、デジタルマーケティングベンダーの製品や事例情報を比較/検討できるプラットフォームだと聞きました。なぜ、こうしたプラットフォームが必要だったのでしょうか。
田中:前職のTeads Japanの代表をはじめ、これまでグローバルのデジタルマーケティング企業の立ち上げを4社経験してきましたが、どの在籍時代にも強く感じてきた需要をプラットフォーム化したのがFunnel1です。
広告主/ブランド側からは、頻繁に製品や事例を比較したいという問い合わせ、要望があるものです。もっと見やすく、きれいに整えた状態で、他社のサービスも含めて情報統合した場を作れば、比較検討に費やす時間を大幅に削減できると考えました。
田中:まずは動画広告ベンダーを対象にしたサイトを充実させています。今回同席していただいた2社には、具体的に構想を動かした初期から、折に触れてご相談させていただきました。
MZ:今回、なぜ八田さんと五十嵐さんにお越しいただいたかというと、立ち位置の異なる2社の視点から、現在の動画広告市場について見解をお聞きしたかったからです。「Funnel1」登場の背景には、どのようなニーズが広告市場にあるとお考えかを、お聞きしたいと思います。
動画広告の大きな課題、それは「配信先の最適化」
MZ:まず、動画広告ベンダー側から見て、最近の動画広告市場はどのような動きがあるとお考えでしょうか。
八田:2016年11月に発表された、動画広告市場の予測データによると(注)、動画広告市場の伸びが数倍規模で右肩上がりを示しています。2015年→2016年と調査されていますが、2020年の予測が約2,000億円から300億円も上方修正されている今、広告主と私達のような動画広告ベンダーが協力し合って、加速度的に市場を盛り上げていく取り組みが必要だと思います。
五十嵐:先ほどのデータから言えるのは、伸びを牽引している大部分がスマートフォンです。これからは、動画広告の主役が完全にスマートフォンになっていきます。弊社の場合、ブランド側の意向をくみ取りながら、プレミアムな媒体への出稿に強みを持つという特徴があります。逆に、ブランドの価値を高めるのにふさわしくないような媒体では、出稿を控える戦略をとります。そういう意味で、広告主の意向と私達動画プラットフォームの特徴が協調し合う体制づくりが、より最適化された動画広告の配信につながるのではと感じています。
八田:弊社の場合は、放送局の動画コンテンツ配信から事業が始まった経緯もあり、動画コンテンツを配信するプラットフォームはもちろん、かなり幅広い動画配信ソリューションがございます。そういう意味でも、各社の特徴のマッチングが課題と言えますね。特に今年は、動画広告市場はアウトストリームが伸びています。当社の実績においては、2015年まではインストリームの規模が大きかったのですが、直近の2016年実績ではインストリームは伸びつつも、アウトストリームが大きくなり規模でもインストリームを逆転しました。アウトストリームを提供している他社さんも大きく伸びたのではないでしょうか。つまり、コンテンツ内に入る広告より、テキスト記事しかないメディアに配信される動画広告の方が伸びているわけです。今までは限られた在庫であるインストリームが大きかったですが、テキスト記事だけのサイトでも動画広告が掲載できるようになったので、より「どこに載るか」は重要になってきますね。
こうした市場の推移を広告主さまが確認できるサービスがあれば、とも思っています。
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動画広告の最適化には、「戦略に合うベンダー選び」が不可欠
MZ:企業の戦略に合った動画広告の配信を行うために、広告主にとって必要なこととは何でしょうか。
八田:最近の動画広告市場の動きを見ていくと、広告主の方が「企業の戦略に合わせて、ソリューションを持つベンダーを選ぶ」ことが非常に重要です。例えば、「とにかく10億PVを出す」がKPIだとすると、媒体を選ばずに掲載するほうが安くなります。この場合は、媒体ごとのコンテンツを問わずに掲載することになりますが、ブランド側が出してほしくない媒体でも掲載されることがあります。ブランド戦略を行っている企業の場合は、配信単価は高くなってもプレミアムな面を指定する、など掲載面には注意すべきかもしれません。
五十嵐:そうですね、弊社が得意とするブランド広告というのは、企業の顔だったり、信念といったものを表現するものだと思います。そうした広告にふさわしいのは、例えば百貨店の入り口だったり、銀座四丁目というような、良い場所、つまり良いユーザーがいるような媒体に出すことが非常に重要です。ブランド戦略の一環としての動画広告では、プログラマティックでの配信よりも、媒体指定・ドメイン指定といった純広に近い形での動画広告の提供が必要になると思います。もちろん、プログラマティックでの配信もニーズはあると思いますので、あくまで弊社のような戦略の場合は、ということですが。
八田:そうですね。お話をお聞きしていると、やはり私達とCMerTVさんは、向いている方向が大きく違います。CMerTVさんは、各ブランド広告主の課題解決を得意とされていますが、はじめに述べたように弊社はもともと、放送局のコンテンツをネットで配信する仕組みをつくり、そこに広告ニーズがあったことから動画広告事業を開始しました。そのため、コンテンツ配信側がどんな広告主さま向けに動画広告を販売したいか、どんなメニューを配信したいか、をテクノロジーで解決していることが強みです。一見、広告主さまから見ると、CMerさんも当社も広告主さまとメディアを橋渡しした「プレミアム動画広告ネットワーク」になるので、似たように見えるかもしれませんが、アプローチは全く異なります。
五十嵐:私達の場合は、動画広告のコンテンツまで一緒に制作します。メディアに掲載したときに、スマートフォンユーザーに見てもらえる広告の仕組みまで、ブランド側と繰り返し協議しながら制作しています。そういう意味でも、スキルアップさんとはアプローチが異なります。こうした違いは、やはりプロダクトだけを見ていては判断が難しいところです。
広告主とベンダーの関係を、カイゼンする
MZ:動画広告をより効果的に配信し、企業のKPIにつなげるためには、具体的にはどのような解決策が考えられるでしょうか?
田中:先ほどのお話にありましたが、各ベンダーは、設立経緯や動画広告へのアプローチ、スタンス、強みはそれぞれ違っています。「動画広告専門ベンダー」とひとくくりにして、アウトプットだけを見たり、比較せずに言葉だけを聞けば、似ているように感じるかもしれませんが、実際は全く違っていたりするわけです。
MZ:今回、田中さんが開発されたFunnel1は、こうした広告主と動画広告ベンダーの関係性を最適化できるプラットフォームとお聞きしました。このFunnel1が、どのようなアプローチで両社の結びつきを改善していくのでしょうか。
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初面談のムダを省き、効率的に仕事が進められる
MZ:Funnel1のどのようなシステムが、広告主とベンダー双方の役に立つのでしょうか。
田中:まず、価格コムさんのように、簡単にベンダー製品や事例が比較できます。加えてBtoBでは、対応してもらえるベンダーの営業レベルがとても重要になるので、広告主がベンダーと実際にミーティングする前に、ベンダーからの営業提案レベルをチェックできる「営業セレクション」という機能がございます。
田中:ベンダーには、ソリューション毎に必要な比較項目に記入を頂きます。まず自社の特徴や強みについて、最大3点までをご記入いただきます。この欄だけでも、比較しながら各社の特徴や得手不得手がわかります。併せて、過去の実績についてデモURLを掲載することも可能です。
あとは、広告主からの要望に合わせ、ベンダー側から提案を記述していだきます。例えば、手短に記された要望があったとします。この短いテキストから、どれほどのことを推測してブランド側のニーズに応えた提案ができるのか。字数制限ギリギリまで熱い思いを伝えるのか、簡潔にやるべきことをリストアップするのか。書き方は各社のスタイルなどがあると思うので、各ベンダーに腕をふるっていただきたい箇所です。
MZ:それらを比較して見られると、各社の特徴だけでなく、自分たちのことをどれほど考えてくれているかも広告主には伝わってきますね。
田中:おっしゃる通りです。例えば、広告主が、A社の田中(笑)の提案を見て、どこにでも使っていそうな定型フォーマットを張りつけているな、と思えば、「ここは止めておこう」と思うかもしれません(笑)。逆に、エントリーしたほかの2社が、各社それぞれの立場から提案型の営業をしてきてくれているぞ、と思えば、打ち合わせの時間を設けてくれるかもしれません。
案件の透明性がはかられ、ミスマッチがなくなる
MZ:実際の画面を通して、ベンダーの立場からFunnel1というプラットフォームの印象をお聞かせください。
五十嵐:同じ条件のもとで比較されるわけですから、より広告主が選びやすくなるのではないでしょうか。プレミアム広告に強いのか、コンテンツ力に自信があるのか、制作技術が際立っているのかなど、各ベンダーの特徴が伝わった上で、ミーティングや商談といった次のステップに進める。この場で要件が固まれば、お互いのボタンの掛け違いが防げますので、案件の透明性にもつながります。
八田:例えば、言葉で説明していくと、特徴や強みをはじめ、だいたい一通りのことをお伝えすることになります。結果として、広告主には何でもできる、すべてが得意であるかのように聞こえていたりするかもしれません。売りの側面が強い説明をブランド側が聞いても、なかなか数ある他社との違いを聞き分けるのは難しいのではないでしょうか。ブランド側の選択の負担を考えても、広告主とベンダーをつなぐプラットフォームへのニーズは非常に高いと考えています。動画広告市場が盛り上がっている今のタイミングで、広告主にとって利便性が高いプラットフォームが利用可能になることで、ベンダー側にもメリットが大きいと思います。
田中:これまで初回で行ってきたミーティングのおおよそが、Funnel1で代用できると考えています。例えば、ご挨拶が中心になって本題の突っ込んだ話に時間が割ききれずタイムアウト、といったことも解消できます。
MZ:動画広告とひと口に言っても、その中には配信方法や制作方法など、広告主には大きな視野に立ったベンダー選びが求められていますね。それに伴い、動画広告の配信を行うベンダーを選ぶ方法も、入念に各社を比較しながら検討する必要がありそうです。Funnel1の登場が、デジタルマーケティング界全体の風通しの良さにつながり、動画広告市場に新たなシナジーが生まれてくるのではと期待しています。本日はありがとうございました。
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